大阪のとある界隈で昼休みになると聞こえてくる「ダブダブ」。この謎の言葉の意味を繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが紹介。自身のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の中で、なぜ「ダブダブ」が人を引き寄せるか、その秘密について語っています。
ジャンキー肉で人を惹きつける、オフィス街の荒技食堂
「ダブダブ、行こか!」。
大阪市瓦町界隈では、昼休みになると、この言葉が聞こえてきます。ある料理のことを指し、それを食べに行こうという意味です。
レストラン「ニューハマヤ」。ご飯がすすむ焼肉定食で有名なお店です。その定食を目当てに、毎日行列ができています。
お客さまの注文の7割が、この「ダブダブ」です。豚の焼肉定食で、肉が2盛りと玉子(スクランブルエッグ)が2枚のっています。肉がダブルで、玉子がダブルなので、「ダブダブ」となっています。
他に、肉が3盛りと玉子1枚の「トリプル」、肉が3盛りと玉子2枚の「トリダブ」、玉子にイカが入った「ミックス」、「日替り定食」などがあります。
焼肉はにんにく醤油味で濃いめ。スクランブルエッグには塩が入ってややしょっぱめになっています。この濃い味が食欲をそそり、ご飯がすすむのです。
かなりのガッツリ系。なので、ご飯はグループでもひとりでも、おひつに入ったものが運ばれてきます。お茶碗に普通に盛って3杯分あり、無くなれば、さらにお代わりもできます。
テーブルには福神漬けが置かれ、食べ放題。赤と緑のタバスコとウスターソースも置かれ、味変が楽しめます。そして、赤だしの味噌汁も。
オフィス街の食堂にしては、味もボリュームもガテン系寄り。なのに、ホワイトカラーの行列ができるのは、不思議です。それほど美味しいということでしょうか。
そこには、ご飯をガツガツ食べたくなる、味の秘密があるのです。正直に書くと、味の評価は賛否あり。絶賛する人が多いものの、「濃過ぎる」「脂っぽい」「しょっぱい」という人もちらほら。強烈な味であることは間違いありません。
強い味は、人を惹きつけます。濃いものは、ご飯がすすみます。たくさん食べると、満足感があります。これが、このお店の評価に繋がっているのです。
では、人を魅了する味の秘密はどこにあるのでしょうか。それは、ほとんどの人が見ていないであろう、焼肉の下準備にあります。
注文が入ると、あらかじめ焼いておいた肉を温め、皿に盛るので、下準備を見ることはありません。この下準備の光景を見ると、食べることを躊躇する人がいるかもしれません。
大きな鉄板に最初にのせられるのは、角切りにされた、大量の白い物体。豚の脂のみを角切りにして、鉄板に敷き詰めるのです。その上に、これまた大量の豚肉をのせていきます。どうやって混ぜるのかというほどの量です。
平らな鉄板が山盛りになり、まるでエアーズロック状態。これを下から上へ、ゆっくりと混ぜていきます。ある程度火が通ったら、大量のおろしにんにくと醤油で味つけします。
大きな特徴は、やはり脂の角切りでしょうか。豚の脂は甘く、肉をしっとりさせ、旨味にもなります。この脂が人びとを惹きつけているのです。
ご主人曰く、「ジャンキー肉」。確かにそうなのですが、かなり魅力的なジャンキーだと言えます。
荒っぽい料理かもしれません。上品とも言えません。しかし、人びとは虜になり、「ダブダブ、行こか!」という食文化を生み出したのです。
料理にはさまざまなジャンルがあり、それを好む人もさまざま。なので、優等生になることなく、極端で弾けた味を作り出せば、大人気店となることができるのです。
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