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居酒屋イジメは「虐待」と同じ。記者会見で脅迫した西村大臣の暴挙

各所からの猛批判を受け撤回されたとは言うものの、金融機関や酒類販売業者を通じての「飲食店締め付け」を表明した西村経済再生担当相の資質を疑う声が日増しに大きくなっています。この発言を、「障がい者の虐待を平然と行うに値する」と強く批判するのは、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」を運営する引地達也さん。引地さんはメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で、コロナ禍でギリギリの資金繰りで経営を続ける飲食店は今や「社会的弱者」であり、彼らへの西村大臣の圧力発言は虐待そのものだとしています。

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西村大臣の発言に障がい者への虐待防止法を見る

「明石は大変やな、西村さん、あれはやめなあかんな」「そやな、困ったもんや」。

先日、兵庫県のある公民館で高齢者らと時間を共にした際、ある男性が「明石市出身」と話したことから明石市が地盤の西村康稔経済再生担当相の話となった。

緊急事態宣言中に酒類の提供をする店に取引金融機関から「呼びかけ」を提示し、次の日に撤回となった発言であるが、撤回しても、怒りは収まらない市井の人々。

仕事を引退し「年金暮らしで楽しいのはボランティア」と語る高齢者の方々と「金融機関の圧力」は遠い話かもしれないが、その問題点はきっちりと判断している。

やはり市井の人にとって反発は強い。

この広い反発には、社会で自然と発生する上下関係をいかに平等にするかの知恵が常に求められる中では当然で、支援する立場で考えると、障がい者の虐待を平然と行う行為に値すると思う。

障がい者への虐待は、2013年に「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)として成立し、翌年施行された。

1990年代後半から明るみに出て社会的にも注目された障害者の虐待事案として、サン・グループ事件、水戸アカス事件、白河育成園事件、カリタスの家事件等の影響も大きく、福祉事業所は障がい者にとって安心できる場所であることを最低限保証する法律である。

各事業所は虐待防止に関する体制を提示し、虐待防止の研修を行うことも求められている。

この研修に使われる厚生労働省の「虐待防止の手引き」には、虐待の事例として「心理的虐待」として「威嚇的な発言、態度」を挙げ、具体的な例として「ここ(施設等)にいられなくなるよ」「追い出す」などと言い脅す、であったり、「給料もらえないですよ」「好きなもの買えなくなりますよ」などと威圧的な態度を取る、を例示している。

さらには「交換条件の提示」として、具体的な例を「これができたら外出させてあげる」「買いたいならこれをしてからにしなさい」などの交換条件を提示する、とする。

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障がい者を対象としているこれら虐待防止の手引きであるが、これは「社会的弱者」でも成り立つはずで、新型コロナウイルス禍の中で、生きていくためにもがく飲食店は今や社会的弱者である。

多くの飲食店は金融機関とうまく付き合いながら、ぎりぎりの資金繰りで経営しているところがほとんどであろう。

営業している店への「圧力発言」は虐待そのものだ。

私たちが障がい者の特性を理解し、その特性を見つめ、よりよい支援をしていこうとする時に、何かを交換条件にしたり、圧力をかけたりすることはない。

結果的に「社会が」求めることが出来なかったことがあったとしても、それを共有し、そこからやれることを組み立てていこうと考える。

これは声高に主張するまでもない、支援をする者として当然の考えと行動だと考えている。

これが記者会見の場で堂々と心理的虐待をやられると、支援者としての私の反応ももちろん、冒頭の高齢者の反応も当然である。

自助、公助、共助、も結局は空疎で中身がないことにもつながっていると思う。

さて、政府はこの発言の本質を認識しているのだろうか、と思う。

コロナ禍の終息が見えない先行き不安な社会に、必要なのは安心できる対応と、適切で真摯な言葉による説明。

その説明がないから不安は募り、圧力にも強く反発してしまう。

この貧困な言葉のまま、説明も不足する中で、五輪が開催されることも残念に思う。

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image by: 西村康稔 - Home | Facebook

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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