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人気の火鍋店『海底撈』は世界3位の外食企業。秘密は究極の“ホワイト体質”

今や日本でも人気の火鍋のお店となった『海底撈(かいていろう)』。外食企業ひしめく中国でもトップを走り続け、世界3位の外食企業となっています。そんな巨大企業の内部を記した一冊をメルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の中で紹介しています。

世界3位、中国1位の外食企業⇒『海底撈 知られざる中国巨大外食企業の素顔』


海底撈 知られざる中国巨大外食企業の素顔

山下純・著 徳間書店

こんにちは、土井英司です。本日ご紹介する一冊は、年間利用者数2億人、時価総額5兆円超の中国最大手の外食チェーンにして、世界3位の外食企業、海底撈(かいていろう)を本格的に取り上げた、初めての本。

著者は、パナソニックの社員として通算15年中国に駐在し、2017年から2020年の3年間、海底撈との合弁企業の初代総経理を務めた、山下純さんです。

本書では、海底撈がなぜそんなに人気を集めているのか、創業者・張勇氏とはどんな人物なのか、有名な「変態級接客サービス」とはどんなものなのか、そしてこれまで知られていなかった同社のマネジメントシステムについて、著者が解説しています。

松下幸之助とナポレオンに影響を受けたという創業者の戦略思考・顧客志向、中国文化に根ざした独自の家族制度・師弟制度を創り、農村のハングリー精神あふれる若者を鼓舞するシステム、そして文字通り「変態級」な接客サービス…。

現時点で、日本企業のどこも追随できないほどのマネジメントシステム、過剰サービスの実態が紹介されており、度肝を抜かれます(ちなみに海底撈では、待っている客には、フルーツやスナックが振る舞われ、無料のネイルサービス、ゲームなども提供されます)。

また、北京に1号店がオープンしたスマートレストランの試みも、コロナ禍の今、注目すべき試みでしょう。

テクノロジーとイノベーションの力で、外食産業の常識を次々塗り替えていく同社に、日本企業が学ぶことは多いと思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

初めて海底撈の店を訪れた人は、まず、中国では珍しいその過剰と感じるほどの接客サービスを受けて驚く。(中略)待たせている客を飽きさせないための無料の靴磨きやネイルサービスがあり、入店を待っている客にはフルーツやスナックが振る舞われる。待合ホールでは、海底撈の店舗限定の参加型スマホゲームで遊べたり、中国将棋や各種ボードゲームも無料で貸し出されたりしている。

海底撈の社内には創業者の張勇氏以外にも、英雄的な存在のベテラン社員が数多く在籍していて、それぞれエピソードや伝説を持っている。そういった話は社内報などでしばしば紹介されている。

才を用いることができる人は、自分の時代に組織を繁栄させるだけでなく、未来に繁栄を継続させることのできる人でもあるのだ。一方、才に長けた人は、自分の時代には繁栄を見ても、それを継続させる力を組織に吹き込むことができない。

海底撈の社員の基本月給は5,000元(約7万5,000円)程度から始まる。中国大企業の大卒新入社員レベルの給料と比べても決して見劣りしない。しかし、海底撈の社員を惹きつけてやまないもうひとつの制度が「両親手当」だ。つまり、5,000元の基本給に加えて、海底撈から田舎の両親の銀行口座に直接200元から400元(約3,000円から6,000円)の現金が毎月定期的に振り込まれるのである。

これと似た制度で、祖父母手当もある。祖父母の誕生日には、500元(約7,500円)が直接祖父母に振り込まれる。(中略)祖父母や両親への孝行を最大の美徳と考える中国においては、これ以上効果的な激励や動機づけはないだろう。

海底撈では、店長がAランクの評価を連続で取得し続けると、自分の弟子を独立させることができる権利が付与される。(中略)部下が店長になると、その部下が運営する店舗の売り上げの2~3%が師父の報酬となる。またさらにその部下が自分の部下(孫弟子)を育てて店長になれば、その店舗の売り上げの数%も師父である最初の店長の報酬とすることができるのだ。(中略)さらに驚くべきことは、師父である店長が、仮に海底撈を退職したとしても、なんとこの弟子からの上納金は、師父の個人口座に振り込み続けられる仕組みになっている。

土井は、仕事仲間や友人がいる関係で、上海に2回、北京に1回、深センに2回行きましたが、あの火鍋激戦地で、圧倒的優位を築く同社の戦略には目をみはるものがあると思っています。

ウィリアム・H・マクニールは、ベストセラーとなった著書『世界史(上)』のなかで、「世界の諸文化間の均衡は、人間が他にぬきんでて魅力的で強力な文明を作りあげるのに成功したとき、その文明の中心から発する力によって攪乱される傾向がある」と述べましたが、今後、世界を撹乱するのは、間違いなく中国・インドの文化だと思っています。

※ 参考:『世界史(上)

今後の接客やコミュニケーション、マネジメントがどう変わっていくのか、知る意味でも本書は注目の一冊だと思います。ぜひ、読んでみてください。

image by: Shutterstock.com

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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