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年金受給資格のなかった人が年金を貰えるようになる「特例」とは?

老齢の年金を貰うために必要な受給資格の中に、保険料納付済み期間というものがあります。実はこの期間には定義があり、ちょっと勘違いをしやすそうなものなのだとか。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、 年金受給資格について詳しく解説し、また、年金受給する資格のなかった人が「特例」で貰うことのできるケースがあることも事例を用いて詳しく話しています。

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年金受給する資格の無かった人が「以前よく使われていた特例」で貰えるケースとは?

年金受給資格期間を考える時に必ず覚えておくものがあります。

「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年」

年金記録を見た時にこれを満たしていないと、老齢の年金が貰えません。

なので年金を貰えるかどうかはまずここを確認します。

なお、平成29年7月31日までの制度は10年ではなく25年でした。

上記の式のようなものは老齢基礎年金を貰う場合の条件です。

老齢基礎年金を貰う条件である先ほどの「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年」を満たした上で、厚生年金に加入した期間があると、老齢基礎年金に上乗せで老齢厚生年金を貰う事が出来ます。

あくまで「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年」というのは老齢基礎年金を貰うための条件であります。

だから老齢基礎年金の受給資格と呼ばれます。

老齢基礎年金が貰えれば、その他の厚年とか共済はついでに上乗せで貰う事が出来ます。

昭和61年4月以降は全員が老齢基礎年金を貰う上で、厚年期間があるなら上乗せとして老齢厚生年金を支給するという位置付けになりました。

さて、「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年」の中を見てみると、「保険料納付済み期間」というのは国民年金とか厚生年金保険料を納めた期間ならどこでも含みそうですよね。

ですが、保険料納付済み期間というのは定義があります。

20歳から60歳未満の国民年金第1号被保険者としての期間、国民年金第2号被保険者期間としての期間(20歳から60歳未満の期間)、国民年金第3号被保険者(20歳から60歳未満の期間)としての期間をいいます。

昭和36年4月から昭和61年3月までの国民年金や厚生年金加入期間は、国民年金第1号被保険者や国民年金第2号被保険者期間とみなす期間ですのでこれも含みます。(1号被保険者は60歳以降の任意加入の部分も納付済み期間となります)

原則として20歳から60歳未満の間で考えます。

どこでもいいから年金保険料納めたところ=保険料納付済み期間とはならないんですね。

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国民年金第2号被保険者期間は厚生年金や共済年金に加入してる期間ですが、ふと考えてみると厚年って60歳から70歳まで加入できますし、20歳未満の人も加入できます。

たとえば20歳未満の人が厚生年金(国民年金第2号被保険者)に加入して、保険料支払ったら「保険料納付済み期間」となるんでしょうか。

保険料納付済み期間の定義としての国民年金第2号被保険者期間は20歳から60歳未満でしたよね。

だから20歳前や60歳後に厚生年金に加入した期間は「保険料納付済み期間」の中には含まれません。

そんなバカな!20歳前でも厚生年金保険料支払ってるじゃないか!となりそうですよね。

20歳前や60歳後の厚生年金期間は老齢基礎年金を貰う受給資格の「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年以上」の中には入らないのかというと、この場合は「カラ期間」の中に入ります。

ちなみにカラ期間は年金額には反映しないですが、老齢基礎年金の受給資格には含むのでカラ(空)期間と呼びます。

20歳未満や60歳から70歳までの間に厚生年金に加入した期間は、老齢基礎年金の受給資格期間を考えた時は「カラ期間」となります。

この理由としては老齢基礎年金を計算する時は、20歳から60歳前月までの480ヶ月間の被保険者期間を使用しますよね。

国民年金第1号被保険者期間と国民年金第3号被保険者期間はもちろん、任意加入を除くと20歳から60歳までの期間でしか加入しません。

ところが厚年である国民年金第2号被保険者は20歳前や60歳後でも加入できたりしますよね。

もし、18歳から25歳までの7年と、32歳から65歳までの合計40年間国民年金第2号被保険者として、その40年間を老齢基礎年金に反映できるとしたら1号被保険者と3号被保険者の人に対して不公平になります。

