これまでも「マスメディアが創ったウクライナ侵攻の『物語』に乗せられる世界の人々」等の記事で、ウクライナ戦争について独自の視点からの意見を発信し続けてきた、メルマガ『富田隆のお気楽心理学』の著者で心理学者の富田隆さん。先日掲載の「一線を越えてしまった日本。露からの『ミサイル飛来』の覚悟が必要なワケ」では、いつロシアから攻撃されても不思議ではないとの見方を示していましたが、状況に変化が出てきたようです。今回富田さんは、「6~7割方、ウクライナの戦争も先が見えてきた」としてそう判断する理由を記すとともに、戦後に世界が見舞われる危機的状況と、それを乗り越えるために個人ができる取り組みについて解説しています。
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ダボス会議の投資家ソロス「一刻も早くプーチンを打ち負かすことだ」発言の真意
先日までスイスで開催されていた「ダボス会議(世界経済フォーラム2022年年次総会)」では、現在継続中のウクライナ戦争に関連して、様々な発言が飛び交いました。
あたかもディープステートの総会のようなダボス会議ですから、ウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアに最大限の制裁を!」と叫んだのは当然と言うか、折り込み済みでしたが、発言者によっては、意外なほど戦争への温度差が目立ちました。
99歳になる元米国国務長官のヘンリー・キッシンジャー博士はオンラインで出席し、「ロシアを打倒したり排斥したりすることを止めること」、そしてウクライナに対しては、「2014年の領土喪失を受け入れ、戦争を終結させること」を提案しました。そして、ダボス会議の長老キッシンジャー博士は「ウクライナは中立化して、ロシアと西欧の架け橋になるべきだ」と平和を求めるメッセージを発信したのです。
このキッシンジャー博士の和平案は、ディープステート「良識派」の見解をまとめたものと言っても良いでしょう。
先日、ローマ教皇フランシスコ猊下も、「ウクライナに武器援助することで平和は得られない」旨の幕引き声明(!?)を出していましたから、世界の「影の政府」を構成しているほとんどの権力者たちは、どうやら、これ以上の戦争の拡大は望んでおらず、とにかく第三次世界大戦を避けたいという考えに傾いているようです。
しかし、これで一挙に和平に向かうかというと、そう簡単ではないのかもしれません。キッシンジャー博士の「和平」演説の数時間後、彼同様、ダボス会議の有力メンバーである投資家のジョージ・ソロス氏が演説しました。
彼は、「人類文明を維持する最善で唯一の方法は、一刻も早くプーチンを打ち負かすことだ」と、キッシンジャー博士の和平路線とは真逆の戦争拡大論を唱えたのです。
彼がこれまで、ウクライナに莫大な投資を行い、2014年には親露派政権の転覆を後押しし、ウクライナ東部地区での8年間に渡る戦争(ネオナチを使ったロシア系住民への迫害と虐殺)を援助し、あらゆる手段を使って、ロシアのプーチン大統領抹殺を企んで来たことは、本人も認めるところですから、別段、この発言に驚く人はいないでしょう。
2015年2月に、ロシアとウクライナ、フランス、ドイツの首脳によって「ミンスク合意」(ウクライナ東部での停戦協定)が結ばれた時も、ジョージ・ソロス氏はこれに反対し、「自分たちの努力が無駄になった」と憤慨していました。彼のように、自分が戦争の経済的支援者であることを隠さない人も珍しいですね。
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ただ、ソロス氏には気の毒ですが、全般的な印象では、ディープステートの多数派は既に「和平」に傾いているようです。世界のほとんどの権力者たちは「全面核戦争」を望んではいないのです。ソロス氏の「主戦論」に同調したのは、ウクライナのゼレンスキー大統領と、英米の現役リーダーくらいのものです(ま、日本は「アメリカ」の言う通りですが…)。
