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岸田政権「賞味期限」は1年か。次期衆院選に勝っても政治が安定せぬ理由

4日に衆参両院で行われた総理大臣指名選挙の結果、第100代内閣総理大臣となった岸田文雄氏。しかしその行く末は順風満帆とは言い切れないようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、激戦となった自民党総裁選を総括するとともに、岸田新首相が日本復活のため取り組むべき課題を検討。さらに「国家主導による産業育成策」の重要性を説き、その実現に向けた具体的戦略を提示しています。

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岸田首相への失望感

岸田首相になり、株価が下落して元の木阿弥に戻ってしまった。株価を上げるには、野心的な経済政策が必要である。それを検討しよう。

総裁選挙では岸田さんが当選した。菅・二階政権から再度、安倍・麻生・甘利主導の政権に戻った。岸田総裁は、岸田派から重要なポストに人を出さなかった。細田派と麻生派が主流になっている。

しかし、麻生さんはお見事である。自派の河野さん支援と同時に、大幹部の甘利さんと麻生さん自身を岸田さんの支援にし、どちらが勝っても得をする構図を作り、政権を3Aで回す仕組みを作った。

河野さんを広報本部長というポストに左遷する代わりに、自派の議員を重要ポストに送り込んでいる。

安倍さんも細田派の半分を高市さんと岸田さんに分けて配置して、最後に、全員で岸田さん支援に向かわせるという戦術で、自派を主流に戻した。それと、北村さんなど安倍政権で活躍した人を再度、重要ポストに復帰させている。財務省主流から経産省主流に復帰させた。

しかし、安倍さんが思い描く人事はできなかったので、一番勝ったのは、麻生さんだ。最初から安倍さんも岸田さんを応援するか細田派の大幹部を岸田さん応援に回すべきであったが、安倍さんの脅しで議員票の多くを岸田さんから高市さんに回した。このため、岸田さんは、麻生さんには恩義を感じるが、安倍さんには恩義を感じていない。

二階派は、その点、重要ポストに就任できずで、最後の段階で岸田さん支持にしたが、時すでに遅しである。主要ポストから排除された。一番負けた。

ということは、岸田政権は王政復古ととらえることができる。革新的であるが説明不足な若手・実力者政権から、気品があり説明上手な貴族政権になったことである。しかし、この政権変更で、海外投資家は日本売りになっている。

菅首相辞任で、期待感から日本買いで株価は上昇になったが、元の木阿弥状態になってしまった。自民党は衆議院選挙では勝つかもしれないが、今までと違わない。このため、来年には自民党はまた、支持されなくなる可能性がある。そのため、政治が安定しなくなる。

海外の報道機関の岸田さんの紹介でも、変化は起こらないとしたことと、党員票が少ない国民の期待観のない勝利で、海外投資家は、失望したようである。

トップの貴族と実力者のセカンドという院政政治体制にもなっていないので、岸田さんは早晩、人気がなくなるとみる。お灸を据えたアクの強い河野さんを早く重要ポストに戻すべきである。アクが強い分、魅力的な政策が実行できる。

しかし、河野さんは、世界的な「脱炭素」「脱原発」思想の流れと同じ主張をしたが、党員票ではトップであったが、議員票は少なく、議員票の獲得が今後課題であり、議員や官僚との関係を良好にしない限り、首相への道は遠いと見えた。ということで、議員や官僚への傲慢な態度を改める必要があるようだ。

麻生さんは、河野さんを育てるためにあえて総裁選挙出馬を許した可能性もある。麻生さんはその意味でも勝ったような感じである。

それと、河野さんの対中関係ももう少し、厳しくてもよいような感じである。自民党のスタンスが対中関係で厳しい方向に大きく変化していることを示した。

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先祖帰りの技術開発政策が必要

コロナ禍から抜け出して、やっと正常化が見える段階に来た。今後は、GoToトラベルやGoToイートなどの30兆円以上の経済対策を打ち、経済の正常化を真っ先におこなべきであるが、それだけでは日本経済は縮小均衡になり、衰退を止められない。

