これまでも「90%の日本国民が超貧困層に。衰退確実の我が国に求められる『整備』とは?」の等記事で、退潮の一途を辿る日本の現状と今後を分析し考察してきた、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。しかし、斜陽化が進行しているのは我が国に限ったことではないようです。今回津田さんは自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、米中2国の国内経済事情を詳しく解説。さらに両大国の景気後退が世界にもたらす好ましからざる影響を予測しています。
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世界の景気後退でどうなるか?
日本は、人口減少によるGDP縮減を財政出動で国債を大量に発行して、その分の資金を市中に供給したが、インフレにならなかった。
これを見て、米国の似非経済学者は、お金を市中に供給してもインフレは起こらず、インフレになるまで、お金をバラ撒いて、経済を活性化するべきとした。それがMMT理論である。
しかし、日本政府と日銀は、国民にお金を配らずに、政府の予算として活用して、日本国債の金利を下げるためだけに、量的緩和を行い、日銀のお金は銀行だけにわたり、銀行はそのお金を市中に出さずに、日銀の当座預金に積み上げただけである。
このため、お金が直接的には国民に渡らずに、一部の人たちにしかわたらなかったことと、そもそも人口減少であり消費が減っているので、インフレは起こらず、そのため、量的緩和を長期に続けていくことができた。ヘリコプターから国民にお金を撒けというバーナンキの言うことを日本政府は、聞いていなかったのである。
しかし、欧米は、日本がインフレにならないことで状況を勘違いして、コロナで国民に大量のお金をバラまいた。このため、国民は余裕をもってコロナを乗り越えられた。
というように、日本の量的緩和は、お金をバラまくことではなく、政治家の権力維持のため予算確保の裏付けの国債発行を続けられるように、長期金利をゼロにする目的であり、欧米は、コロナで働くことができなくなった人たちに生活資金を直接に供給する目的であり、日本とは目的が違っていた。
しかし、欧米では、国民にバラまいたお金で、国民は株式投資や住宅投資、消費に費やしたことで、株バブルと物資不足によるインフレが起きてしまった。
日本とは違い、米国や欧州は移民がいるので人口が増加している。そのような状況で、おカネをばらまいたことで、インフレになってしまったのである。MMT理論では、インフレが起きないが、もし万一インフレになったら、利上げをするということであり、その方向になったのだ。
米国のインフレを受けて、MMT理論通り、FRBとバイデン大統領は、インフレ退治を優先させて、テーパリングや利上げに走っている。このため、米国金利上昇で、日本は超円安になり、輸入物価が上がり、インフレになっていくようだ。
しかし、日銀の黒田総裁は、超円安になりインフレになっても利上げを考えないとした。そして、すでに日銀はテーパリングをしているが、それを公表すると金利上昇になるので、公表もしない。金利ゼロ維持を目的としているからである。
国債発行高がGDPの200%以上もあり、金利上昇が怖いのである。それは正しいし、もし、金利上昇したら、国債費の増額が大変なことになるので、国家財政の破綻になる可能性もあるし、破綻しなくとも、大幅な財政縮小をしないといけなくなる。年金の大幅なカットなど、日本国民は大変、貧しくなることは確かであるので、そのような事態を避けるしかない。
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そして、米FRBが金融引き締めをすると、景気後退になる。これを避けるために、200兆円のインフラ投資を行うとしたが。この予算に対して、民主党マンチン上院議員の反対で議会を通らない可能性が出てきた。
このインフラ投資と利上げは、アクセルとブレーキを同時に踏むことであり、マンチン議員でなくても、おかしいことである。
その上、現在、景気拡大を冷やすための利下げやテーパリングではなく、単にインフレが起こったことでの金融引き締めであり、短期金利は上昇するが、金利上昇による株価下落を見越して、資金を株から長期国債に移していることで、長期金利は下落するという結果になっている。
このため、今後、イールドカーブがフラット化する。このフラット化が起きると株価暴落が起き、景気後退が本格化する。そうすると、FRBは、株価を維持するために、量的緩和を再開するか、そのまま、利上げをしてインフレ退治を優先するかの岐路になる。
そして、米国景気が落ちると、世界経済もそれに引きずられて、落ちていくことになる。日本の景気も当然、落ちていく。インフレ下の景気後退で、スタグフレーションに世界は襲われる。
世界的な景気後退になると、人は生活必需品を優先的に買い、ハイテク製品を買わなくなる。これにより、米国のハイテク株の暴落にもなる。すでに、今赤字やPER100倍以上のハイテク株は下落しているが、大幅な黒字ハイテク企業のアップル、メタ、テスラ、マイクロソフト、エヌビディアなどの株価も落ちていくことになる。
米国の景気上昇は、株価の上昇で起きているので、そこがコケると景気の腰折れになる。非常に大きな景気後退になるのだ。
そのような世界的な景気後退になると、米国は共和党右派と民主党左派に分断しているので、この分断が深まり、米国国内紛争に発展することになる。
これを避けるためには国論を統一できるテーマが必要になる。それが中国パッシングである。中国を敵として、米国民の世論を一致させるしかないことになる。
景気後退時、米国はすぐに世論を海外の敵に向けて、政権維持を図る習性がある。今までは、それが成功してきた。日本もこれでやられた。
このため、いやな米中対決になってしまう可能性があるとみる。
中国もITハイテク企業の規制強化と課税強化で、経済規模の拡大ができなくなっている。その上に、富裕層が投資している不動産価格の引き下げや不動産税を取るなどで、富裕層の投資資金に課税しようとしている。このため、富裕層は、中国国内での投資を諦めて、海外への投資を増やすことになる。
その資金が日本の不動産にも来ているので、不動産価格が上昇している。
中国の人口も減少してくるので、景気は悪くなり、習近平国家主席への圧力が大きくなる。このため、中国も海外へ国民の目を向けさせようとする。このため、米国が中国を敵とするなら、中国も米国を敵とした対応になることが確実である。日本とはそこが違う所で戦争に向かうことになる。
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しかし、米中対立が戦争になると人類が滅びる可能性もあり、対決を中和させる必要になる。
まず考えられるのが、代理戦争である。ロシアのウクライナ侵略やイスラエルのイラン空爆などの米中戦争にしない代わりに、それに代わる戦争をして、米中が自国民の目を海外に向けさせる可能性がある。
このため、米中直接対決にしないために、米中の首脳会談が行われ、限定戦争を周辺地域で行おうとする。その戦争を請け負うのが、ロシアであり、イスラエルになる可能性がある。
地域紛争というには大きな戦争になるはずで、イスラエルが戦争を起こすと、中東地域の全体を巻き込んだ大戦争になる。ロシアがウクライナに侵攻すると、こちらも欧州を巻き込んだ大戦争になる。
もし、それができないと、米国は分断が極まり、分裂することも考えられるし、中国は習近平失脚ということにもなりえる。戦争に向かうのか、革命や分裂に向かうのか、分からないが、何かが起きると思われる。しかし、そこまで行くのは、来年ではないとみる。
さあ、どうなりますか?
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