しかも、その、英米の現役指導者たちも、足元が怪しくなっています。米国のバイデン大統領には、息子ハンター氏共々のウクライナ汚職疑惑が、以前から(彼がオバマ氏の副大統領だった頃から)まとわりついています。これに加え、米国の法廷では、2020年の大統領選挙での不正(もちろん、バイデン側の)をめぐる証拠が次々に開示されつつあり、このまま行くと、あの選挙で本当に勝ったのはトランプ氏だったということにもなりかねません。本人の認知症の進行も疑われ、いつ辞任声明が出されても不思議はないのです。
そして、英国のジョンソン首相にも、とんでもないスキャンダルが浮上しました。先日、英政府は英国謀略機関の偽情報作戦「ブラック・プロパガンダ」に関する機密を公開したのです。そして、ジョンソン首相は、なんとこうしたブラック・プロパガンダにより擁立されたということが明らかにされました。これは、コロナのロックダウン中に首相官邸で開かれていた「パーティー」のスキャンダルなどとは比べものにならないくらいの「ビッグ・スキャンダル」です。
こうした「暴露」の背景にはディープステート主流派の影がチラつきます。つまり、ジョーもボリスも、そろそろ「トカゲの尻尾」にされつつあるのかもしれません。
しかも、日本の「ゼレンスキーファン」の皆様には申し訳ないのですが、ドイツもフランスもイタリアも、本心ではロシアの勝利を認め、和平に移行することを望んでいます。しかし、彼らも一応、NATOの加盟国ですから、英米に対しては「面従腹背」を貫いています。ですから、彼らの「ウクライナ支持」はあくまでも表向きの話です。内心では、さっさと和平に持ち込んで欲しいのです。
フランスやスペインなどヨーロッパには勇敢なジャーナリストもいて、ウクライナ側の戦争犯罪や残虐行為を暴露している人たちもいるのです。彼らが証言しているネオナチや傭兵の残虐非道ぶりはロシア軍の比ではありません。ここで、文章にすることも憚られるくらいなのです。
こうした報道もあって、そろそろ、英米やウクライナのメディアが流す反ロシアキャンペーンの化けの皮も剥がれつつあります。もはや、彼の地の国民は、日本のように無邪気にテレビの言うことを信じてはいないのです。
彼らの正直な気持ちを代弁すれば、「ウクライナの腐敗した政権は疫病神だ」「さっさと縁を切りたい」といった感じでしょうか。その証拠に、日本などの報道では簡単にまとまるはずだった「ウクライナのEU加盟」も、宙ぶらりんのままです。ましてや、ゼレンスキーが言うような「NATOへの加盟」なんて、論外です。ただ、ウクライナを追われた難民たちは、優秀な労働力に成り得るので「ウエルカム」というわけです。
さらに、本音を言えば、冬が来て寒くなる前に、できるなら夏の内に、早く和平の目途がついて欲しいのです。逆に、このままずるずると戦争が続き、ロシアから天然ガスが来なくなり、暖房が止まり、さらには停電が追い討ちをかけるような状況になれば、ヨーロッパの冬の寒さは多くの人の命を奪うことになります。彼らは何とかして、この冬の悲劇を避けたいのです。
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従順なウクライナの国民は、この8年間、自国の腐敗した傀儡政権がロシア系の住民を殺すことに大した抗議もできない状態でした(ゼレンスキーたちは抗議を弾圧し野党関係者を逮捕しています)が、フランスやドイツの国民は違います。彼らは政府に対して従順ではありません。上記のような「寒い冬」になり、仲間が死に始めれば、すぐに牙をむき、暴動を起こし、政府を転覆するでしょう。そうした革命の歴史的伝統を彼らは背負っているからです。そして、ディープステートと呼ばれる影の支配層(の多く)もそれは望んでいないのです。
というようなわけですから、6~7割方、ウクライナの戦争も先が見えてきました。結果として、日本にICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が打ち込まれる可能性も低くなりました。
ただ、世界大戦の危機は遠退いても、経済的混乱とエネルギーや物資の不足状態は、しばらく酷くなる一方かもしれません。「食糧安全保障」や「エネルギー安全保障」を真面目に考えてこなかったことのツケが、こういう時に回って来るのです。いくらお金があっても、無い物を買うことはできません。