1号の人も3号の人も20歳から60歳までの33年分の老齢基礎年金にしかならない。

よって、1号、2号、3号みんな老齢基礎年金に反映させるのは20歳から60歳までの480ヶ月間(40年間)だけにしようねという事になりました。

ただ、2号被保険者は20歳前や60歳後も加入できるのでせめてカラ期間として、老齢基礎年金の受給資格期間の中に含めようと。

それにしてもカラ期間って年金額にならない期間じゃなかったでしょうか。

20歳未満や60歳後の国民年金第2号被保険者期間をカラ期間にしたら損しちゃうんじゃないか…というと、それはもちろん老齢厚生年金として支払われます。

あくまで老齢基礎年金の受給資格期間を考える時に、20歳未満や60歳後の国民年金第2号被保険者期間はカラ期間としてカウントしますという事ですね。

そして老齢基礎年金の受給資格期間を考える時に、保険料納付済み期間として考えるのは20歳から60歳までの1号被保険者、2号被保険者、3号被保険者期間で考えようねという事です。

やや考え方がややこしいですが、老齢の年金を貰えるかどうかを考える時は老齢基礎年金が貰えるかどうかを判定するために、「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年」を用いて、それを満たしてるなら、基礎年金と合わせて上乗せで老齢厚生年金も支給しますという事であります。

年金が貰えるかどうかの判定と、年金額計算とはすこーし区別しておく必要があります^^

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ところで、年金を貰うには10年などの一定の期間を求められますが、昔はいろいろと特別措置がありました。

特に老齢基礎年金の受給資格が「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧25年」必要だった時代ですね。

25年という比較的長い条件を満たさなければ、上乗せとしての老齢厚生年金も貰えなかったわけですね。

10年に短縮されて、貰えないという事態はほぼ無いのですが、今回は覚えておきたい過去の特例事例を考えていきましょう。

意外と今にも関係します。

1.昭和30年3月15日生まれの男性(今は66歳)

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20歳になる昭和50年3月から平成2年11月までの189ヶ月間は未納(国民年金第1号被保険者)。

平成2年12月から平成4年3月までの16ヶ月は海外に住んでおり、その間は国民年金に強制加入にはならなかったが、任意加入が出来たので任意加入した(国民年金第1号被保険者期間)。

任意加入したが結局その16ヶ月間は保険料は払わなかった(未納)。
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※参考
海外に居住する際の任意加入の手続きは最後の住所地の年金事務所に加入の手続きを行う。
既に海外にいて加入手続きができない人は、日本に住んでる親族に依頼して年金事務所で加入手続きを行う。
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平成4年4月からは日本に戻って叔父の会社に勤める事になり、平成26年8月までの269ヶ月間は厚生年金に加入した(国民年金第2号被保険者期間)。

平成26年9月から60歳前月の平成27年2月までの6ヶ月間は未納(国民年金1号被保険者期間)。

なお、平成4年4月から平成15年3月までの132ヶ月間の平均標準報酬月額は36万円とし、平成15年4月から平成26年8月までの137ヶ月間の平均標準報酬額は50万円とします。

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さて、この男性が厚生年金を貰えるのは61歳となる平成28年3月の翌月からですが、その前に老齢基礎年金の受給資格は満たしているのか。

この当時は25年必要だった。

見てみると、保険料納付済み期間は269ヶ月のみしかないですよね。

ちなみに任意加入にもかかわらず未納にした部分16ヶ月がありますが、平成26年4月改正でカラ期間の扱いとなりました。

なので保険料納付済み期間269ヶ月+カラ期間16ヶ月=285ヶ月だから、300ヶ月(25年)に15ヶ月満たないですよね。

だから何も年金を貰えなかった。

61歳時点(平成28年3月時点)でそれに気付き、なんとか300ヶ月にしたい。

方法としては主に2つ。

国民年金第1号被保険者として任意加入をして、国民年金保険料を15ヶ月支払う。

そうすると平成28年3月から平成29年5月までの15ヶ月を足して300ヶ月で、翌日平成29年6月1日に年金受給資格が発生し、平成29年7月分から年金が発生する。
ーーーー
※参考
早々に5月分の保険料を納めても、5月を経過した日である6月1日に5月の保険料が納付されたものとされる。
ちなみに、5月の保険料は6月30日までの期限ではあるが、6月1日に遡って受給権が発生する。
6月1日に300ヶ月となり受給権が発生すると、受給権発生日の翌月分から年金が発生する。
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なお、平成28年3月までの年金保険料の時効2年1ヶ月前までに平成26年9月から平成27年2月までの6ヶ月間の未納があるので、そこを納めて平成28年3月以降9ヶ月間の任意加入してもいい。