産業育成政策が必要である。国家が主導した産業育成策をとり、再度、日本を技術大国にするべきである。そのためには、戦後、日本を技術大国にした原因を調べることだ。

その結果わかることは、研究中心の国有企業が必要ということである。昔、日本が欧米諸国に追いついた原動力は、NTTと国鉄の研究機関が民間企業へ開発した技術を渡して、民間企業を育成したからである。その仕組みを中国も韓国もマネして、日本を技術力で追い抜いたのである。

韓国のようにLGとサムスンの民間企業へ研究資金援助して肩入れしてもよいが、一番いいのが、NTTやJR、郵政は、現在でも準国営企業でもあり、ここを使って研究開発して、できた技術を日本企業に開放して、日本企業の実力を上げることだ。

それ以外、中国や韓国に技術力で追いつかないはずである。大胆な研究開発投資を日本企業はしないので、準国営企業を使って大胆な研究開発費を行うしかない。自動車にはトヨタという巨大会社がいるので、国家も支援して巨額の研究費をねん出できるが、他の会社では無理である。

国が資金を出ないと研究開発費に投資できない。国の産業育成という意思が重要なのである。

その上、事業サービスに必要な技術開発という動機がない国の純粋な研究機関では、本当に事業で使える技術を開発できない。半導体技術を追いつくにも、準国営企業で、そこに大胆な研究投資をすることである。政策の方向が悪いと資金を出しても研究開発で実用的な技術はできない。

日銀が積極的にETF買いをしたことで、すでに株式保有率は高いので、国が少し資金を出して、研究開発させる有望事業会社を50%以上の資本を持つ準国有化すればよいのである。株価も上がり、産業育成もできるということになる。一石二鳥だ。

しかし、100%国有化すると、社員が甘えるので止めた方が良い。国は、あくまでも研究費の補助をするだけである。事業の儲けで、社員の給与と3%程度の配当金を出すことを求めることだ。

実務を伴う準国営企業の研究機関を作り、その成果で豊かな日本経済の道筋を付けるしかない。日本の成功をダメにしたのは、米国からの完全民営化要求で主要な研究機関を潰されたことである。

その機関とは、電電公社の通信研究所と国鉄の鉄道技術研究所である。この2つが開発した技術が日本の繁栄を作り、この2つの機関を潰されたことで、日本は長期衰退しているのである。

独占の弊害は、海外企業の競争会社を作ることで防ぎ、40%程度の民営化で研究所を国主導で存続して置くべきを、完全民営化して競争にさらして、金の卵を産む研究所をつぶしてしまった。

早く、そのことに気が付くべきであるが、米国に遠慮して、誰もいわなかった。戦後の技術発展の仕組みをなぜ、誰も見ないのであろうか?

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もう1つが、新しいデジタル庁である。この役所を研究開発の中心にすることも必要であろうが、実務をちゃんとしないと絵に描いた餅になるから、気を付けるべきだ。可能であれば、準国営のNTTデータとデジタル庁を統合し、事業運営と研究所にするのもいいかもしれない。

日本の技術を広範に高めた研究機関を潰すための米国の要求を、あの当時は受け入れないと、日本たたきが大変になると思い、涙を飲んだ。しかし、今は米国の目先の敵は、中国に変わったので、日本の先祖帰りは、米国も歓迎なはずである。

技術的な戦いで、日米欧対中国の構図になったことで、昔に戻れる素地ができている。この素地を生かした日本復活のシナリオが必要なのである。

それ以外に、復活方法はないので、それ以外であれば、絵に描いた餅になるだけであり、有効な国家政策とはならない。民営化後の日本で、いかに研究開発分野で民間活力がないかを思い知ったはずである。

それなのに、今でも研究開発での民間活力と騒ぐ人たちがいるが、この20年間でダメであることを証明したはずだ。

もう、そろそろ目を覚ませ、日本の指導者たちと言いたい。

さあ、どうなりますか?

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image by: 岸田文雄 - Home | Facebook

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