MAG2 NEWS MENU

“キワモノ”れいわを応援。元朝日新聞エリート記者の人となり

政界の常識を次々と打ち破り続け、今や衆参合わせて5名の議員を擁するれいわ新選組。代表を務める山本太郎氏のエキセントリックともいうべき言動から、ときにキワモノ扱いもされるれいわですが、同党に大きな期待を寄せる朝日新聞政治部出身のジャーナリストの鮫島浩氏が、参院選挙戦でも彼らを強力にサポートしています。れいわの何が元エリート記者を引き付けているのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、鮫島氏の人となりと、れいわを支持するに至るまでの経緯を紹介。さらに同氏が自身のウェブメディアで語った「参院選後の政界予想」を取り上げ、賛意を示しています。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

朝日新聞政治部の元エリート記者はなぜれいわ新選組を応援するのか

ウクライナ、エネルギー危機、物価高…いくつも政治課題を抱えながら、与野党激突といえるほどの争点を有権者に提示できていない今回の参院選。

その原因は、つまるところ野党第一党である立憲民主党に帰するのではないか。たとえば、庶民を悩ませる物価高への対策として即効性の高い消費税減税。立憲は時限的に5%へ減税としているが、その主張にはいまひとつ迫力がない。

それもそのはず。2012年6月、「社会保障と税の一体改革」の名のもとに、消費税率を引き上げる法案を提出し可決成立させたのは民主党の野田政権だった。消費増税を主導した菅直人元首相、野田佳彦元首相は、いずれも今の立憲の最高顧問なのだ。だから一時的な減税を唱えても、「消費税は必要」という旗までは降ろせない。

消費税を「廃止」するのだと、最も明確な姿勢を示しているのが、れいわ新選組の山本太郎代表だ。

「直間比率の是正」、すなわち、税における直接税(所得税、法人税)の割合を減らし、間接税を増やしてほしいという財界の求めに応じて1989年に導入された消費税が、この30年の景気低迷を招いた。「消費税は社会保障の財源」という政府の説明にはウソがあり、法人税が減税された分の穴埋めを消費税が担ってきたに過ぎない。そのような主張だ。

野党が「消費税廃止」を旗印に、ひとかたまりになって戦うことができれば、岸田政権に対する強烈な対抗軸を有権者に示すことができただろう。

今回の参院選では、野党陣営をまとめ上げる力の不在をつくづく感じる。立憲には、党内にいる適材、たとえば小沢一郎氏を活用しようとする意思さえ感じられなかった。

強い野党勢力があればこそ、政権を監視する機能が働く。与野党間の緊張が保たれ、政治的堕落を防ぐことができる。その意味で、野党共闘がうまくいかない現状は深刻だ。

衆院議員を辞職して激戦の参院東京選挙区に出馬したれいわの山本代表が、立憲との対決姿勢を強めるのも、政権奪取のリーダーシップをとれない立憲への苛立ちがあるからだろう。東京の立憲候補は、消費増税派の野田元首相に近い蓮舫氏だ。相手にとって不足はない。

ここで、れいわ新選組を応援する1人のジャーナリストの話をしておこう。

元朝日新聞政治部、鮫島浩氏だ。政治部のデスクまでつとめ、新聞協会賞を受賞したこともあるエリート記者が、とかく、キワモノ扱いされがちのれいわ新選組をなぜ支持するのか。そこに筆者は興味を持った。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

鮫島氏は2021年5月、希望退職募集に応じ、朝日新聞を退職した。そして、今年6月、新著「朝日新聞政治部」を出版したばかりだ。

朝日新聞といえば、かつて“小沢一郎政権”の誕生を阻止すべく不正献金事件をでっち上げた検察の片棒を担ぎ、小沢バッシングの急先鋒となっていたことを思い出す。

小沢氏は国民への公約を破って消費増税に踏み切った民主党の菅、野田政権に反旗を翻して離党した。もし、検察の恣意的な捜査がなかったら、小沢首相が誕生し、財務省の言いなりになって消費増税に走るようなことはなかっただろう

それに関し、鮫島氏は本のなかで、以下のような事実を明かしている。

検察権力が自民党政権の意向を忖度し、あるいは政官業癒着の打破を掲げる民主党政権の誕生を阻止するため、強制捜査に踏み切ったという疑念が浮かぶのは当然だった。私も民主主義の危機だと思った。検察権力が総選挙目前に次期総理が有力視される野党党首を狙い撃ちしてよいのか。検察を担当する社会部司法クラブは検察と一体化し、捜査ストーリーを垂れ流す報道を続けている。彼らに任してはおけない。私は朝日新聞がこの捜査に警鐘を鳴らす論文を1面に掲げるべきだと強く思った。

