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アップルもアマゾンもやっている。トップ企業が高業績をあげる“必須要件”とは

世界的に有名な企業は、その他の企業と何が違うのでしょうか。実は、世界株価の時価総額トップ5の企業のほとんどに共通していることがあるといいます。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では浅井良一さんが、 アメリカの企業体制や雇用制度などを解説しながら、トップ経営者の話を引いて勝つためのマネジメントについて論じています。

勝つマネジメントを超えて 負けに不思議の負けなし

世界の株価の時価総額のベストファイブですが、1位はアップル2.8兆ドル、2位はマイクロソフト2.4兆ドル、3位はサウジアラムコ1.9兆ドル、4位はアルファベット(グーグル)、5位はアマゾン・ドット・コムです。

これらの企業に共通するのは、サウジアラムコ以外はドラッガーの言う知識(最大の資産)を活用した企業であるということです。

今日“知識”を活用しないでは、時代及び顧客のニーズそして欲求に応えることできず、ここが経済成長の基盤になるということです。内外問わずいかにして“知識”を引き出すか、現場、現実を通して顧客の現実、欲求、価値情報をつかむかが企業の未来を決するといえます。顧客の立場に達って、未来を起点にしてが企業に立ち位置となります。

プロ野球の野村克也さんが、江戸時代の大名剣客であった松浦静山の剣術書から引用して、こんなことを述べられているそうです。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」だと。事業を行うについても原理・原則に則らないでは「負けに不思議の負けなし」で、たまたま「不思議の勝ち」を得てもやがては破綻します。

よりよくマネジメントを習得することは「負けないため」の在り方です。ひところ「成果主義」なるものがもてはやされて、あたかも先端の経営手法であり、これなくして業績向上はなされないかのように言われました。

しかし、結果は日本の社会環境や精神風土を考慮せずであって、浅はかに行ったがために無残な結果を招来してしまいました。

アメリカの雇用制度やその考え方は、日本とはかなり違っています。期間の定めのない雇用契約おいては「雇用者・被用者のどちらからでも・いつでも・いかなる理由でも・理由がなくても自由に解約できる」という「At-Will(任意の雇用)」の原則があるのだそうです。契約条件が適わなければ、互いに随意に解約できるのが原則です。

ソニーの盛田昭夫さんが本格的にアメリカ進出するために事務所を開設したときの話ですが、とにもかくにも会社の形態を整えようと急いだがためにとんでもない人材が紛れ込んでいて、タイプが打てないタイピストや帳簿がつけられない経理マンでほとほと困ったそうです。

けれど、これらの人材は簡単に解雇できたので問題は解決したそうです。

アメリカは職務給で、一定の業務において人材が必要であれば契約を結び雇用するのですが、あらかじめ「ジョブ・ディスクリプション(JD、職務内容記述書)」を明らかにしそれをもとに契約するのだそうです。

だからこの条件にスキルが満たなければ契約違反で解雇できます。日本のように、新人を採用し育成しながら仕事をさせるのとは違うのです。 

盛田さんは、アメリカとはなんと経営者にとってありがたい国だと感じたのですが、しばらくしてそんな良いことばかりでないと気づくのでした。

とにかく事業にはセールスが重要だと、セールスマネジャーを育てようと必死になって手取り足取りで育てたのですが、いざ活躍してもらおうとしたところ報酬を倍出すライバル企業へ鞍替えされてしまったのでした。

この時に盛田さんは「アメリカの“合理性と怖さ”を、つくづく実感させられた」と述懐されており、実際にやってみて体験しなければ、事の真偽は分からないというということなのでしょう。

アメリカでは、できないのであれば契約違反なので自由に解雇でき、できる人は良い条件を求めて次々転職できるのです。

できないのであれば解雇され、できるのであれば更なる好条件を求めて転職可能で、契約社会のおいてはこれが一般常識です。アメリカの人材流動性が高いのは、こんな背景があってのことです。

勝つマネジメント

そんなアメリカの労働環境のなかで、特に印象深い企業があります。それは少し古い話になったかもしれないのですがジャク・ウェルチが指揮をとっていたGE社の“人材解雇”のすさまじさで。ウェルチは「ナンバー1、ナンバー2戦略」を唱えて、その条件を充たさない事業は撤退、閉鎖、売却を行うことを徹底しました。

このこと自体は、多くの優良企業がカリスマ経営者や官僚化した組織に引きずられ、過去の栄光から覚めず陳腐化した業種に拘って革新できず、企業破綻に至らしめる現実があるので、適切なマネジメントといえます。

ウェルチが企業の目的としたのは「勝つこと」で、それも絶対優位がかなえられる「ナンバー1もしくはナンバー2」となることでした。

そのためにとられた戦略が、よく知られるようになった「選択と集中」で、自社が持つ“経営資源の強み”を見極めて「ナンバー1、ナンバー2」の事業かもしくはなれる事業にのみに資源を集中させました。

