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すべての経営者が持つべき、X JAPANのYOSHIKIの使命感と突破力

一定程度の成功を収めるもののその後失速してしまう企業と、青天井の成長を見せる企業。両者の違いはどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では浅井良一さんが、X JAPANのYOSHIKI氏が語ったエピソードを紹介しつつ、マイナスの境涯が成功に対して有利な力点であることを解説。その上で、現状に満足感を抱いている経営者が持つべき意識について考察しています。

“目的”こそ成果の源泉 “使命”の覚醒

X JAPANのYOSHIKIさんが、テレビの対談番組で「曲とかを、自分を救うために書いてきた」ところが「その曲を聴いて救われた」という人の声を聞き「救われる人がいる」ことに気づいたと言ったのです。「人は“使命”を持って生きている」だから「音楽で人の幸せにすることが“使命”で」「頂点に向かって、突き進んでいく」と言うのです。

この対談でYOSHIKIさんは、10歳の時の父親の自殺を語り、またメンバーの死という経験があって「心の傷口はふさがらない。だったら流れている血で曲や詞を書こうと思った」と心境を吐露しています。ここで言いたいのは「心を打つ創作」には、それを引き起こす震源があり、そこで“使命”を感じた時“昇華”が起こるということです。

これとは別に多くのいわゆる立身出世型の経営者には、恵まれなかった生い立ちが「起爆剤」になるケースが多くあります。松下幸之助さんのような親から引き離されて丁稚奉公や、親兄弟の生活を背負った稲盛和夫さんや、在日韓国人だったために豚や羊と一緒の極貧で不衛生な生活を過ごした孫正義さんがそんな例です。

最初の出だしが“悲愴”からですが、けれど“創作”はこれとは異なる弾けるような感動や尽きせぬ楽しみから生まれ出でることもあり、ソニーの井深大さんのように幼児期からの「カラクリ大好き」や、本田宗一郎さんのように自動車の排気ガスの臭いに魅せられて追いかけまわした憧れが「心を打つ創作」に転換することもあります。

この系譜の人たちが加えての“価値観”「誰の真似もしない」「今まで世になかったものを」「世界をターゲットとし一番になる」を持ち、さらに「日本のために」「世界人類のために」「世を中に便利なものを」などの“使命感”を持つとき偉大さを出現させることにもなります。「利益をあげる」は必須条件ですが、出発点はここからです。

ここで言いたいことは、プラスにしろマイナスにしろ大きな「ポテンシャル(潜在力)」がなければ「事は始まらない」ということです。「成果を得る」については、マイナスの境涯こそが見方を変えれば“有利な力点”を得さしめることにもなるとも言えます。知恵のある渇望が、使命感を覚醒できれば約束された未来が生れます。

そんな意味では、プチ・リッチな苦悩のない幸せな境涯であるならば、不安感をさらに危機感を持たなければ、幸運は廃れかねません。経営者が、今が満足ならば満腹ならば危険であると言えます。経営者は、YOSHIKIさんのように「××で人の幸せにすることが“使命”で」「頂点に向かって、突き進んでいく」でなければ失速します。

その意味で、スティーブ・ジョブズの米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ「ハングリーであれ。愚か者であれ」は、一見、奇をてらっているようで、その実ことの真実を伝えています。

顧客欲求の変化に向かって革新

昭和のカリスマとも言われた中内功さんが「価格は消費者が決める」を旗印に「適正価格のパナソニック」と「30年戦争」を行いました。この小売業の盟主として一時代を築いたダイエーですが、屋号こそ継続されたものの2015年イオンに合併されて消滅することになりました。その活動は、時代を先駆けそして遅れたことで幕を閉じました。

日本の戦後社会の変遷を振り返ると、こうなるとのことです。

フェーズ1は、メーカーによる合理化の時代で、フェーズ2は、流通業による合理化の時代だとします。フェーズ3の「消費者による生活の合理化の時代」となり、ダイエーはフェーズ2の革命児として台頭してきた企業と言えます。

中内功さんをして革命児としての活動に駆り立たのは、第二次世界大戦での凄惨でみじめな戦争体験と俘虜体験でした。敵から手榴弾の攻撃を受け、瀕死の重傷を負い死を覚悟したそんなさ中で、家族ですき焼きを食べていた情景がうかび「もう1回腹いっぱいすき焼きを食べたい」と思ったと言います。

復讐するかのような事業活動について、こんな風に語られています。

「フィリピンの野戦でいったん死線を通ってきたのが私の原体験。人間は幸せに暮らしたいと常に考えています。幸せとは精神的なものと物質的なものとがありますが、“まず物質的に飢えのない生活を実現していくことが、我々経済人の仕事”ではないかと思います」