鮫島氏は編集局長室に乗り込み、局長補佐に「今日は編集局長が1面に論文を書く日です」と迫ったが、その思いはかなわなかった。

あの当時の朝日新聞社内で、記者のこんな動きがあったのだ。筆者は大メディアの報道姿勢に対し、ブログ、メルマガなどで強く批判を続け、『小沢一郎の死闘1500日』というKindle本を出したが、あの執拗な小沢バッシングの裏で、朝日の内部から批判の声が上がっていたとは、想像もつかなかった。

社の方針や編集の都合によって筆を曲げがちな記者の中にあって、鮫島氏が自らの正義感を貫こうとした稀有な存在だったことが、わかっていただけると思う。

特別報道部のデスクだった2014年、鮫島氏は「吉田調書」の報道でバッシングを浴び、デスクを解任された。

「吉田調書」は福島第一原発事故について政府事故調が同原発の吉田昌郎所長にヒアリングした内容を記録したものだ。それを記者が入手し、鮫島氏が担当デスクとして記事を出稿した。当時の木村伊量社長は「社長賞だ、新聞協会賞だ」と激賞していた。

ところが、この記事や同社の「慰安婦」報道に対し、当時の安倍首相は「誤報だ」と言い募って他メディアの執拗な批判報道を扇動し、自らの支持層を固めていった。

その圧力に屈した木村社長は「吉田調書」報道を取り消し、鮫島氏を停職処分にしたうえ、記者職を解いた。

鮫島氏はこの本のなかで、次のようにその影響を綴っている。

「吉田調書報道の取り消し後、朝日新聞社内には一転して、安倍政権の追及に萎縮する空気が充満する。他のメディアにも飛び火し、報道界全体が国家権力からの反撃に怯え、権力批判を手控える風潮がはびこった」

失意のなかから鮫島氏は立ち上がり、ウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊、YouTubeにも動画番組を設けて、言論活動をはじめた。

創刊の動機となったのは、自身も含めた朝日新聞の「傲慢罪」に対する反省と、「誰もが自由に発信できるデジタル時代が到来して情報発信を独占するマスコミの優位が崩れた」という認識だ。

デジタル化で人々の価値観が多様化しているのに、政治家や官僚はもとより、経済界、マスコミも、それに対応できていない。

もはや、AかBかと上から考えを押しつける二大政党制の時代ではない。立憲民主党はきれいごとを言いながら、永田町や組織の論理に縛られ、結局は、自民党の政策とさして変わらない。多様な意見を吸い上げ政治に反映させるには多党制のほうがふさわしいのではないか。

そう考えていた鮫島氏にとって、2019年の参院選でれいわ旋風を巻き起こした山本太郎氏の登場は、衝撃的だった。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

「自民党には任せられない。でも、野党の経済政策も間違ってる。この国のオーナーはあなたです」(今回参院選の演説より)

予定調和がまかり通るこの社会で、あえて「空気を読まない」と公言する強靭な姿勢。比例区の「特定枠」に難病ALS患者、舩後靖彦氏と重度障害者、木村英子氏をあてて2人とも当選させる大胆な発想と実行力。そして、独特のテンポで繰り出されるよどみのない演説。鮫島氏は強いカリスマ性を山本氏に感じたようだ。

鮫島氏は、早くも参院選後の野党再編に思いを馳せる。YouTube動画での発言に耳を傾けてみよう。

「参院選の後、立憲民主党の中は政局になると言われている。泉代表は引きずり降ろされるんじゃないかと。野党全体が揺れ動き、野党再編になったとき、小沢氏らとの連携があると私は見ている。消費税廃止を軸にした野党再編が実現する可能性が非常に高い」

鮫島氏の願望に過ぎないと斬って捨てるのもいいだろう。しかし、国民民主党が与党化し、日本維新の会も野党分断の駒のごとく動いている以上、強い野党勢力をつくるために、残された道はそれしかない、とも思う。

3日後には投開票がある。大方の予想通り与党が圧勝し、アベノミクスの呪縛を解くすべもわからぬ政権がさらに3年も続くことになるのだろうか。立憲がしっかりしておれば…と、つい愚痴が出る。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

image by: れいわ新選組 - Home | Facebook

新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国家権力&メディア一刀両断 』

【著者】 新恭(あらたきょう) 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け