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ロシアからの帰国者が感じた、住みやすくなり続けている母国・日本

生まれ育ったこの国から出ることなく長年住み続けている我々日本人には、母国の本当の美点が見えていないものなのかもしれません。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、3年前に帰国するまでの28年間をモスクワで過ごした国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、元々素晴らしい国であった日本がますます良くなり続けているとして具体例を提示。さらにその進歩の原動力として「自由と民主主義」を挙げるとともに、それらを守り続ける重要性を訴えています。

日本がドンドン良くなる根本的理由

日本は、清潔で、自然がきれいです。夏は暑すぎる感じもしますが、今の時期は最高ですね。モスクワは11月、ほとんど晴れの日がありません。日に当たらないと、白人の顔色も土色になり、病気の人が激増します。その点、日本は、雨の日と晴れの日が適度にあって、すばらしい。

日本人は、概して穏やかで、誠実で、勤勉です。心優しい日本人に囲まれて、日本に住めるのは実に幸せです。

日本に戻って3年。日本は元々いい国ですが、「さらに良くなっている」と思います。皆さんの中には、「いや、どんどん悪くなっている!」と思っている人もいるでしょう。何がよくなっているか、例を挙げてみましょう。

激増した公立小中学校のエアコン設置率

たとえば、公立小中学校のエアコン問題。2017年のエアコン設置率は、49.8%でした。2018年の夏は暑く、熱中でたくさんの人が亡くなりました。そして、「日本の小中学校には、エアコンが設置されていない!」という報道が、外国でもされたのです。私もこのことに驚き、外国人の知人友人も仰天していました。

「日本は、ハイテク先進国で猛暑の国。なぜ学校にエアコンがないのだ???」と。

質問攻めにあった私は、「そうだよね~」と同意するしかありませんでした。

ところが、2020年の設置率、【92.7%】まで上がりました。4年前、エアコンがある公立小中学校は半分以下だった。それが今は、ほとんどすべての学校にエアコンがある。それに要した時間は、たった3年です。エアコン設置率データの出所はこちら。

公立小中学校の空調(冷房)設置率の推移[文部科学省]

働き方改革の成果

私が帰国した頃(2018年秋)、日本は「働き方改革」の話で盛り上がっていました。2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の内容は、正直イマイチです。しかし、政府が「働き方改革!働き方改革!」と大騒ぎしたことで、明らかにムードが変わりました。

日本人は「勤勉」で有名ですが、外国から見ると「労働時間が不当に長すぎる」ことでも知られています。2019年4月から、TBSで『わたし、定時で帰ります。』というドラマが放送されました。つまり「日本で『定時で帰ること』は特殊なことで、ドラマのテーマにすらなる」と。このドラマの後、「働き方改革」が進み、皆さんの働き方も楽になったでしょうか?

時々、モスクワ時代の友人と会うことがあります。待ち合わせをするときは「6時45分に駅で」といった感じ。以前は、こんな早い時間に会うことは難しかったですが、今は大丈夫になりました。働き方改革で、お父さん、お母さんが早く家に帰ってくる。これで、子供たちの幸せ度も増しますね。

テレワークの普及

新型コロナは、悪いことばかりです。しかし、一つ「よかったこと」もあります。「テレワーク」が普及したこと。

業種にもよりますが、「自宅でパソコンで仕事できる」人はかなりいるはずです。そういう人たちが、往復2時間かけて出社するのは、非効率でしょう。週10時間、1か月40時間、年間480時間、通勤に費やしている。480時間は労働時間8時間で割ると、60になる。つまり、1年の通勤時間は、労働時間60日分に匹敵するのです。実にもったいないですね。だから、できる人はテレワークにした方がいいでしょう。ですが、今までは、「惰性」で出社してきた。

ところがコロナでテレワークが「推奨」されるようになった。その結果、テレワークが激増しました。総務省6月18日の発表には、こうあります。

企業におけるテレワークの導入が急速に進み、在宅勤務を中心に導入する企業の割合は、前年比で倍以上の47.5%に達した。

出所はこちら。

令和2年通信利用動向調査の結果[総務省]

自由民主主義が進歩の原動力

これ↑、「リアリスト北野らしくない」と思われる方も多いでしょう。しかし、独裁国家と民主主義国家を比較すると、このことが真実だと理解できます。どういうことでしょうか?

たとえばエアコン設置率の急増。これは、2018年に小学生が熱中症で亡くなったことが原因になっています。大騒ぎになり、問題がクローズアップされた。

たとえば、働き方改革。これは、電通社員の過労死事件などが注目されたことで進展しました。もちろん「犠牲者が出る前にやるべきだった」という思いはあります。しかし、最悪なのは、「犠牲者がでても何も変わらないこと」でしょう。

日本は、少なくとも「犠牲者がでれば変わる」のです。いえ、犠牲者がでて、野党とマスコミが大騒ぎすることで変わるのです。だから、野党やマスコミの役割は重要。そして、日本は、独裁国家に比べると、野党、マスコミがしっかり役割を果たしている。

では、独裁国家では、どうなのでしょうか?独裁国家には、そもそも野党がない。いても、事実上独裁者に逆らえない。マスコミは、独裁者に都合の悪い報道をしない。報道されないから、大騒ぎにならない。大騒ぎにならないから、「変えよう」という動きが起こってこないのです。あるいは起こってきても、弾圧され、つぶされます。だから、私たちは、「自由と民主主義が進歩の原動力」であることを自覚して、この体制を守っていくべきなのです。

ちなみに、自由も民主主義も、一瞬で消え去ることがありえます。当たり前に存在しているものではありません。

香港を見てください。香港は2019年、100万人デモ、200万人デモをする自由がありました。しかし2020年には、「香港国家安全維持法」が成立し、デモをすることは禁止され、習近平や共産党の批判をすると逮捕されるようになりました。そう、香港の自由、民主主義は1年で消えたのです。

もし中国が台湾を併合すれば、台湾から自由と民主主義はなくなるでしょう。反日教育が開始され、世界一の親日国家台湾は、反日台湾省になるでしょう。

そう、自由と民主主義は、「普通にあるもの」ではなく、「守らなければ消えてしまうもの」なのです。私たちは、日本を守りたいし、日本にある自由と民主主義も守りたいと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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