さらに「物質的に豊かさをもった社会こそ豊かな社会ではないか。好きなものが腹いっぱい食えるのが幸せです」と語っています。

中内さんの願いは多くの消費者の共感と支持を受けて、そのガムシャラな攻めの事業拡大で、一時代の貢献を確かに果たしました。けれど「腹いっぱい食える幸せ」をはたせた消費者は何を望むのか。そのことに回答を与えられなかったがのがダイエーで、そこに焦点を当てて“業務革新”を行ったイトーヨーカドーは浮かび上がりました。

ダイエーでは革新が行わなかったか言うと、ヤマハの社長だった河島博さんを副社長として招聘しV字回復させる改革を託したのです。この改革は一応の成果を得たのですが、子息への事業継承に固執してこの功労者と有能な人材を外へ放出してしまったのです。イトーヨーカドーは、鈴木敏文さんに任せて口出ししなかったのです。

時代の欲求は、それが達成されると断絶を持って移行してゆきます。現代はフェーズ3の「消費者による生活の合理化の時代」であり、「セブンイレブン」が「ヤマダ電機」が「ユニクロ」がさらに「アマゾン」をはじめとする「GAFA」などが台頭してきています。いつもそうですが過去の延長線上では、変質した欲求に応えられません。

中内さんは「お客様のためにと考えた」のですが「お客様の立場で考える」までには至らず「過去と現代を起点にして発想した」のですが「未来を起点にして発想する」ことがなかったのです。また革新の源泉である「知恵と知識と見識と勇気のある人材」を一旦は登用しながら、それらを持っているか疑問な子息にこだわったのです。

鈴木敏文さんは「無から有を生み出すには『未来を起点にした“発想”』が大切」「過去が、今を決めるのではなく、未来が今を決める」とし、「過去の経験というフィルターが、未来を見えなくする」「誰もが未来とお客様から『宿題』をもらっている」とします。これらの“発想”は希少で、最初ほとんどの人から大反対を受けます。

余談ですが、自分の子孫に事業を継がせたいというのは“親としての業”で、あの鈴木敏文さんも子息の鈴木康弘を異常に重用し「このままではセブンイレブンがおかしくなる」と噂されたのです。さらに松下幸之助さんでさえ「正治を会長から引きずり下ろせ。引退させたら二度と経営に口を出させるな」と悔やんだそうです。

さらに余談ですが、ホンダは本田さんも藤沢さんも「息子を会社に入れるのはようそうや」と約束し合い身内を後継者としていません。ソニーも井深さんも盛田さんとも、身内を後継者にしていません。もし、身内に自身の事業を継がせたいのなら経営の意思決定に参加させないか、しなくてもよい仕組みを構築することだと思うのです。

ところで、ホンダにもソニーには興味深い共通点が多くあります。それは“無垢な価値観”から派生しているようで「自分たちの好きなことやろう」「誰もやなないことをやろう」「世界一をめざす」「社会に貢献しよう」といったものでここから“使命感”が生れています。そして、この価値観が共感する優秀な人材を巻き込んでゆきます。

「知識こそ最大の資産」であり「好きこそものの上手なり」で、意欲旺盛な達成感を希求する人材を引きつければ、そしてそれらの人材が満足を持って挑戦できる環境があれば負けるはずはないと言えます。もとより成果物については“時代”が“社会”が、それを評価しますが、“普遍的な効用”ならば、世の移ろいに関係なくそれは継続されます。

パーパス(存在意義)

「存在意義」を意味する「パーパス(Purpose)」が、経営手法のキーワードとして「パーパス経営」となり用いられているそうです。“労働”から”知識”に「成果の源泉」が移行しているのでとうぜんです。

こんな記事が出ていました。「米スターバックスやIBMなどが加盟する団体は、消費者100万人の評価を基にした4,000社超のパーパスの点数と、収益との関係を分析した。高パーパス企業は、投下資本利益率が13.2%で、低パーパスの2倍近かった」と記されていました。より高い創造性と貢献意欲は、より高い欲求満足でしか生まれません。

米マイクロソフト再興の立役者、サティア・ナデラCEOが真っ先に取り組んだのも「パーパス」だったそうです。それは「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」と定めたのです。より高い成果の実現は、働く人の高度の満足を満たすことに起因します。

「最大の資産」である「人材の能力と活力」を発揮できなければ存続できなくなってきている企業にとって「パーパス」は必須です。この意味を熟知できるかどうかが、マネジメントの岐路とも言えます。

image by: Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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