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韓国大統領の大本命にスキャンダルか。「大庄洞ゲート」の驚天動地

来年3月の大統領選挙に向け、予備選挙が展開されている韓国。そんな中、与党大統領候補の本命に不正疑惑が浮上し、野党候補者たちが攻勢を強めています。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、「大庄洞ゲート」なるその土地売買を巡る不正疑惑を詳しく紹介。文在寅政権下での捜査に不信感をにじませつつ、今後の展開に気を揉んでいます。

火天大有

10月1日、MBNという放送局で「国民の力」大統領候補らの第5次討論会があった。大統領選挙への挑戦を宣言したあとの尹錫悦(ユン・ソンヨル)の歩みが、かなりの不足感を与えていて、テレビを見るのも嫌になるような日々が続いていた。どんな不足感かというと、ことばの選択のミスや政治家としての基本素養の面での不足感などだ。正義を立てて、本当の自由民主主義の世界を実現したいという彼の心の底の気持ちがわかるだけに、つまらないことで「ミス」をしてしまう姿がなんとも痛々しい。

韓国の大統領選挙は、まず党の中で一番になることからはじまる。これを予備競選といっている。この予備競選で仲間内で勝って大統領選挙の本格的なレースがはじまることになる。すでに第一次の予備競選が終えていて12人の候補から4人が脱落して今8人が残っている状況だ。その8人が10月1日の第5次討論会を行ったわけである。討論会は第6次(10月5日)まで開かれ、世論調査70%、党員30%の重みの集計で10月8日に4人に絞られる。その後は11月4日まで地方巡回討論会を経て11月5日に全党大会を開催してここで最終候補が1人に絞られる。この1人に尹錫悦が残ってくれることを筆者は期待している次第だ。

第5次目の討論会ということだったが、討論会をテレビで見たのは初めてだ。上述した理由からだ。しかしどんな戦いになってるのかもちょっと気になってしばし覗いてみた。ホン・ジュンピョやユ・スンミン、ウォン・ヒロン(元済州道知事)などが有名な面子か。あとは、ファン・ギョアン、ハ・テギョン、アン・サンス、チェ・ジョヒョン(元監査院院長)といった面子がありそしてわれらが尹錫悦の8人での討論会だった。

司会者がいろいろの主題を与えて討論を進めていく。例えば「1人の候補に絞って質問をしてください」というテーマだったら、A候補がB候補だけに質問し討論するといった形だ。誰を指名してもいいわけだが、やはり尹錫悦への質問(攻撃)がいちばん多かった。それだけ尹錫悦が人気があり、手ごわい相手だと全員認識しているからである。

アメリカの予備選挙もそうだが、同じ党の中でなのに、揚げ足を取り、足を引っ張り、ネガティブ攻防が激しくみられるのが一般的だが、きのうの国民の力の討論会では、このネガティブ攻防がほとんどみられなかった。これは見ていて気持ちのいいものだ。党の中で喧嘩してもしょうがないという認識が全員にあったことは確かだ。党はどうなっても「オレオレ」というのがホン・ジュンピョだが、彼もきのうは口汚く罵って相手を完膚なきまで痛めつけるという(この前の大統領選挙での予備競選のような)ことはなかった。それは一つには、今韓国の天地を揺り動かしている大事件、「大庄洞ゲート」が大きく口を開けて、あまりにも生生しく燃え上がっているからだ。

大庄洞、これは韓国語の発音では「デジャンドン」。その中心人物が民主党の李在明(イ・ジェミョン)である(李在明は現在大統領候補アンケートで1位を走っている)。これは李在明が城南市の市長だったときに、パンギョ(板橋)の開発にかかわる土地売買不正疑惑とでもいったらいいだろうか。まだ捜査が本格化していないので詳しい内容までは筆者は押さえていないのだけれど、簡単に言うと、現在IT団地として韓国のシリコンバレーのようになっているパンギョ(板橋)だが、ここの土地を開発するにおいて、元の所有者らから二束三文の値段で買い上げ、何十倍だか何百倍だか(何千倍?だか)の利益を上げた事業がある。火天大有(ファチョンデユ)という謎めいた会社を作ってこの事業を進めた中心人物がユ・デギュという奴で、こいつが李在明の腹心のような立場で動いていたのだ。

火天大有という会社は十数人のメンバーしかいないなか、数千億ウォンから兆におよぶ利益を上げていたのだ。しかも十数人のメンバーの中には、大法院(最高裁)の法官だった人間もいる。李在明が決定的な打撃を受けるだろうとみられていた大法院(最高裁)での裁判で、5:5と採決が分かれる中、一人の判事が無罪を主張したため李在明の無罪が決定するということがあった(5、6年前)のだが、この判事が大法院という最高名誉の職場をやめてなんとその数か月後、火天大有の顧問だかなんだかそんな位置に座っていたのだから、李在明に無罪の手をあげたのは対価性のある(つまり不正)行為であったことは誰が考えても疑いの余地はない(法的に証明するのはまた別問題だけれども)。

あまりにも衝撃的なゲートだが、李在明本人は、けろっとしたもので、きのうも済州島での民主党内の調査で、圧倒的な1位の座を保持していたようだ。土地開発の設計は(ユ・デギュなどと共に)自分が中心の立場でやったけれども、それには不正などは一点もなく、自分は一文の金ももらっていないからオレは犯罪だの不正だのには一切かかわりはないとあまりにもいけずうずうしい顔で言ってのけている。

しかしきのうの国民の力の第5次討論会で、ホン・ジュンピョまで一致団結して一応まとまりを見せていたのは、「大庄洞ゲートのモムトン(実体、本体、本質、影の王)は李在明」という認識で全員が一致していたからだ(李在明よ、ありがとう)。元検事出身のホン・ジュンピョやファン・ギョアン、尹錫悦ら皆が、「モムトンは李在明」といっていた。心強い場面だった。

今後、「大庄洞ゲート」の調査がどのように進展していくは、今のところ誰にもわからない。文政権での検察だ。きのうあたりはじめてユ・デギュの家を強制捜査したりしてたみたいだけど、のろのろもたもたしていて、「やる気あるの」といいたいほどだ。要所要所を全部文政権の息がふきかかった連中が抑えているから捜査を信じることはできないのだが、それ以外に方法のないことも事実だ。様子をみるしかない。

ここで最後に火天大有という会社の名前にふれたい。これは四柱推命での単語で大量所有と願望実現などを意味する単語らしい。こんな名前をつけて稀代の悪事を目論んだ李在明一味。天はやつらを罰するまでところまで追い詰めることができるだろうか。「月にかわって、おしおきよ」というところまで行けるだろうか。今後の展開が大いに気になるところだ。

(無料メルマガ『キムチパワー』2021年10月2日号)

image by: 李在明 - Home | Facebook

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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