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Growth of food sales or growth of market basket or consumer price index concept. Shopping basket with foods with coin stacks on yellow background. 3d illustration

なぜ、月1万円で暮らすバリ島の人たちは「幸せ」でいられるのか?

日本でも物価が上昇し、私達の生活にも打撃を与えています。特にガソリンの値上がりは相当なダメージを負う方も多いのではないでしょうか。今回のメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』では、Google、マッキンゼー、リクルート、楽天の執行役員などを経て、現在はIT批評家として活躍されている尾原和啓さんが、 値上げインフレ時代における、自分の価値の考え方について紹介しています。

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物価上昇インフレ時代に振り回されないための「自分の価値」の思考法

今、石油の値段がガンガンに上がっていたり企業の物価指数が9パーセント上昇したり、コンビニさんとかいろいろなところが値上げを始めています。今日は、この値上げインフレ時代の「自分の価値の考え方とチェック方法」という話をしたいと思います。

月1万円で暮らすバリ島の人たちはなぜハッピーなのか? 

石油とかお菓子とかミルクとか、いろいろなモノが値上がりすると、「自分の生活が苦しくなってしまうのではないか」と不安にとらわれることが多いと思います。そうなった時に、“価値の原則”がわかっていれば、自分がインフレに振り回されてしまうのか、そうじゃないのかがわかる話なので、その因数分解をしていきたいのですよね。

例えば冬だと、特に北国に住んでいる方々にとって、石油の値段が上がるのは死活問題です。部屋を暖めるためにはどうしても石油を使うので、石油の値段が上がれば生活は苦しくなります。

一方で、逆もあるわけですよね。例えば僕が生活のベースにしていたバリ島って、現地の方の1人当たりの給料は1万円です。でもバリの方々って、みんなハッピーなのですよ。それはなぜかと言うと、バリの方々には地元に住む家がありますし、常夏の国だから暖房や冷房はいりません。水と自然に恵まれている国なので、近くの水田に稲を植えれば1年間に3回収穫できます。虫を取ってくれるアヒルなどがそこで育つので、アヒルや豚を食べていれば生きていけるからです。

つまり、外の価値に依存しなくても生きていける比率がどれだけあるかによって、外の価値の上下に振り回されなくてよくなるわけですね。

この究極が、バリ島の農家の方々や酪農の方々です。物々交換や自分が手の届く範囲の中で価値をいただいているから、世の中がいくらインフレになろうが関係ありません。

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だけど、日本という国に住んでいると、例えば電気は7割以上が化石燃料系に頼っています。化石燃料系は内部でほとんど採れないので、外部に依存する。そうすると、値段が上がれば僕たちのコストが跳ね上がってしまうので、そのぶん生活が苦しくなってしまうわけです。

「価値」の考え方とチェック法

一方で考えなきゃいけない話があります。日本って、水をめちゃくちゃ輸入している国だって知っています?

日本はいろいろな資源を外に頼っているけど、水だけは内側で回っているから、「日本は水と安全は蛇口をひねれば出るものだと思っている」と言われるくらいです。それに比べて海外は、人口がどんどん増えていっているので、「石油以上に水のほうが資源として貴重になってくるのではないか、枯渇するのではないか」と言われています。

では、なぜ日本が水の輸入大国かと言うと、「バーチャルウォーター問題」というのがあるのですね。日本は、水そのものを輸入していません。ですが国産牛を育てる時に、牛たちが食べている飼料(エサ)はトウモロコシだったりするので、オーストラリアやアメリカから輸入しているのですよ。トウモロコシを育てるためには、当然大量の水を使います。なので、「バーチャルウォーター(仮想水)」というのですが、日本は間接的に海外の水を大量に使っているわけです。

トウモロコシや大豆、小麦もそうですし、そもそも牛肉とか豚肉を輸入しているということは、牛や豚も海外で同じように水を飲むし、その水で育てる飼料を食べているので間接的に消費しています。日本は年間で約600億m3の水を使っていますが、それとだいたい同量の640億m3の水を輸入していることになるのですよ。

今、僕たちは水の値段が上がっていくことに鈍感です。だけど石油の問題と同じで、水が枯渇してくると、間接的なバーチャルウォーターの値段も上がっていきます。すると結果的にトウモロコシの値段が上がって、飼料の値段も上がるから、国産牛の値段も上がらざるを得ないのです。

こういうふうに、僕たちは間接的にいろいろなモノの価値の上昇に引きずられて、価値が構成されています。ですので、「石油のように直接的にコストが上がってしまった時に、自分たちが勤めている会社や営んでいる仕事がどれくらい影響を与えるのか?」「バーチャルウォーターのように間接的に使われている資源の値段が上がった時に、僕たちの価値がどれくらい振り回されるのか?」。そこを一度見ておいたほうがよいのですね。

逆に言えば、バリ型の農業や牧畜をしている人は、自分たちの環境の中の水と飼料を使って育んでいるので、周りの価値に振り回されなくてよいわけです。こういう、直接的な物々交換の中で生まれてくる価値の比率が高ければ高いほど、外がインフレになろうが物価が上がろうが、関係ありません。

現状の日本のビジネスが、そういったものに依存しているとすると、ここ1-2年はかなりいろいろなかたちで振り回されるようになります。ですが、“自分の価値の源泉”がどこからきているのかを一度認識しておくことで、自分のビジネスの価値の減少が強制的に起こってしまうのかどうかがわかるというお話でした。

というわけで

今は学校の授業で、「SDGsとESGについて、必ず教えてください」みたいな話があります。実は初等教育のほうが、今の時代に合った価値の考え方を教えているのですよね。お子さまがいらっしゃる方とかは、これを機会に“自分の価値の源泉”について、つながりの中で生まれる価値が、どの段階で外の価値の上昇に巻き込まれてしまうのかを考えていただければと思います。

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ということで、つながる時代の未来を楽しみましょう。いろいろな歪みがガーっと出てくる1年なので、先回り、先回りが大事です。じゃあね!

image by: Shutterstock.com

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IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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