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韓国新大統領が廃止を宣言、文在寅や玉ねぎ男が主席を務めた“組織”の名

5月10日、韓国の新大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏ですが、前政権との違いは明確なものとなるようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、尹氏が「民情首席室」の廃止を宣言したニュースを伝えるとともに、当組織が文在寅政権を始め、これまで時の政権に対してどのような役割を果たしてきたかを解説。さらにこの民情首席室廃止が実現すれば、尹氏が文在寅大統領と正反対の「言行一致の人間」として評価できるとの見立てを記しています。

尹錫悦、二大イベントをクリアできるか

尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領が14日、民情首席室の廃止を宣言した。民情首席室は日本で言えば内閣官房の中にある内閣情報調査室(内調)あたりに相当するものと考えてもらえばいいかもしれない。尹氏はこの日、安哲秀大統領職引継ぎ委員長らとともに行なったお茶会の場で「今後、大統領室の業務から情報調査機能を徹底的に排除し民情首席室を廃止する」と明らかにした。尹次期大統領は過去、青瓦台(チョンワデ、大統領府)の下命捜査を担当した「社稷洞(サジクドン)チーム=警察庁調査課のことで、FBIあるいはKGBのような情報機関」を代表として取り上げ、「過去、査定機関を掌握した民政首席室は合法を装って政敵や政治的反対勢力を押し潰そうとする場合が多々あった」とし「一般民衆の雰囲気を調査するなどと装って国民の身元調査や裏調査を繰り広げてきたがこうした残滓を清算する」と語った。

朴正熙(パク・チョンヒ)政権時の1968年に新設され、廃止と復活を繰り返してきた民情首席室の完全な清算を宣言したのだ。金恩慧(キム・ウンヘ)次期大統領報道官は「民政首席室廃止は引き継ぎ委の議論過程に最も力点を置く政治改革アジェンダになる」と述べた。

「民情」とは「民の心を察する」という意味で、国民に仕えるとの意であるがこの「情」の字は人間の情の意というよりは「情報」の「情」と捉えれたほうがむしろ正確かと思う。本来国民に仕えるとの意であるのだが、実際のところは民情首席室はそのように運営されてはこなかった。大韓民国の司正機関を総括し人事検証まで受け持ち「飛ぶ鳥も落とす」という汚名が付いて回ることになる。

民情首席室の権力は、歴代民情首席の顔ぶれを見ても容易に分かる。文在寅政府では曺国(チョ・グク)元法務部長官がそうだったし、朴槿恵政府では禹柄宇(ウ・ビョンウ)富川(ブチョン)地検長が、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府では現大統領の文在寅が民情首席を歴任していた。いずれも大統領の絶対的信任を受ける最側近人事だった。他の政権でも象徴性が少し少なかっただけで、「大統領の人」が民政首席を務めることには例外がなかった。そしてその過程で大統領の親戚・姻戚を管理して不正を検証する役割は自然に縮小していった。つまり大統領の不正を隠すために使われていったわけだ。

民情首席室は権力の中枢だった。民政首席室廃止を宣言した金大中政府は「高級服ロビー事件」など危機に直面するや、民政首席室を復活させたりもした。崩れた権力を立て直すのも民情首席室の役割だったのだ。文在寅政府最高検察庁検察改革委員を務めた金鍾民(キム・ジョンミン)弁護士は「民政首席は帝王的大統領を支える核心道具のような役割をしてきた」と言う。

そのため、歴代政府の不幸は大半が民情首席の没落とともに招来した。権力が集まる所には必ず腐敗が育まれた。民政首席をめぐって「毒を持った聖杯」という言葉も出始めた。金大中時代には申光玉(シン・グァンオク)前首席が、盧武鉉政府では朴正圭(パク・ジョンギュ)前首席が収賄容疑で拘束された。李明博政府は嫌疑なしだが、李鍾賛(イ・ジョンチャン)元首席秘書官が検察の捜査を受けた。特に、朴槿恵政府の禹柄宇(ウ・ビョンウ)前首席と文在寅政府の曺国(チョ・グク)前首席の場合、いずれも尹次期大統領が直接捜査を指揮して起訴した民情首席たちだ。

禹元主席は、国家情報院(国情院)を活用して不法査察(懲役1年)を行い、国政壟断(ろうだん)を幇助(これは無罪となった)したという容疑で裁判を受けた。曺国元首席は、親族のロビーを受けユ・ジェス元金融委員会局長の不正容疑に目をつぶった容疑で在宅起訴され裁判を受けている。

尹次期大統領が民情首席室の廃止を宣言したのは、検察在職時代、捜査を通じてこのような弊害を目の当たりにし、また直接経験したためかもしれない。こうした捜査を行ったいわゆる「尹錫悦ライン」の検事らを昇進させたり、左遷させたりしたのもまた民情首席室だった。曺国元首席捜査に関与した現職検事は「民政首席室は政治の検察捜査介入の源泉のような所」と述べた。

しかし、民情首席室の廃止は終わりではなく始まりという言葉が出ている。民情首席室を廃止するとしても、公職を監察し人事を検証する必要性は依然として存在するからだ。尹錫悦政府が危機に直面した時、名前だけ違うもう一つの民情首席室が登場し権力を振るう可能性も排除できない。早くから牽制する部署のない検察の誕生を懸念する声も出ている。

金大中政府初期に民政首席室から代わった初代法務秘書官を歴任した朴柱宣(パク・ジュソン)元議員は「当時、名前が変わっただけで、民政首席の役割と機能は事実通り維持されていた」と回顧した。パク・ウォンホ=ソウル大政治外交学科教授は「大統領の政策は毎回意図しない効果を生むもの」とし「民政首席室を廃止して生じた権力の空白をまた他の権力機関が代替しないか綿密に調べなければならない」と述べた。

尹錫悦が第一号の公約として掲げている「青瓦台には入らない」と、この民情首席室の廃止が本当に実現するかどうかが「尹錫悦はやっぱりちがう」と思わせる二大イベントだ。日本にいらっしゃる方々(韓国通)にも、是非ともこの点に注意を払ってとくと韓国の姿を観察していただきたい。この二大イベントが実現することになったときには、一旦、尹錫悦は「言ったこと」と「やること」が一致している人間と判断してもよいかと思う。文在寅の場合は、以前のメルマガにも書いたが、言ったこととやったことと、ほぼ100%不一致だったという結果が出ている。でもこれが普通の政治屋かと思う。2022年から2027年5月まで大統領を務めることになる尹錫悦。北の崩壊が(あるとすれば)2025年という予言があちこちから飛び交っている。北の事情もそうだし、現在のウクライナ事態を見ても、これから中国、台湾、その周辺国家の間で何が起こってもおかしくない時代にはいっている。世界ががらっと変化してしまいそうなこのときに韓国の大統領になった尹錫悦。肩の荷は重いが、やり遂げれば遣り甲斐もまた最大級のものとなろう。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年3月16日号)

image by: 国民の力 - Home | Facebook

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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