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お先真っ暗な日本の未来。中国とロシアの暴走が壊す北東アジアの平和

領土や人権等の問題をめぐり西側諸国と対立する中国とロシアですが、その「覇権的な動き」は日本に明るくない未来をもたらす公算が大きいようです。先日掲載の「中露海軍が『津軽海峡』航行の衝撃。日本は“鬼門”の防衛力を強化せよ」で二国の脅威を詳細に綴った、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、中露の動きがこれまで以上にエスカレートする可能性を指摘。さらに彼らにより北東アジアの分断が進みつつある事実を記すとともに、日本が安全保障面で接近を強めるべき国の名を挙げています。

中国・ロシアによって分断が進む北東アジア

今年に入って、中国やロシアの覇権的な動きが先鋭化している。まず、ロシアはウクライナ国境近くに軍を10万以上とも言われる軍を展開し、同国へ侵攻する動きを見せるなど今日緊張が高まっている。米国のブリンケン国務長官は1月5日、ドイツのベーアボック外相と会談してロシアが軍事的圧力を強めるウクライナ情勢について話し合い、ロシアが軍事的侵攻をした場合は大規模な経済制裁に踏み切ると警告した。バイデン大統領も2月が危ないと指摘するなど、2014年のウクライナ危機の再現を危惧する声が高まっている。長年、プーチン大統領は北大西洋条約機構NATOの東方拡大、ウクライナの西洋接近を強く警戒しており、軍事的圧力を強めることでそれらを阻みたい狙いがある。ロシアは2014年2月のソチ五輪後にクリミア半島侵攻に踏み切ったことから、北京五輪後が危ないとする見解も多い。

また、北京五輪を巡る外交的ボイコットもあり、欧米と中国の対立は既に後戻りできないところまで来ている。これまでのところ外交的ボイコットを表明したのは米国に続き、英国とカナダ、オーストラリアとニュージーランド、バルト三国のリトアニアだが、北京五輪の偉大な成功を掲げる習政権が同開催中に大きな動きに出る可能性は低いが、五輪後に外交的ボイコットを実施した米国や英国などに制裁措置で報復を行う可能性は否定できないだろう。中国を巡る欧米の警戒意識が強まっているが、米国と中国の経済力や軍事力は接近する一方で、中国がインド太平洋における米国のパワーは大したことがないと判断する時が来れば、それはかなりの危険信号となろう。今年はロシアと中国の覇権的な動きが一気に進む恐れがある。

一方、ロシアや中国の覇権的な動きによって、北東アジア地域の崩壊が進んでいる。中国は日本を経済力で抜き米国に接近することで自信を深めている。そして、尖閣諸島や南シナ海などで海洋覇権を強め、2020年には国家安全維持法を施行することで香港の一国二制度を破壊し、台湾統一に向けての動きを加速化させるなど、北東アジアは米中対立の最前線となっている。東南アジアはASEAN、欧州はEU、アフリカはAUなど他の地域には各地域の問題を共同で話し合う地域的国際機関が存在する。しかし、そういった地域的な国際機関が全くなくバラバラなのが北東アジアだ。中国は米国の影響力を排除し、北東アジアで主導権を握ろうとし、北朝鮮はミサイル発射を繰り返すなど孤立主義的な行動を取り続け、韓国は米国の同盟国ながら中国との経済関係を重視するなど米中対立の狭間で悩んでいる。日本は日米同盟を基軸に自由で開かれたインド太平洋の実現を進めるスタンスなどで、これら3か国と協力できる環境にない。

中ロが加速化させる北朝鮮の一方的な行動

そして、中国がこのまま覇権的な動きを続け、米中対立が長期化すれば北東アジアの分断はいっそう進むことになる。中国が軍事力で北東アジアで米国に対して優位になる日は決して遠くないかも知れない。昨年夏、バイデン政権はアフガニスタンから米軍を完全撤退させたが、在日、在韓米軍が撤退することはないにしても、米国の内向き化が一層進み、米軍が中国軍を徐々に抑止できなくなり、それ相当の役割を日本や韓国にこれまで以上に求めてくる可能性は十分にあり得よう。

また、ロシアの動きも北東アジアを分断させている。ロシアも中国の北極進出には警戒をしているが、米国を戦略的競争相手と位置付けており、仮にウクライナ侵攻でバイデン政権が腰抜け的な行動を見せれば、ロシアの北方領土を含む北太平洋、もっと言えば日本海での軍事活動がさらにエスカレートする恐れがある。最近は、ロシア海軍と中国海軍の船舶が共同で津軽海峡を通過し、太平洋沿いを進み、大隅海峡を通過するなど、明らかに軍事的威嚇がみられる。

【関連】中露海軍が「津軽海峡」航行の衝撃。日本は“鬼門”の防衛力を強化せよ

こういった中国やロシアの動きは、北朝鮮の一方的な行動も加速化させる。今年1月だけでも6回もミサイル発射を実施しているが、バイデン政権が中国ロシアに十分な行動を取れないと北朝鮮の行動もさらにエスカレートすることだろう。北東アジアの将来は日本にとって明るくない。もし協力相手を選ぶのであれば韓国となるが、韓国は安全保障で日本と協力することは歴史問題もあり難しい。よって、日本としては北東アジアの外にあるインドやオーストラリア、ニュージーランドなど安全保障的な接近をいっそう強める必要がある。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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