プロテインやEAA(必須アミノ酸)はトレーニングに欠かせないものですが、摂取するタイミングや方法を間違えれば効果が薄れてしまいます。では、最も効率的に摂取するにはどうしたら良いのでしょうか?ボディビル全米大会の覇者であり“筋肉博士”の異名を持つ山本義徳さんがメルマガ『博士の「Optimal Body 研究所」』の中で、多くの研究結果から詳しく解説します。
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空腹時のトレーニングは
筆者は「空腹時のトレーニングはカタボリックが亢進し、筋肥大には向かない」と主張していますが、空腹時は脂肪が主にエネルギーとして使われるので、その心配は要らないという人もいます。
実際にはどうでしょうか。
空腹時に有酸素運動を行った研究はあるのですが、残念ながらトレーニング経験者を対象に無酸素運動を行った研究はあまりありません。
16名のトレーニング経験者を対象に、週4回のウェイトトレーニング(4~6種目を10回4セット)をラマダン断食中に行わせた研究があります。(※1)
その結果、断食中にトレーニングした群は除脂肪体重が平均0.2kg減り、体脂肪率は0.7%減りました。
食事を摂ってからトレーニングした群は除脂肪体重が平均0.3kg増え、体脂肪率は0.4%減りました。
同じ研究グループが、ラマダン断食群と断食をしなかった群で比較した研究もあります。
ラマダン断食群は空腹時にトレーニングしました。(※2)
その結果、ラマダン断食&空腹時トレーニング群は除脂肪体重が0.1kg減り、体脂肪率が0.7%減りました。
断食しなかった群は除脂肪体重が0.7kg増え、体脂肪率は1.1%増えました。
こうした結果をまとめたシステマティックレビューでは、「断食を行う理由にかかわらず、除脂肪体重(LBM)への影響は有害であると考えられる」、「しかし除脂肪体重を維持することは可能で、体脂肪の減少には有効である」といった結論になっています。(※3)
年齢や性差の影響はどうでしょうか。
思春期のアスリートを対象にしたシステマティックレビューでは、ラマダン断食中に週3回トレーニングしても、少なくとも最初の4週間では体重も体組成も変化がなかったと示されています。(※4)
またこちらはマウスの研究ですが、雌マウスは6時間のファスティングで体脂肪が増加し、耐糖能が悪化したことが示されています。(※5)
研究者の意見としては、雌は妊娠するために「食べられるときに栄養を蓄えよう」とするのではないかとの推察でした。
ダイエットを目的としている女性にとっては、ファスティングはむしろ悪影響をもたらす可能性が高いかもしれません。
ここまでをまとめると、空腹時のトレーニングは筋肉量を増やすには不向きである。
しかし減量が目的で、できるだけ除脂肪体重を維持したい場合には体脂肪減少に有効である。
ただし女性には向かないかもしれない。
以上のことが言えそうです。
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ここで話題は変わりますが、ボディビルコンテストにはじめて出る人は、減量に失敗しがちです。
バルクはかなり増えた。絞ってもかなり筋肉量が残るだろう。
そう思いがちなのですが、実は筋肉内の脂肪が多く、絞ると最初にそこから減っていくため、皮下脂肪が減らないのに全体的に小さくなってしまい、それで絞る気を無くしてしまうのです。
それを防ぐためには、空腹時に軽い有酸素運動をやると良いかもしれません。
夜に食事を摂らせず、空腹状態で朝に120分のサイクリングを行わせた研究では、脂肪の酸化が総エネルギー消費量の平均66%を占めており、特に筋肉中(特に遅筋)の脂肪が使われていることがわかりました。(※6)
バルクアップ中でもときどき空腹での有酸素を行えば、筋肉内の脂肪が増えるのを防ぐことができると思われます。
ただしこの研究では、サイクリングの時間が経つに従って筋グリコーゲン使用量が減り、血漿グルコースの生成と利用が増加しています。
つまり糖新生が起こっているということで、筋肉の分解が起こってしまっていると思われます。
長時間の有酸素は、やはりやめた方がいいでしょう。
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なお有酸素運動の前にプロテインやアミノ酸を補給することも、筆者は推奨しています。
これも筋分解を防ぐためですが、それによって脂肪の燃焼が邪魔されることはないのでしょうか。
17名のサイクリストを対象に、糖質を多く含む食事(体重1kgあたり1g)とタンパク質を多く含む食事(体重1kgあたり0.45g)、あるいは水(つまり絶食)を摂取した後に、20分間のサイクリングを行わせました。(※7)
その結果、タンパク質群も絶食群と同様に脂肪の酸化が高くなっていました。
よって起床直後にEAAあるいはプロテインを飲み、その後に有酸素(本当はHIITのほうが良いのですが)をやることで、筋肉を護りながら脂肪を燃やすことができると思われます。
※1:
Effect of fed- versus fasted state resistance training during Ramadan on body composition and selected metabolic parameters in bodybuilders.
J Int Soc Sports Nutr. 2013 Apr 25; 10(1):23.
※2:
Effect of resistance training during Ramadan on body composition and markers of renal function, metabolism, inflammation, and immunity in recreational bodybuilders.
Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2012 Aug; 22(4):267-75.
※3:
The Effects of Intermittent Fasting Combined with Resistance Training on Lean Body Mass: A Systematic Review of Human Studies
Nutrients. 2020 Aug 6;12(8):2349. doi: 10.3390/nu12082349.
※4:
Effects of Ramadan Observance on Dietary Intake and Body Composition of Adolescent Athletes: Systematic Review and Meta-Analysis
Nutrients. 2020 May 28;12(6):1574. doi: 10.3390/nu12061574.
※5:
Sex‐specific metabolic responses to 6 hours of fasting during the active phase in young mice
J Physiol. 2020 Jun;598(11):2081-2092. doi: 10.1113/JP278806. Epub 2020 Apr 13.
※6:
Intramyocellular lipids form an important substrate source during moderate intensity exercise in endurance-trained males in a fasted state
J Physiol. 2003 Dec 1;553(Pt 2):611-25. doi: 10.1113/jphysiol.2003.052431. Epub 2003 Sep 26
※7:
Pre-Exercise Carbohydrate or Protein Ingestion Influences Substrate Oxidation but Not Performance or Hunger Compared with Cycling in the Fasted State
Nutrients. 2021 Apr 14;13(4):1291. doi: 10.3390/nu13041291.
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