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東京創業のロッテ、その「光と影」。韓国で稼いだカネは日本に入れず

これまで2回に渡り、朝鮮半島出身の青年が一代で築いた「ロッテ」の足跡を辿ってきた、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さん。日本生まれのロッテを韓国有数の財閥にまで成長させた創業者・重光武雄氏ですが、全てが順風満帆とはいかなかったようです。宮塚さんは今回、ロッテが日本の国税庁から指摘されていた問題点や、重光氏が最期まで気に病んていたという跡継ぎ騒動等を紹介しています。

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※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年2月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:宮塚利雄みやつか・としお
宮塚コリア研究所代表。韓国・慶熙大学校碩士課程、檀国大学校博士課程修了。山梨学院大学教授(1992~2015年)。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚寿美子と共著)、『北朝鮮観光』「がんばるぞ!北朝鮮』『アリランの誕生』『日本焼肉物語』『パチンコ学講座』、そのほか翻訳本多数あり。

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ロッテ財閥研究(3) 日韓を股にかけて事業を成功させた重光武雄の「光と影」

在日1世で事業に成功して故郷に「衣錦還郷」(故郷に物質的還元を行うという朝鮮儒教の思想)した人物はいるが、重光は「日本で得た利益を韓国に投入し、郷里と祖国の繁栄に貢献することを目標に、日本と韓国をまたぐ巨大なコンツェルンを築き上げた」稀(まれ)なカリスマ経営者であった。

軍事クーデターで政権を握った朴正熙(パク・チョンヒ)少将に請われて、日韓条約締結後いち早く韓国に進出したが、開発独裁主義の朴正熙政権は、日本からの資金・技術の導入だけではなく、在日1世からの本国への投資も積極的に勧めた(ただし、重光のように国交正常化後いち早く進出した在日の企業はないに等しかった)。

私は、重光が日本で得た巨額な資金を韓国事業に投じ、日韓の経済発展段階ギャップを利用した「タイムマシン経営」を実践して、巨大財閥を築き上げることができたが、そこには、初期の「資本の本源的蓄積過程」において朴正熙大統領を中心とする慶尚道閥の「人的な縁故」が大きな役割を果たしたと前号で述べた。

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ロッテ財閥は、今や韓国では五指に入る大財閥である。

ロッテは、ソウル市にあるロッテ百貨店・ロッテホテル・ロッテワールド(テーマパーク)の3施設を中核としたサービス業を中心にその事業分野は多岐にわたっている。

ロッテ財閥として、百貨店業界では世界5位。製菓業界ではアジア1位。ホテル業界ではアジア3位。ホームショッピングでアジア1位。石油化学業界で世界10位など、韓国でも屈指の財閥となった。

ところが、「韓国ロッテは、設立時から日本で稼いだ金を韓国に投資し始めるも、韓国で稼いだ金は一度も日本に持っていくことはなかった」ことが指摘され問題となった(2016年6月12日、一連の経営騒動の中でロッテグループは、韓国ロッテが1967年に設立されて以降、2004年まで日本のロッテに配当金をしていなかったという事実を報道資料を通して明らかにした)。

2005年に日本の国税庁は、日本ロッテに「38年間で2,000億円を韓国に投資したのに1銭も日本に配当がない」趣旨の指摘をし、それから日本側に配当を始めたとのこと。

2015年時点で日本側の売り上げが3,145億円に対し、韓国側では6兆4,798億円だったというから、猛烈な差があった。

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韓国の財閥に多少なりとも関心がある方は、韓国の財閥創立者とその後継者問題について何らかの蘊蓄(うんちく)があるのではないだろうか。韓国を代表する大財閥の三星グループと現代グループの総帥が、後継者選びで難儀をしたことは、韓国・MBCテレビの『英雄時代』で、三星の李秉喆(イ・ビョンチョル)と現代の鄭周永(チョン・ジュヨン)両氏をテーマにしたものであるが、お家騒動の的となる「跡継ぎ」は、古代から「長男が継承」というのが定規かと思ったら、そうではなかった。

ドラマの中で三星の李秉喆が後継者に長男を指名せず、三男の健熙(ゴンヒ)を選んだが、長男と次男の反発は激しいものであった。なお、この『英雄時代』は盧泰愚(ノ・テウ)大統領か大統領府の青瓦台からの圧力によってか、収録終盤で中止となった。

疾走のごとく駆け上がってきた重光武雄も、2011年に次男である重光昭夫(辛東彬/シン・ドンビン)が会長に昇進し、2代目経営体制に移行した。日本ロッテグループは、長男である重光宏之(辛東主/シン・ドンジュ)が会長として統括していたが、2015年1月にロッテホールディングス取締役会長職を解任され、事実上経営陣から放逐された。2020年4月1日に、日本ロッテホールディングスの会長に重光昭夫が就任し、韓国に続いて日本でも会長となり、グループの経営権を握った。

2020年1月19日に重光武雄はソウル市内の病院で死去したが、「衣錦帰郷」は果たしたものの、最後は後継者選びで骨肉の争いを演じられたことを本人は心残りとしていたとのこと。

このロッテお家騒動の次男が韓国に入り、「ロッテは韓国企業」と韓国民に明言したことは有名である。

(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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