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ついに内部崩壊か。全ロシア将校協会がプーチンに辞任要求の衝撃

軍事衝突回避のため各国が外交努力を尽くすウクライナ情勢ですが、プーチン大統領には仮に独立国家の地位を奪われようとも、ウクライナに侵攻せざるを得ない事情があるようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、全ロシア将校協会がプーチン大統領に辞任を要求する公開書簡に記された、プーチン政権が戦争を選択する理由を紹介。ウクライナ侵攻の「真の目的」は、まさに衝撃極まるものでした。

全ロシア将校協会がプーチンに辞任を要求

世界を見ると、北京オリンピックで盛り上がっています。一方世界情勢の中心は、「ロシアーウクライナ問題」です。はたしてロシアは、ウクライナに侵攻するのでしょうか?

※ 「ロシアがウクライナに侵攻する?ようわからん」という方は、まずこちらをご一読ください。知るべきことは全部わかります。
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ウクライナ侵攻をもくろむプーチンの「本当の狙い」はどこにあるか(DIAMOND online)

ロシアがウクライナに侵攻する?

ロシアは昨年11月から、ウクライナとの国境近くに10万人の大軍を集結させています。ウクライナの北隣ベラルーシからも進軍できる状態をつくりつつある。

ところで、「なぜロシアは、ウクライナに侵攻したいの?」

プーチンは、NATOの東方拡大をずっと脅威に感じていました。わかります。ソ連崩壊時、「反ソ連(反ロシア)軍事同盟」NATOの加盟国は16か国だった。それが今では30か国まで増えている。アメリカは、拡大を止める気がなく、旧ソ連国のウクライナ、ジョージアを引き入れようとしている。

そして、何よりもプーチンが憤っているのは、「アメリカは1990年の東西ドイツ統一前に、NATOを東方拡大しないと約束したが、ウソをついた」ことなのです。それでプーチンは、「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証をしろ!」と要求しています。ところが、アメリカ、NATOはロシアの要求を拒否した。

「だからウクライナに侵攻する?」「いや、それはどうなんだ?飛躍しすぎなのでは?」

そう考える人たちが、ロシアにもいるのです。

「全ロシア将校協会」衝撃の公開書簡

「全ロシア将校協会」という団体があります。要するに、将校がつくる協会。2月初め、その公式HPに衝撃的な内容が掲載されました。【プーチンの辞任を要求する公開書簡】です。

何が書いてあるのでしょうか?全部訳すのは大変なので、重要ポイントを要約しておきます。

ロシアの脅威とは?

この書簡で、「全ロシア将校協会」のイヴァショフ会長は、これまでのソ連やロシアの戦争は、他に選択肢がなくなった時の「正義の戦争」だったと強調します(彼の念頭にあるのは、ナポレオンがロシアに攻め込んできたとき、あるいはヒトラーがソ連に攻め込んできたときなどでしょう。要するに「自衛戦争」だったと。しかし、1979年からのアフガン戦争のように世界的に非難された戦争もありました)。

では、今のロシアに、生存を脅かすほどの脅威があるのでしょうか?イヴァショフは、脅威はあるが内政にかかわるものであるとしています。「国家モデル」「政権の質」「社会の状況」に問題がある。今のような状態では、「どんな国でも、長く生存することはできない」と主張します。

では、プーチンが強調する、「外からの脅威」はどうでしょうか?イヴァショフによると。外からの脅威は存在するが、ロシアの生存を脅かすほどではない。

全体として、戦略的安定性は維持されており、核兵器は安全に管理されており、NATO軍は増強しておらず、脅迫的な活動をしていない。

ロシア―ウクライナ関係

ロシアには、外からの大きな脅威が存在しない。では、今起こっている混乱と対立の原因はなんなのでしょうか?

イヴァショフは「人工的なものだ」と断言します。「人工的」というと、今までのロシアでは、「アメリカが黒幕だ!」ということが多かった。ロシア人のおそらく90%ぐらいは、「アメリカ陰謀論者」です。

そして、プーチンが「ウクライナをNATOに入れるな!」と要求している件について。イヴァショフは、ソ連崩壊の結果ウクライナは、独立国家になり、国連加盟国になった。そして、国連憲章51条によって、ウクライナは、個別的自衛権、集団的自衛権を有している。つまり、ウクライナにはNATOに加盟する権利があるのだと。

ソ連崩壊後、独立国家になったウクライナ。どうすれば、「ロシアの友好国」にとどめておくことができるのでしょうか?

イヴァショフによると、ロシアの国家モデルと権力システムが魅力的なものである必要があった。ところが、ロシアモデルは、魅力的にはなりませんでした。事実上すべての隣国とその他の国々を遠ざける結果になったとイヴァショフは嘆きます。

そして、世界のほとんどの国がクリミアを今もウクライナ領と認識している。このことは、ロシア外交と内政の失敗をはっきりと示している。

最後通牒と武力行使の脅威によってロシアとその指導部を愛させる試みは無意味で非常に危険だ。

ウクライナ侵攻の結果は?

そしてイヴァショフは、「ウクライナ侵攻」がなぜダメなのか解説します。

第1に、国家としてのロシアの存在を危ういものにする。第2に、ロシア人とウクライナ人を永遠の敵にしてしまう。第3に、ロシアとウクライナの若くて健康な男性が、数万人亡くなる。

さらに興味深いことに、イヴァショフは、NATOが結局ウクライナ側に立ち、ロシアに宣戦布告する。ロシア軍はNATO軍と戦うことになると予測しています。

さらに、ロシアは間違いなく平和と国際安全保障を脅かす国のカテゴリーに分類され、最も厳しい制裁の対象となり、国際社会で孤立し、おそらく独立国家の地位を奪われるだろう。

イヴァショフは、ウクライナ侵攻によってロシアは「独立国家の地位を奪われる」としています。

それはともかく、国際社会で孤立し、厳しい制裁によって、ロシア経済がボロボロになることは間違いないでしょう。

ウクライナ侵攻、真の目的は?

ここからが興味深い。

イヴァショフは、プーチンも政府もロシア国防省も、これらの結果を理解しているとしています。悲劇的な結果を理解しているのなら、なぜロシアの大軍はウクライナ国境に集結しているのでしょうか?イヴァショフさんの結論は、衝撃的です。

このことと「ウクライナ侵攻」のつながりは?

そして、全ロシア将校協会は、プーチンの辞任を要求しています。

どうでしょうか?イヴァショフさんの見解が正しいのか、私にはわかりません。しかし将校を束ねる協会が、プーチン政権をこのようにみているという事実は重要でしょう。

プーチンが辞めるかどうかはともかく。ウクライナ侵攻がなくなり、平和が維持されることと願います。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年2月9日号より一部抜粋)

image by: Seneline / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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