ロシアは、先日、食糧不足が心配されるアフリカ諸国に食糧援助を約束しました。もちろん、「ロシアの敵」になってしまった日本に売る穀物はありません。西欧諸国は、ポーランドを通してウクライナの小麦を買っていますが、日本に売る分が残っているかどうかは不透明です。もちろん、日本の主要輸入先であるアメリカやカナダも、今から「穀物不足だ」「食糧難だ」と大騒ぎしていますから、かなりの高値をふっかけてくるでしょう。中国は、既に準戦時体制を敷いて、ちゃっかり穀物の備蓄を済ませています。これもまた事態を悪化させる要因になっています。
今後、「食糧難とエネルギー不足」のディテールがどうなるかは予測できませんが、大雑把に考えて「インフレ」が酷くなるのは間違いないでしょう。一方で、アメリカでの株の暴落と金利の上昇を見れば、景気が悪くなることも避けられそうにありません。これが「スタグフレーション(不景気なのに物の値段が上がる状態)」です。不景気と物価高、この組み合わせは最悪ですね。
私たち庶民サイドでは、取り敢えず、食料品や生活必需品の「備蓄」をするしかありません。まずは、お米や缶詰などを少しずつ買い貯めることです。そして、必要なものは、早目に買っておく。時間が経つとものの値段が高くなるばかりか、商品が品薄になってしまいます。さらに、農地があれば安心ですが、小さな家庭菜園、あるいはベランダや部屋にプランターを置いて野菜などを育てることによっても、ある程度の栄養を補助することはできます。食べられる野草などの知識も役に立ちそうです。いろいろと智恵を出し合って、逞しく生き延びる工夫をしましょう。
ただ、こうした経済や物流の混乱というものも永遠に続くわけではありません。人類という集団には素晴らしい「復元力」があり、一見滅びたかに見えるものも、必ず「復活」するからです。
たとえば、日本における、第二次大戦後の「復興」には、世界の眼を見張らせるような勢いがありました。ソ連崩壊後のロシアも、ハイパーインフレ等の経済混乱から予想以上の速さで抜け出し、市場にはソ連時代以上の活気が返ってきました。
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また、キッシンジャー博士の「ダボス会議演説」を見ればわかるように、いわゆるディープステート、あるいは影の政府と呼ばれている権力者たちの全てが「非情」な「拝金主義者」ではありません。全ての権力者たちが、「陰謀」を張り巡らせることで世界を支配しようとしているわけでもないのです。
彼らの中にも、いわゆる「良識」を備えた人たちは決して少なくありません。むしろ「自分だけが良ければ良い」といった病的な利己主義者や、大衆を思いのままに操作し支配することに快感を覚える「権力亡者」の方が少数派なのかもしれません。ディープステートの全てが「敵」ではない、という単純な事実は希望につながります。
ですから、この数年続いた混乱も大局においては収拾に向かうと考えても良いはずです。ま、その前には、「もうひと荒れ」あるのを覚悟する必要はありますが…。盟友であるアメリカ合衆国もその底力を発揮して、社会の分断と混乱を何とか乗り越える方向に動き出すでしょう。
私をこのような楽観論に変えてくれたのは、皮肉なことに、「ダボス会議」の長老でありディープステートの指導者の一人ヘンリー・キッシンジャー博士でした。
私たちが生きる社会の構造は単純ではありません。重層的に入り組んでいて、利害も力関係も複雑に絡み合っています。若い頃には、そうした巨大な構造を直接動かすことを夢見たことも無かったわけではありません。若い人たちが簡単に革命を口にできるのは、複雑で巨大な構造物を単純化し矮小化して見ているからです。人は早い時期に(できれば学生の内に)、こうした愚かな世界観から自分を解放するべきでしょう。歳を重ねた今になってみれば、複雑で巨大な構造物の変遷と動向を眺めつつも、自分に与えられた仕事や生活の場で、いかに最善を尽くすか、いかに気持ち良く楽しく生きるかを考えるようになりました。
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image by: Gevorg Ghazaryan / Shutterstock.com