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不幸な子だからいじめてしまう。現役小学校教諭が考える加害者にこそ伝える話

学校の場でいまだなくなることのない「いじめ」や「物隠し」。学校によりさまざまな対応がとられていますが、あまりにもひどい対応も時には話題となってしまいます。そこで、今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役小学校教諭の松尾英明さんが、学校という場で見たいじめや物隠しの対応について語っています。

いじめや物隠しの「犯人」にしない

毎年のことだが、教育実習をしていると本質的な質問をされることが多い。「いじめの対応についてどうお考えですか」というかなり大切な質問をされたので色々と真剣に答えた。

いじめやトラブルをどう考えるか。

例えば、誰かが誰かをいじめている時。例えば、誰かが誰かの物を壊してしまった、あるいは隠してしまった時。

どう捉え、何をしていくかである。

いじめ対応の順番は原則があり「いじめられている子どもを守る」が先で「いじめてしまった子どもに事情をきく」が次である。

交通事故などと同じである。まずは目の前の命を守ることが最優先である。

しかしながら、その命が助かったからそれでよし、とはしない。事故の原因を究明し、再発を防ぐ必要がある。治療は予防の100倍以上のコストがかかる。だから、再び事故が起きないようにする予防に全力を尽くす。

いじめ問題の場合は、そこがいじめをしてしまった側への対応である。再発防止に努める必要がある。

学校は、そもそも悪さを罰するための場ではない。文字通り全ての子どもが良くなるための場である。

そうであるならば、うまくいかず過ちをしてしまった子どもほど、救いの手が必要である。不幸でない人ならば、いじめや物隠し、公共への迷惑行為などしないからである。例えば暴走族に入る少年少女は、自らの不幸を爆音で叫んでいる子どもたちである。少年院に入る少年少女は、自らの不幸を自分ではどうにもできなくなってしまった子どもたちである。

クラスの場合だと、やたら意地悪をしたり迷惑をかけたりしがちな子どもは、自信がない不幸な子どもである。それらを放置してしまった結果の最終的に行きつく先が、先の暴走族に入る、少年院に収監という方向へ行ってしまうことがある。つまりは、学校を含めた子どもへの教育全般の結果である。学校はその課された使命から、全力で子どもの生活改善に努めねばならない責務を負う。

物隠しなどで、誰がやったかわからないまま、ということがある。やられてしまった個人がいる場合に、そこへのケアが第一優先なのは先にも述べた通りである。しかし、その時にも伝えるべきメッセージは「それをやってしまった人への心配」である。それをやったのは、確実に不幸な子どもなのである。その子どもこそが、真に哀れみと愛を注ぐべき対象なのである。

「犯人捜し」と断罪の発想になれば、行きつく先は地獄である。競争心や優劣の意識の強い人は、とかくこの発想になりがちである。「犯人」が見つからないことを「私の負け」とみなすからである。

そんなことは、取るに足らない下らないことである。ゲームやスポーツレクの勝負の結果に一喜一憂しているのと同じレベルである。勝とうが負けようが、泣いたり怒ったり文句を言ったりしていたら、本来の目的を見失っている証拠である。

大切なこと、本質的なことは、やってしまった子どもに救いの手や言葉を差し伸べることである。正直に出てこなくても、その子どもの心に残ることの方が大切である。やった子どもが発見できることよりも「あなたが心配だ」というメッセージが伝わることの方が100万倍大切なのである。だから、それを誰がやったかわからない場合、全体へのメッセージとして伝え続ける必要がある。

「周りの誰かが不幸ならば、それは巡り巡って私の不幸となる」という原則を教える。逆も然りで、仲間が幸せだと、私も幸せにならざるを得ないということである。不幸な一人の仲間を放っておくようなクラスは、自分を含めた全員が不幸になることを容認しているといえる。困っている人がいたら「大丈夫?」と声をかけて手を差し伸べる人の多いクラスにしていくことが、本質的に大切なことである(ただし現実問題として「いつも全員」がその域に達するのを目指すのはなかなか苦しい。誰しも時に余裕がないからである)。

学校の原則は、子どもが良くなる場であること。この本質さえ外さなければ、大きく間違えることはないと考える次第である。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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