兵庫のローカル即席麺であるイトメンの「チャンポンめん」をご存知ですか?関西でも日常的に食べている人はあまり見かけないそうなのですが、実はローカルもののはずなのに、関西から離れたと“ある県”では家庭に常備されているほどに人気なのだそう。そこで今回は、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、自身のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の中で、その不思議について語っています。
兵庫のローカル即席麺が、石川で爆発的に売れている理由
イトメンの「チャンポンめん」をご存知でしょうか。
タンメンのような味わいで、海老と椎茸のダシが利いたインスタント塩味ラーメン。兵庫を中心とする関西圏では、そこそこ知られており、袋入りとカップ麺があります。
イトメンは、日本で2番目に袋入りインスタントラーメンを発売したメーカーなのですが、関西以外ではあまり見掛けません。ローカル即席麺と言っても良いでしょう。
しかも、知っている関西人の中でも、日常的に食べているのは、イトメンの本拠地「たつの市」周辺の人のみ。まさに、ご当地グルメなのです。
全国展開を望んでいないわけではありません。発売当初から、全国各地に営業マンを派遣し、売り込みを行いました。しかし、結果は……。
地方のメーカーだからなのか。味の問題なのか。営業マンの力不足なのか。
私もこのラーメンを知っていて、何度か食べましたが、常備することはなく、スーパーの棚から手に取ることもあまりありませんでした。
それは、見ために魅力を感じなかったからです。サッポロ一番やチキンラーメン、ワンタンメンと一緒に並んでいると、どうもチープに見えて、食べたいとも思いませんでした。
間違いなく美味しい、他のものより美味しいという認識があれば手に取るのですが、残念ながら、そこまでの魅力はありませんでした。
マズいわけではありません。素朴な味であっさりしていて、美味しいのです。ただ、他のメーカーよりは落ちてしまいます。
しかし、長年に渡って生き残っているのですから、商品力は高いと言えるのではないでしょうか。
最近であれば、昭和レトロがブームなので、興味を持つ人は多いかもしれません。チープさが、“可愛い”となるかも。
そんな少し残念なチャンポンめんですが、兵庫以外の地で、圧倒的な地位を築いています。
それは石川県。各家庭には必ずと言っても良いほど、常備されています。なぜ、石川なのでしょうか。
チャンポンめんは、昭和38年(1963年)に発売された、イトメンの看板商品です。五十数年前の発売当初から、石川の人には好評だったので、さらに営業に力を入れることで、定着させることができたようです。
特殊な営業方法を取り入れたわけでもなく、ただただ石川の人の口に合ったということです。「ダシの利いたあっさり味」がウケたのです。
そして、発売当初から食べていた子どもが大人になって、その子どもにも食べさせることで、五十数年人気を保つことができたのです。
「特に石川県で売れているのはなぜか?」という疑問に対し、特別面白い事情があったという答えを用意することはできませんでした。しかし、不思議なことではあります。
口に合うというだけなら、他の地域でも売れる可能性は高いのに、販売すらされていません。
考えられるのは、発売当初の営業マンが努力を怠ったのではないかということ。石川県を担当した営業マンだけが、成果を上げたのかもしれません。昔のことなので、同じ営業マンが他の地域もまわっていた可能性はありますが。
ならば、これから営業に力を入れれば良いのかというと、時代の違いが大きな壁になるかもしれません。メーカーも増え、商品も増え、競争の激しさが違います。素朴な味であるチャンポンめんが、受け入れられるのかどうか。
先に書いたように、「昭和レトロ」でアピールすれば、面白がる人は出てくるかもしれません。
イトメンとしては、全国展開を望んでいるのでしょうが、現状維持で、濃いファンを守っていく道もあるのではないでしょうか。
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