感謝の言葉「ありがとう」。人に何かしてもらったとき、相手に手間や面倒をかけたとの気持ちから「ごめんね」や「すみません」と言ってしまうことが日本人にはよくあります。思いは同じでも言った本人の気持ちは少し後ろ向き。前向きな感謝は、言われた側は気持ち良く、言った本人にも幸福感を与えると、大学の研究でも証明されているようです。今回のメルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』では、著者の柳川由紀さんが、心から感謝し「ありがとう」を言える子どもに育てるために、親子で一緒に取り組みたい3つの方法を伝えています。
「ありがとう」が運ぶ奇跡
感謝すると脳が活性化する!
人は何かをしてもらうと、感謝の気持ちが生まれて、お返しをしようという気持ちが高くなります。これは、何かをしてくれた人に対して感じるだけではなく、関係のなかった他者に対しても感じます。これは「利他的感情」といいます。
「感謝」と「利他的行動」は、どちらも脳の報酬系といわれる部位の活動と関係していて、「感謝」や「利他的行動」をすると脳のこの部位の活動が上がることが明らかになっています(※1)。
脳内からは、幸せホルモンと呼ばれ、心のバランスを整えるセロトニンや、集中力やヤル気を生み出すドーパミン、絆ホルモンと呼ばれ幸福感をもたらすオキシトシン、脳内麻薬とも言われ、免疫力アップに繋がるエンドロフィンが分泌されると言われています(※2)。このように脳と体に様々な良い効果が期待できます。
感謝する人ほど幸福度が高い
カルフォルニア大学ディヴィス校のエモンズ教授らは、感謝が幸福にどう関係するかの研究を行っています(※1)。因果関係を調べた実験では、1日の中で感謝したことを5つ記録する人たち、面倒だったことを5つ記録する人たち、他者よりも自分が優れている点を5つ記録する人たちの3つに分けて、調べました。
その結果、感謝を5つ数えることが、ポジティブ気分や人生に対する肯定的な評価の向上、運動時間の長さ、病院にかかる回数やネガテイブな感情の頻出度の少なさにつながり、幸福度が向上したことを明らかにしました。
また、感謝することで、以下の結果が出ています。
- ストレス反応が起こりにくい
- 充実感を得やすい
- 主観的幸福感が高い
- 自分はほかの人から助けてもらえるという考え方を持つ
- 楽観的である
感謝の気持ちを育てるには
「ありがとう」という感謝の言葉は、心がこもっていなければ、その効果は発揮できまん。心のこもった「ありがとう」を相手に伝えるには、感謝の気持ちを育てることが大切です。そのためにできることを3つご紹介します。
1.週に一度、感謝の時間を持つ
週に一度でも感謝する出来事を思い浮かべると、幸福感がアップした、と言う結果が出ています(※1)。是非、子どもと一緒に振り返りましょう。例えば、「〇〇が美味しかったと言ってくれて嬉しかった、ありがとう」「〇〇がお手伝いしてくれて助かった、ありがとう」。
2.笑顔を心がける
無理に笑う必要はありませんが、柔らかい表情を常に意識しましょう。自然と気持ちが安定し自分にも人にも優しくなれます。
3.1日の終わりに「嬉しかったこと」を書き記す
その日にあった嬉しかった事を挙げましょう書いて「見える化」することで、感謝の心をより深く育てることができます。
これらを習慣化することで、一つ一つに感謝の気持ちが芽生えて、心からの「ありがとう」を伝えられるようになります。
家庭教育アドバイス「申し訳なさを捨てよう」
日本人は、感謝するときに「申し訳ない」と言う気持ちを持つようです。また、感謝されても「そんなことないですよ」と謙遜し、相手の気持ちを拒否しがちです。
照れくさくてなかなかできない、ということもあるかもしれません。でも相手にその気持ちを届けることで、自身の幸福度も自ずとアップし、相手の気持ちを受け入れることで、感謝の気持ちを育てられるようになります。是非、挑戦してみて下さい。
※1:Emmons,R.A.,& McCullough、M.E.,Counting blessings versus burdents:An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective Well-Being in Daily Life,Journal of Personality and Social Psychology,2003
※2:Madhuleena Chowdhury、The Neuroscience of Gratitude and How It Affects Anxiety & Grief、PositivePsychology.com、2019
image by: Shutterstock.com