数多くのレトルト食品が発売されていますが、その調理法は電子レンジや湯煎と、いまだに進歩がありません。しかし、その不便さを解消する家電が誕生したことをご存じでしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、大注目の画期的なレトルト専用家電の戦略を分析しています。
面倒くさいを解消するレトルト食品専用の調理家電「レトルト亭」を分析
今号は、レトルト食品専用の調理家電を分析します。
● デザイン家電・雑貨メーカーの株式会社アピックスインターナショナルが展開するレトルト専用調理器「レトルト亭」
紹介動画はコチラ
→ レトルト亭(Makuake) by APIX INTL
簡単に食事を済ませたい方をターゲットに「新たな価値を提供するミッション」に支えられた「簡単に温められる」「安心・安全・ECO」等の強みで差別化しています。
レトルト食品への需要が高まる中で、多くのユーザーが抱えていた不便(湯銭やお皿に移してのレンジでチン)を解消することで、多くの期待と注目を集めています。
■分析のポイント
レトルト食品を食べるには、
湯煎の場合
・鍋に水を入れて、コンロに火をかけて、沸騰させ
・レトルトパウチを鍋に投入して、指定の時間まで待ち
・レトルトパウチをハサミで切って、お皿にあける
という流れになります。意外と手順が多く、面倒くさいと思う方も多いでしょう。
レンジの場合
・レトルトパウチをハサミで切って、お皿にあけて
・ラップをかけて、レンジに入れて、指定の時間にセットして、温めスタートボタンを押す
という流れになります。湯煎よりは、やや手順が少ないとは思いますが、こちらも面倒くさいと思う方がいらっしゃると思います。
今回のポイントは、ビジネスの基本ですが、お客様の面倒くさいを解消するということです。
レトルト食品が、日本の市場に登場したのは昭和40年代とのことですので、当時から現代にかけて、湯煎が定番の調理方法でありつづけたということになります。
約半世紀にわたりレトルト食品が利用される中で湯煎が面倒くさいと思っている人は、たくさんいたと思います。ですが、その面倒くさいを解消し、形にする人はいなかった。
そもそも、レトルト食品メーカー側が指定した作り方に対して、別の調理方法を発想するというのは難しいことです。
作り方の手順を示されるとその手順を正しくやることに集中するでしょうし、何か改善しようにも、作業スピードを向上させるくらいしかできません。
世の中の様々な作業にも言える事ですが、手順を「正しく、早く」では限界があります。時には手順を「省く」ことが、大きな改善につながることもあるのです。
アピックスインターナショナルのすごさは、ここにあります。
メーカー側の作り方にとらわれず、ユーザーの面倒くさいをまるごと省略(解消)することに、フォーカスをあてたことが、「レトルト亭」の新しい価値の提供につながっているのでしょう。
どうすれば、お客様の面倒くさいを解消できるか、というビジネスパーソンにとって、重要な問いを改めて気づかせてくれる好事例だと思います。
今後、アピックスインターナショナルからどのような商品がリリースされていくのか注目していきます。
戦略分析
■戦場・競合
・戦場(顧客視点での自社の事業領域):レトルト食品を温める
・競合(お客様の選択肢):電子レンジ など
■強み
1.簡単に温められる
・ダイヤルを回すだけ、レトルトパウチを温められる簡単操作
・多種多様なレトルト食品に対応可能。
・小さいのでスキマに収納可能
・鍋を用意したり、お湯を沸かしたり、ラップをかける必要が無い
・片づけもラク
・時短につながる
・ムダがない
2.安心・安全・ECO
・ガスもお湯もラップも使わない
・ほったらかしでOK
→温めている間に他のことができる。
・1回あたりの電気代は1円未満
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
・面白い考え、新たな価値、まだ見ぬ未来を、お客様に提供する事がミッション
・本体庫内に設置した特殊な低温ヒーターで、レトルトパウチを挟み込んで温める仕組み
上記のような、ミッションや仕組みが強みを支えています。
■顧客ターゲット
・調理する時間が無い方
・簡単に食事を済ませたい方
・一人分を作るのが面倒な方
・レトルト食品が好きな方
戦術分析
■売り物
レトルト専用調理器「レトルト亭」
・ポップアップ式トースター型のレトルトパウチ加熱器
→レトルトパウチを挟み込みレトルト食品を温める
・本体サイズは幅25.5×奥行8×高さ20cm、重さは約1.5kg
・内容量が150gの場合「小盛」(6~7分)、内容量200gの場合「普通」(7~8分)、内容量300gの場合「大盛」(8~9分)にダイヤルを合わせ、出来上がりを待つだけ。
■売り値
・一般販売予定価格は7,680円
■売り方
・クラウドファンディングサイト「Makuake」にて先行販売
→目標金額50万円に対して、応援購入総額が2,255万円と大成功を収めた
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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