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心理学者が危惧。「悪玉はプーチン」というレッテル貼りによる思考停止

連日報道されるロシア軍によるウクライナ侵攻。理解し難い出来事が起こったときに最も楽で典型的な方法が「善悪」の「レッテル貼り」による「思考停止」であると伝えるのは、心理学者の富田隆さんです。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では、マスメディアの誘導に乗りやすいこの状況下において、日本をはじめとする西側の主流メディアの報じ方が、プロパカンダ色を強めていると警鐘を鳴らします。プーチン大統領を「悪玉」に仕立て上げる一方でゼレンスキー大統領を「英雄」に祭り上げ、その構図を固めるためにフェイクまで駆使していると、富田さん独自の見方を伝えています。

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戦時プロパガンダ

【悪玉が起こした戦争?】

連日のようにウクライナを巡る戦争のニュースがメディアを駆け回っています。今、目の前で起きている戦争、あるいは紛争(conflict)の背景はあまりにも複雑で、その闇も相当に深く、今後の展開を占うことも、より良い「落としどころ」を探ることもなかなか容易ではありません。

命の危険に晒されている現地の人たちはもちろん、世界中の人々に降り掛かる間接的な被害も想像以上に広範囲に及び、この世の行く末を考えれば考えるほど暗澹たる気分になってしまいます。

こうした時に「楽になる」効果的な対処法の代表格といえば、物事を極端に「単純化」することで「思考停止」してしまう(あるいは深く考えたり悩んだりしない)というやり方でしょう。その典型が「善悪」で全てを割り切る方法です。

たとえば、「プーチン悪玉論」。ロシアのプーチン大統領を腹黒く冷酷な、まるで「ヒトラーのような」独裁者と見做(みな)すことで、彼の領土拡大の野望(世界征服?)や底知れぬ権力欲がこの戦争を引き起こした、と考えるのです。

これは、日本のマスメディア(また多くの欧米メディア)が「一押し」で推薦している「視点」です。某公共放送までもが、この線で、完全に一方的で感情的なプロパガンダ報道を続けている有り様ですから、テレビしか観ていないお年寄りなどは、皆「プーチン、けしからん!」と悲憤慷慨しているはずです。

プーチン大統領やロシア軍にネガティブなイメージをなすりつけるプロパガンダ戦略は様々な形で遂行されています。先日もある筋から、「プーチンに精神病の疑いがあるということでインタビューさせてもらえませんか」という問い合わせがありましたが、お断りいたしました。

話を聴いていると、どうやら、「戦争=絶対悪」→「そんな戦争を始めたプーチン=狂人」という線で記事の構成を考えているようです。もちろん、「戦争を始めるなんて正気の沙汰ではない」と言う気持ちもわからないではありませんが、そんなことを言い出せば、ベトナム戦争を拡大したリンドン・ジョンソン大統領も、アフガニスタンやイラクに侵攻したジョージ・ブッシュ大統領も、当時、賛成票を投じた米国議員たちも、皆さん「狂人」ということになってしまいます。

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また、「ピーヒャラドンドンドン」と笛や太鼓を鳴らしながら、錦の御旗を先頭に江戸を目指して進軍した明治維新の元勲たち(というよりは司馬遼太郎の描く英雄たち)にいたっては、精神異常者の「あぶない集団」そのものということになります。

実際、その後の会津戦争などでの蛮行を見れば、やはり彼らは狂人集団であったという感情論も成り立つかもしれません。しかし、いくら当時、「官軍」の皆さんに「貴方は気が狂っている」と指摘したところで戦争も殺戮も終わらなかったでしょう。こうした「レッテル貼り」はただの「気休め」に過ぎません。

【プーチン暗殺?】

いずれにしましても、この半月ほどで、プーチン大統領は世界(と言っても主に欧米や日本ですが)でナンバーワンの「悪役」へと登り詰めました。ロシア軍も残忍で冷酷な「悪の軍団」にされてしまいました。

欧米の主流メディアは、ウクライナの民間人に犠牲が出ていることや、民間の住宅が破壊されている現実を詳しく報道し、泣きながら身を寄せ合う母子や、病院で息を引き取った子供などの悲惨な映像を連日流し続けています。そして、こうした悲劇の責任は全てプーチンとロシア軍にあると責め立て、あまりにも感情的で一方的なプロパガンダ報道を展開しています。

その一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領をまるで「英雄」であるかのように祭り上げ、悪名高い「アゾフ連隊(ネオナチの極右過激集団が構成)」を含むウクライナ軍の「善戦」ぶりをフェイクニュースまで交えて大絶賛しています。

フェイクニュースの例を紹介するなら、スネーク島のウクライナ守備隊がロシア軍に徹底抗戦して全員玉砕したというニュースが、ウクライナ軍の士気の高さを示す英雄的な「美談」として、世界中に配信されました。

しかしその後、実際には彼らは降伏して全員無事であり、武装解除の後、バスでウクライナ側に送還されたというニュースをロシア側が動画付きで報道したのです。もちろん、こうした映像やニュースは欧米や日本では一切報道されず、ネットからも削除されてしまいます。

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こうしたあまりにも一方的なプロパガンダへの反発は、ネット上では無視できない勢いで拡がりつつあり、主要メディアや政府にとっての脅威となりつつあります。

たとえば、「ロシア軍による容赦ない戦闘や破壊」と称される映像が、実は、過去の中東での戦闘の模様であったり、映画の戦闘シーンであったり、酷いものでは「テレビゲーム」からの借用であったり、というような、あまりにもおそまつなフェイクニュースがネットで暴露されています。プロパガンダを推し進める勢力は、最早、なりふり構わずで、コンテンツの質にこだわってはいられない状況なのかもしれません。

こんな具合ですから、何でもかんでも、悪いことは全てプーチン大統領のせいであり、彼さえいなければ、問題は「スッキリ解決」と言わんばかりに、「プーチン暗殺」を待望するような論調までもが、主流メディアでは、チラホラ散見されるようになりました。

そこまで酷くはなくとも、ロシアの「民衆(実際にはプーチンを支持している国民が圧倒的多数なのですが)」が立ち上がって、「反戦」の世論が盛り上がり、プーチン政権が瓦解するといった奇跡が明日にでも訪れるのではないかと思わせるような能天気な解説をする専門家やMCも現れる始末です。

さらに最近では、「平和」を求める諸国民の声をロシアに届けようとか、「反戦」の旗の下に世界中の国民や政府が一致団結しよう!とか、まるで怪し気な新興宗教のような独り善がりで自己陶酔的な呼び掛けをする「識者」までもが、地上波TVに登場するようになりました。

ここにいたっては、現代日本の報道もついに「大本営発表」の時代に逆戻りしたかのようです。当時の「鬼畜米英」が「鬼畜ロシア」「打倒!狂人プーチン」に替わったわけです。さて、こうした「戦時プロパガンダ」は何を目的に行われるのでしょう?

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image by: Shutterstock.com

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