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プーチン政権は終焉。ロシアの要人会議で上がる次期指導者の名前

6月12日の「ロシアの日」に行われた式典で、国民の結束の重要性を説くとともに、ウクライナ侵攻の正当性を改めて主張したプーチン大統領。両軍、そしてウクライナ市民に多数の犠牲者を出しながらも未だ出口の見えないこの紛争は、この先どのような展開を辿るのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、今後の戦況の推移を予測。さらにプーチン大統領の早期退任を証拠付ける2つの出来事を紹介しています。

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プーチン戦争の目的は

ウクライナ東部での戦争は、ロシア軍の全勢力をセベロドネツクに投入して、把握を目指すが、ウ軍もここでの決戦が勝敗を左右するとして、撤退と見せかけて、ロ軍を誘い込み、叩く手法で互角に戦っている。

ドネツ川北側の高台のリシチャンスクからの砲撃も効果的であるが、M777榴弾砲も多数破壊されている。ロシア軍の203m自走榴弾砲の威力もすごく、その数が多いので、火力の面で負けている。

しかし、ウ軍撤退となり、ロ軍戦車部隊20BTG(大隊戦術群)はリマンなどに転戦して行き、その後、ウ軍は戻り市街戦に持ち込み、この戦いには砲撃ができないので、近接戦にウ軍はロ軍を誘い込み叩く戦術に転換している。これがある程度の効果を発揮している。だが、まだ激戦であり、勝敗の行方を見通せない状態である。

どちらにしても、ロ軍は、持てる力のすべてをつぎ込んでセベロドネツクと周辺を攻撃しているので、ルハンスク州を完全に取れないと、ロ軍は攻撃する体力がなくなる。相当な消耗になっているはずで、20BTGも実質は10BTG程度になっている。ウ軍も大きな犠牲を出しているようだ。

ロ軍は、とうとう戦車が不足して、T-64戦車主体のBTGをもセベロドネツク周辺に投入したようであり、T-72戦車もなくなってきたようだ。

反対に、ウ軍もTB2ドローンが撃墜されて、数が少なくなっているようであり、ロ軍203m自走榴弾砲の攻撃に使われていない。203m自走榴弾砲は、M777榴弾砲の射程外にあり、叩けないので、ドローンでの攻撃しかできない。ということで、スイッチブレードが使われているようだ。これらの操作のために外人部隊が投入されている。

そして、ウ軍の司令官は、砲門の不足が「悲惨なまでの状態にある」と訴えたが、火力という面では圧倒的な差がある。ウ軍1門に対してロ軍10門の比率だそうだ。

相当な榴弾砲の供与が必要であり、欧米各国は、旧式で廃棄予定の自走榴弾砲を大量にウクライナに供与するようであり、どんどん増強されるが、時間が問題になってきた。

ということで、ウクライナは、欧米諸国の兵器のゴミ捨て場であるが、ロ軍の兵器も同時代の古い兵器であり、十分対応できる。ということは、退役間近の米A-10攻撃機の供与もあるかもしれない。ドンドン、古い兵器でウ軍は増強されることになる。

ロ軍はセベロドネツクの住宅街を制圧したというが、TOS-1を住宅地に入れ、サーモバリック弾や焼夷弾で住宅地を完全破壊している。精密誘導ができないために、焦土作戦でしか市街地を制圧できないことによる。このため、ここでは近接戦ができないので、ウ軍は撤退して、市街地と工場地帯で戦っているようだ。

どちらにしてもロ軍のTOS-1や203m自走榴弾砲の無力化が急がれる状況であり、逆にロ軍はM777榴弾砲の破壊を急いでいる。この戦況で、ウ軍は、M142高機動ロケット砲(HIMARS)」が必要であり、ロ軍の203m自走榴弾砲を叩くためにリシチャンスクに置くことで、戦況は大きく劣勢なウ軍に傾くことになる。ウ軍は提供の早いHIMARSの到着を待って、総攻撃に出るようである。

それまでは、両軍ともに、持てる力をセベロドネツクに持っていくので、他地域の進展は進んでいないようだ。

ただ、ロ軍は、防空兵器もセベロドネツクに集めたことで、TB2ドローンは、ドネツ川湿地帯での戦闘では、有効に機能しているようであり、ドネツ川を挟んだ地域での戦闘に使用しているようだ。

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南部での戦いは、ウ軍が大きく前進している。しかし、ウ軍も主戦力をここからポパスナ地域のロ軍への対応のために転戦しているので大きくは動けない状態のようである。

一方、ロ軍は、要衝のイジュームや交通の要所クビャンスクで要塞を建設して、攻撃から防御に転換している。この方面では徐々に南下していたロ軍は、要塞まで撤退を開始することになる。