「ナンバー1、ナンバー2戦略」でないまたなれない事業に所属する人材は、売却であれば移籍先に席はあるかもしれないけれど、撤退、閉鎖するとなれば、ほぼ全員が職を失ってしまうことになりました。

では、残れた人が安穏でいられたかというと「ナンバー1、ナンバー2」を維持するためまたなるために、より高い要求がなされたのでした。

それはどんなものかというと、自己研鑽の環境が整えられ支援されているとはいえ、毎年下位10%と評価された者には解雇が待っていました。

けれど、上位20%であると評価されたならば、称賛と格段の高報酬と高率のストックオプションが付与されてたのです。ただウェルチが行ったのはこれだけでなく、価値観の共有を重視しました。

アメリカであろうとの日本であろうと、高業績を上げる企業にはそれを可能になさしめる必須の要件があります。それは、生産性の高い差別化できる知識とそれらを活用し発揮させる意欲であって、そのため経営者が行わなければならないのは、目的を明確に示した上で人材が持つ必要な知識と能力と活力を開放することです。

事業目的は「圧倒的に勝つこと」「ナンバー1」になることなので、それを阻むムダである“官僚制度”などを破壊して行きました。

方向を明確にし、求めたのは「限界を超えた目標を定め」「垣根を越えて誰からでもどこからでも知識を求め」「チーム・メンバーの知恵と知識と活力を引き出し」「成果を実現させる」“リーダー”でした。

ウェルチは自身の価値観を宣伝して、それを共有することを求めました。その価値観のもとで、人材を育成し活用し、成果を実現させる上位20%をの人材を破格に処遇し業績が下位10%である人材を解雇したのです。

このストレッチ・ゴールの手法において選択できるまたせざるを得ない活動は、価値観に共感しその考え方を活かしてメンバーの能力を高め限界を超えて活かしきって高い業績を獲得して行くというものでした。

このマネジメントの手法は「At-Will(任意の雇用)」で活きる合理的なものの日本では馴染みにくいかつ一過性の成功モデルでもあるでしょう。

ただ少し補足説明が必要なのですが、日本においてもこの手法により好業績を実現させている企業があるのも事実で。

キーエンスでは、顧客の現場に過剰密着し自社内で蓄積してきた知識でもって、顧客に勝る課題解決提案を行い受注を獲得させています。過剰密着できる人材を採用し活用し処遇し、好業績を実現させています。

さらに補足するとキーエンスには「顧客の欲しいというモノは創らない」という言葉があるそうで、それは営業マンは、顧客を上回る課題解決の知識を有しより深く現場に密着し課題を見つけ出すので、「顧客の欲しいというモノを“上回る”モノを創り出す」からで、ストレッチ・ゴールの手法で破格の報酬で動機付けるからです。

ジャク・ウェルチは「20世紀最高の経営者」と称されます。その経営手法は、官僚主義を排し知恵を重視し権限を委譲し、今日も多くの経営者が学び取らなければスタイルを示しています。

しかしマネジメントは「常に変化する中、変革が求められる」ので、成功の後にはそれらを「“上回る”マネジメントを創る」のが原則です。

自己実現欲求のマネジメント

“既存事業”でトップショアを獲得する「ナンバー1、ナンバー2戦略」だけでは、今世紀の経営環境に対応できなくなりました。好待遇、高報酬だけでは今世紀において、人材から競争優位を勝ち得る求められる能力や活力をもはや引き出すことができなくなっています。どうするのか、それに解答を示したのがスティーブ・ジョブズでした。

スティーブ・ジョブズが行ったのは、未来を起点にした「顧客が予想もしなかった“欲しがるモノ”を創り出す」ことで、ある意味で「美的な発想力が結実したクリエーティブ」とも言えます。さらにこの作品を具現化するために、未知で困難なモノにチャレンジできることに喜びを感じる人材を登用し、能力、活力を発揮させたのです。

ただスティーブ・ジョブズの活力の根源は「自己実現欲求」が主で、その効用は「顧客の低中次元の欲求」を満たすことでしかなかったとも言えるのですが、新たなマネジメントの形を示しました。

今世紀においても、富や技術や統治等の知識の格差や矛盾があって、2018年時点では、9人に1人、8億もの人々が飢餓に苦しんでいるそうです。それでもスマートフォンは、誰しもが欲しがるのを当然とするモノです。

今世紀にある問題を解決するには、人間の低次元の欲求を補償しそして基準、評価によって矯正しながら、自己実現と利他的欲求が生き生きと活性し発揮しなければならない場所と機会を与えることです。

バランスを持って物心両面の充足、特に飢餓からの解放やクリーンな環境づくりへの社会貢献が、有能な人材の自己実現欲求を満たすはずです。

これは今世紀において起業家が、「すべての人材の相異なる潜在的な能力を、自己実現欲求を適える」ことを通して、最大限に活用することの可能性を示唆するものです。

ある意味で、これからの「勝つことを超えた価値を得るマネジメント」となるもので、すでに一部では存在意義をかけて始まっています。起業家は「預言者」になれます。

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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