そうすれば平成28年11月で300ヶ月になって、翌日12月1日に受給権発生して平成29年1月分からの年金が貰えるのでやや年金受給が早まる。
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もう一つの方法は、厚生年金に加入する事。

平成28年3月から15ヶ月間は加入する必要があるように見えるけども、この男性の場合は厚生年金期間が23年(276ヶ月)で受給資格を満たす特例(昭和31年4月1日以前生まれの人に限る)がある。

なので、61歳時点で269ヶ月なので、あと7ヶ月加入すれば年金の受給資格が得られる。

平成28年3月から加入すれば、9月で276ヶ月到達して10月1日に受給権が発生して、平成28年11月分から年金が貰える。
厚生年金に加入したほうが早いですね^^

(とはいえ、加入できるかどうかは就職して厚生年金に加入させてもらわないといけないので任意加入より難しいですけどね…)

なので、こっちの平成28年3月から平成28年9月までの7ヶ月厚生年金に加入したとします。

この間の平均標準報酬額は17万円とします。

老齢基礎年金を貰うには保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧25年が必要だけども、ただし、特例として厚生年金期間が23年あれば老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたものとしますよと。

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※参考
昭和61年4月1日からの新年金法により、老齢基礎年金を貰うには「保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧25年としたが、厚生年金は昭和61年3月31日までの制度だと20年で貰える制度だった。

20年で貰えると思っていたのに、昭和61年4月1日からいきなり25年にすると納得いかないので、昭和61年度で35歳未満の人(昭和27年4月2日以降生まれ)から1年ずつ25年まで引き上げた。
昭和61年度に30歳未満(昭和31年4月2日以降生まれ)だった若い人からは、全員25年必要となった。
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・平成28年11月から発生した特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)→36万円×7.125÷1000×132ヶ月+50万円×5.481÷1000×137ヶ月+17万円×5.481÷1000×7ヶ月=338,580円+375,449円+6,522円=720,551円

次に65歳から発生する老齢基礎年金と、老齢厚生年金の差額加算。
・老齢基礎年金→780,900円÷480ヶ月×(132ヶ月+137ヶ月)=437,629円
・差額加算→1,628円(令和3年度定額単価)×(132ヶ月+137ヶ月+7ヶ月)ー780,900円÷480ヶ月×(132ヶ月+137ヶ月)=449,328円ー437,629円=11,699円

65歳時点で65歳未満の生計維持してる妻が居れば配偶者加給年金390,500円も加算。

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さて、この男性は厚年期間が276ヶ月と16ヶ月で全体として296ヶ月なので、300ヶ月は満たしてはいなくとも特例として厚年期間が23年になったので25年に足りなくても年金の受給権が発生しました。

もしこの男性が死亡した時は、主に妻が遺族厚生年金を請求するでしょう。

その時に遺族厚生年金が貰えるのか。

そりゃあ貰えるでしょうと思われたかもしれませんが、老齢厚生年金の受給者が死亡した場合は全体で25年以上の記録が無いといけません(平成29年8月以降10年に短縮されてはいますが、遺族厚生年金は全体で25年が必要)。

ところがこの男性のように厚生年金の期間短縮で23年で年金受給資格が発生する人が死亡した場合は、25年以上の記録がある人が死亡した時と同じく遺族厚生年金が発生する。

現在は10年で年金が貰えますが、生年月日によっては以前あった特例に気を付けておく必要があります。
特に今回は昭和31年4月1日以前の人はちょっと気にしていたほうがいいですね^^

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image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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