開幕まで100日を切った北京冬季オリンピックですが、アメリカは「その後の有事」への備えに怠りはないようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、五輪閉幕後の中国による台湾侵攻の可能性を見越し米国が打った手を紹介するとともに、同様の動きが今後世界各国に広がると予測。その一方で中国への対策を全く講じずにいる日本政府に対し、強い懸念を示しています。
【関連】中国空軍149機の「台湾侵入」は本気の警告。火に油を注いだ米国の動きとは
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年10月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
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【中国】北京五輪後の有事に備え中国通信企業の活動を禁止した米国。日本は?
● 米 中国通信大手の事業免許 “安全保障上の懸念”で取り消しへ
10月26日、アメリカの通信当局は連邦通信委員会において、中国の通信大手「中国電信(チャイナテレコム)」について、安全保障上の懸念からアメリカでの事業免許を取り消す方針を決定したと発表しました。
決定の理由について、連邦通信委員会は「チャイナテレコムのアメリカ子会社が中国政府に統制されていて、スパイ活動などでアメリカに被害をもたらす恐れがある」としました。チャイナテレコムがアメリカの通信網にアクセスすることで、国家安全保障や法執行上の重大なリスクをもたらす危険性を指摘したかたちです。
通信当局は、今後60日以内に、チャイナテレコムのアメリカ子会社に対して、国内向け、国外向けの通信サービスの提供を中止するよう命じるそうです。
チャイナテレコムは、昨年11月にトランプ政権下で導入された、中国人民解放軍を支援しているとみなされた企業への投資を禁止する大統領によって、今年の1月にNY市場での上場廃止が決定され、5月に上場廃止となっていました(その他、中国移動<チャイナモバイル>、中国聯通<チャイナユニコム>も同様の理由で上場廃止)。
ちなみに、チャイナモバイルは、2019年に米国市場参入を安全保障上の問題で連邦通信委員会から却下されています。一方で、チャイナユニコムも今年3月、通信事業免許取り消しに向けた手続きが開始されたと報道されました。
● 米連邦通信委員会、中国移動の米国市場参入を却下へ
● 米FCC、中国国有通信2社の事業免許取り消しへ手続き開始
中国国内の通信事業はチャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムの国営企業3社でほぼ独占しています。これらの企業は、中国でのウイグル人監視に協力し、南シナ海での人民解放軍に通信サービスを提供しているとされており、各社とも活発に海外展開しています。
ちなみに、中国では流通の全国ネットワークは人民解放軍が担っているというのが常識でした。スーパー業界は、流通において中国人民解放軍が交渉相手となってきたのです。それがいつしか習近平が先手を打って各地の公安を牛耳ったことで、今では流通は習近平の利権となっています。
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それはともかく、これから問題となるのは、チャイナテレコムもチャイナモバイル、チャイナユニコムも、日本支社があることです。アメリカが日本と情報共有するうえで、こうした中国通信社日本支社の存在はアメリカの脅威になりかねないからです。
中国ではチャイナテレコムはファーウェイと協力して、5G小型基地局のネットワークを構築しています。言うまでもなく、ファーウェイも情報盗窃疑惑がアメリカはじめ各国で報告されている会社です。
● ファーウェイがブック型5G小型基地局、中国電信と大規模3Dネットワーク構築
ファーウェイについては、アメリカではすでにファーウェイ製品を扱う企業が政府調達から排除されています。日本でも政府機関の情報通信機器から事実上の排除となっています。
● 【独自】日本製「5G」普及へ米英と連携強化…ファーウェイ排除念頭に調達先多様化
今年には、イギリスやスウェーデンがファーウェイの機器排除を進めています。具体的には、イギリスは2021年9月以降、国内の通信事業者が通信網にファーウェイ製品を組み込むことを禁止しました。また、スウェーデンは2020年10月、5G通信網整備でファーウェイとZTEの機器を排除することを決定しました。
今後は、チャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムを排除する動きが各国で始まると思われますが、日本はどうするのでしょうか。
ちなみに、来年の冬季北京五輪の会場では、ファーウェイとチャイナユニコムが連携して、体育場内に5G屋内ネットワークを構築しているそうです。海外のアスリートや要人も、情報盗窃や盗撮被害にあわないことを祈るのみです。
そして、アメリカなどによる中国企業の排除はますます進んでいくと思われます。アメリカが投資を禁止している人民解放軍と関連ある中国企業は、トランプ大統領は31社を対象にしましたが、バイデン大統領は監視技術を扱う企業も追加し、今年6月には59社を対象企業に指定する大統領令を出しています。
一方、冬季北京オリンピック後、中国が台湾に侵攻する可能性が高まっているという話が最近よく聞かれるようになっています。
アメリカのマクマスター元大統領補佐官は、10月4日、メディアに対して、「中国は香港の民主派を弾圧しても国際社会の制裁を受けなかったことで、台湾を攻撃しても国際的批判を逃れられると考えており、ロシアがソチ冬季五輪直後にウクライナ南部のクリミア半島を併合したケースを真似て、冬季北京五輪後に軍事行動を起こす可能性がある」と述べています。
● 北京五輪後に「危険な時期」 台湾への圧力強化を警戒―元米補佐官
中国は、実際に台湾へ侵攻した際に、各国がどのような反応を示すかという情報を必死に集め、同時にフェイクニュースで世論操作を行っています。中国の通信会社はそのためのスパイ活動に従事する可能性が指摘されているわけです。また、台湾侵攻で国際社会が反発したときには、その国の通信網を壊してパニック状態を引き起こすことも考えられます。
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中国には国防動員法という法律があります。この法律は、中国政府が「有事」と認定すれば、中国国内のすべての人員や企業をすべて強制接収できるというものです。しかも、海外にいる中国人や中国企業も動員の対象になります。
つまり、中国政府の号令により、アメリカや日本にいる中国人や中国企業が、日本に対する破壊や工作活動を開始する可能性があるわけです。
そうした危機意識があるため、アメリカはチャイナテレコムの事業免許を取り消し、アメリカで事業ができないようにしたわけです。
日本は呑気すぎますし、いまだ中国市場に対して幻想を抱いている企業も少なくありません。しかし、事態は逼迫しつつあります。まもなく衆議院選挙の投開票ですが、安全保障政策はきわめて重要な争点だと思います。
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