プーチンは、6月12日の「ロシアの日」に勝利宣言する予定であり、10日までにセベロドネツクの完全な制圧をロ軍に命令したが、現状ではできていない。しかし、ルハンスク州の98%を支配下にしたので、勝利宣言をする可能性もある。しかし、再度、6月22日までにセベロドネスク制圧の命令が出たという。

しかし、ロシア国内では、ウ軍発表の3万1,000名のロシア軍戦死者より多い戦場行方不明者数が4万1,000名にも達しているようであり、家族からの問合せがロ軍やプーチン政権にあり、その対応を間違えると、国内の反戦につながるので、そろそろ停戦が必要になっている。

もし、これが本当なら、負傷者数は約3倍であるから、16万人が戦闘不能になっている。開戦当初の侵攻兵力15万人より多いことになる。これは、ロシア軍崩壊の手前であろう。

このため、国家親衛隊の犠牲者には500万ルーブルの慰問金が出るようであり、戦場には送らないとした徴集兵を戦場へ送ったことで、複数の将軍が取り調べを受け解任されているなど徐々に問題化してきている。

ということで、ラブロフ外相は、停戦開始を求めて、トルコに行き、エルドアン大統領に仲介を要請している。この見返りとして、ウクライナの港湾封鎖を解除して、穀物輸出ができるようにするというが、ゼレンスキー大統領は、戦争継続の方向である。2月24日の線まで押し戻すという。また、ロシア海軍の攻撃を防いでいる機雷除去もしないという。

その代わり、ウクライナの穀物は、ルーマニアまで鉄道輸送し、ルーマニアの港から輸出する方向で、検討されているようだ。

どうも、プーチン政権末期となり、ロシア国内では、ポスト・プーチンを誰にするのかの会議が開かれて、キリエンコ氏、メドベージェフ氏、ソビャニン氏とパトルシェフ氏などの名前が出ているようであるが、コバリョフ氏の名前はないようで、プーチンの思い通りにはならないようである。

そして、事実がプーチン退任の方向を示している。例年6月に行われる国民対話もなく、4月に出される年次教書も議会に発表していない。プーチンの病気か軍とFSBの不満からか、先は長くないようだ。

一方、ロシアは、戦争ではないので、国民皆兵の徴集はできないで、兵員不足が深刻で、これ以上の攻撃ができない。装甲車も不足して、倉庫から古い兵器を出してきている。全体的には、攻撃から防御に転換するしかない状態である。

そして、プーチンは、この特別軍事作戦は、ピュートル大帝の偉業と同じことであると本音を明らかにした。どうも、ウクライナは自国の領土であり、そこの政府は主権がない存在であり、ロシアの自由にできるということのようだ。国と認めていないので、戦争ではないということだ。

このように、専制国の指導者は、取巻きの汚職などで国内経済活性化ができないので、領土拡大しか希望がないことで、どうしてもこうなるのである。これはロシアだけではなく、中国も同様である。

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今後、ウ軍の装備は、レオパルト2A4などの戦車、各国からの155m自走砲、MQ-7の攻撃ドローン、F-16Vの戦闘機などNATO仕様の兵器が欧米から供与されて、徐々にロシア軍の装備を仰臥することになる。攻守の逆転が起きる。

ウ軍がロ軍陣地を攻めることになる。しかし、敵の陣地に攻撃する場合は、戦死者数が大幅に増加してくることが想像できる。

このため、戦死者を少なくする兵器の供与を米国に依頼するし、米軍は研究開発中の最新AI兵器を戦場での実験という位置づけで、供与することになる。ウクライナが、米AI兵器実験場になる。犠牲者はロ軍の兵士で、ロシアは完全に負ける。AI兵器が今後の戦場での主役になる。

しかし、ウ軍としても、短期決戦が必要になる。その後、停戦しないと、資金の枯渇と、民間人と軍人の死亡者数が大きくなるからだ。

もう1つ、心配なのが、米国民主党内中道派と左派でウ軍援助に対して論争が起き、否定的な意見が出てきたことである。このため、ウクライナ担当のヌーランド国務次官が長期に休職していると言う。

このため、米国も早期に停戦が必要という考え方になる可能性がある。左派は、ウクライナ支援のお金を貧困対策に使うべきだということのようである。もう1つに、米国の本当の敵は中国であり、ウクライナへの関与で、中国への経済的な制裁や軍備を弱める動きに反対する人もいることである。

共和党のトランプ派とペンス氏の主流派と同じような議論が民主党内でも起きてきている。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年6月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Free Wind 2014 / Shutterstock.com

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