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すべてが子ども目線。今大注目の「絵本ホテル」成功を掴んだ驚きの戦略

小さな子供を持つ親からすると、宿泊するホテルが子供に優しいかどうかは重要ですよね。かといって、そこに特化してばかりいると、顧客ニーズを狭めることになり、経営的には厳しくなりそうです。しかし、それが大きな戦略になりえることを証明したホテルがあるといいます。そこで今回は、MBAホルダーで無料メルマガ『MBAが教える企業分析』の著者である青山烈士さんが注目のキッズフレンドリーなホテルを紹介しています。

いま注目、子ども目線の建築空間「絵本ホテル」を分析

今号は、注目のキッズフレンドリーなホテルを分析します。

● 泥谷産業株式会社、チェルビアット絵本店、ライフラインサービス株式会社が3社タッグで展開する子ども目線の建築空間「絵本ホテル

絵本に囲まれながら過ごしたい方をターゲットに「キッズフレンドリーな構想」に支えられた「珍しい絵本に出会える」「特別感が味わえる」等の強みで差別化しています。

既存のホテルでは味わえない特別感や秘密基地感などを味わえる、子ども目線のホテルとして注目を集めています。

分析のポイント

絵本ホテルは「子どもが主役のホテル」という売り文句ですが、子どもが主役と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが、子どもが仕事を体験できるキッザニアです。

子どもを連れて、何度かいったことがありますが、キッザニアは子どもが主役の空間です。すべてのものが、子ども目線で作られていると感じます。

同様に絵本ホテルも、子ども目線で作られているわけですが、子どもたちにとって、自分が主役と思える場というのは、特別なものなのでしょう。すぐに表情に現れますからね。

今回のポイントは、誰かにとって過ごしやすいということは、他の誰かにとっては、過ごしにくいということです。

絵本ホテルは、ドアノブの高さや洗面台の高さなどが、子どもの背の高さに合わせて設計されています。ということは、大人にとっては、少し不便を感じることになるでしょう。

大人は、この経験をとおして、子どもが普段、不便を感じているということに気づくのではないでしょうか。

いま思えば、近所の公園に水飲み場がありますが、子どもが幼児の時は、届かなかったです。子ども目線で考えると、とっても不便な世の中なのかもしれませんね。

そういった意味で、絵本ホテルは子どもが過ごしやすい環境づくりのヒントがたくさんあります。

落書きし放題の壁は、家の壁に落書きしたら怒られる子どもにとっては、最高の遊び場になるでしょう。

多くの家では壁に絵を書くことを禁止していると思いますし、他にも家のルールで、してはいけないことがたくさんあるでしょう。

実はそういったことが、子どもにとっては家を過ごしにくい環境にしているのかもしれませんね。

多くの親にとって、子どもがイキイキとしている姿を見ることが喜びにつながると思いますので、絵本ホテルでの我が子の姿を見て嬉しい気持ちになるはずです。

さらに、そういった姿を見て、子どもが過ごす家庭の環境作りにも思いをはせるきっかけになるような気もします。

少し脱線したような気もしますが、ビジネス的には、「誰を主役にするのか?」というは重要な問いだと思います。そのことが、誰にとって過ごしやすい環境を作るかに直結しますからね。

さらに言うなら、「自社のお客さまは、お客さま自身が主役な気分を味わえているか?」という問いも、自社に投げかけてほしいと思います。

「絵本ホテル」は、今後、全国展開も目指しているようですので、どのような存在になっていくのか注目していきます。

様々な業界で子どもが主役の○○が出てきたら面白いですね。

戦略分析

■戦場・競合

・戦場(顧客視点での自社の事業領域):キッズフレンドリーなホテル
・競合(お客様の選択肢):周辺のホテル など

■強み

1.珍しい絵本に出会える

・イタリアを中心に世界中から集められた美しい絵本(約200冊)が壁いっぱいに用意されている
・日本でほとんど紹介されてこなかった仕掛け絵本やお風呂で遊べる絵本などが用意されている

2.特別感が味わえる。子どもが喜ぶ仕掛け満載。

・1日1組の秘密基地のような特別なホテル
・一面落書きし放題の壁
・壁には大小のノゾキ穴
・木の温かさに触れられるプレイウォール

★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

・地元奈良にこだわって仕事をしている3社が、それぞれの専門性(設計、絵本、施工)を持ち寄って地元に恩返しをしよう、という想いから始動
・「1日中子どもがのびのびと過ごせる児童館のようなホテルはできないだろうか」とキッズフレンドリーなホテルを構想

上記のような、想いや構想が強みを支えています。

■顧客ターゲット

・絵本に囲まれながら過ごしたい方
・子どもがのびのびと過ごしやすいホテルに泊まりたい方
・絵本を通じて親子のコミュニケーションを取りたい方
・海外の文化に触れたい方
・子どもに世界の絵本に触れてもらいたいと思っている方

戦術分析

■売り物

「絵本ホテル」

絵本ホテルは、1985年築のマンション(旧公務員宿舎)の1室をリノベーションして作った民泊施設(ゲストハウス)。

・周辺は比較的静かな住宅地が広がり、裏山(赤膚山)には豊かな自然も残る
・室内には子どもが楽しめるしかけが盛りだくさん
・扉、洗面台、お手洗い等、子どもにとって使いやすい設計

■売り値

・デイユース:5,000円(税込)~
・宿泊:16,857円(税込)

※ 調査時の情報です。シーズン等によって変動します。

■売り方

・「子どもが主役のホテル」という売り文句
・テレビや新聞、雑誌など、多数のメディアに取り上げられている
・絵本作家をゲストに招いたイベント開催

■売り場

・奈良県奈良市赤膚町
・外部サイトにて予約可能

※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 青山烈士 【発行周期】 ほぼ 週刊

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