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「日本人は無宗教」というウソ。何が統一教会をのさばらせたのか?

日本国内のみならず、海外の旧統一教会系イベントに所属議員が参加していた疑惑が報じられるなど、もはや「言い訳」が効かないレベルにまで達している自民党とカルト教団との関係。何がこのような事態を招き、そして旧統一協会をここまで蔓延らせてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、日本における「政治と宗教」について各種報道や資料を駆使して解説。その上で、「政教分離の原則」が厳格に適用されてこなかったという我が国の大きな問題点を明らかにしています。

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安倍元首相の死から1カ月 「政治」と「宗教」 政治とは何か 宗教とは何か 問われる憲法解釈

安倍元首相の銃撃殺害事件から、1カ月が経過した。その後、メディアは自民党と旧統一教会との関係について騒ぎ立てた。事実、その関係はまさに“底なし沼”の状態だ。

今月改造されたばかりの内閣では、8人が旧統一教会との接点が発覚。副大臣・政務官でも20人が、そしてすべての国会議員では、実に106人に接点があった。

第二次岸田改造内閣では、加藤勝信厚労大臣、高市早苗経済安保担当大臣、寺田稔総務相、西村明宏環境相、岡田直樹地方創生相、留任した林芳正外相、山際大志郎経済再生担当相、そして、すでに関係を報告していた磯崎仁彦官房副長官を含め閣内の8人が旧統一教会との関係が発覚。

13日には、副大臣と政務官も20人が、旧統一教会側とパーティー券の購入や会合への出席などで接点があったことがわかる。

さらに14日には、共同通信がすべての国会議員を対象としたアンケートの結果、なんらかの接点があった議員が106人にのぼった(*1)。そのうち自民党議員が82人と8割を占め、まさに“ズブズブ”といってよい状態だ。

なぜ、このような事態に陥ってしまったのか。そもそもの本質は、私たち日本人が、“公の場で”政治と宗教の話題を極端にタブーとしてきたからである。

目次

政治とは何か 私たちはみな、政治の世界に生きている

政治とは何か。わかりやすくいうなら、集団のメンバーが安心して暮らしていくには、どうすればよいかを考え、それを実際に実行することである(*2)。

この世界には、個人の力だけではどうにもならないことがたくさんある。それらの問題も現実にひとつひとつ解決するために、政治があるのだ。そのため、「政治に関係ない」市民など、この世に存在しない。

実際に選挙に行こうがいくまいが、その行為が政治であるし、納税の行為でさえ、政治の一端だ。

たとえば、

などの要望があったとしよう。これらの要望に対し、現実に解決策を実行するために、政治がある。

なぜ日本では、政治の話はタブーなのか。

「日本では、意見の違いが明白になることを恐れ、政治的な会話を避けている面があるのだろう。」(山根久美子、高橋大作、波多野大介、(*3)2019年7月19日

と横山智哉・立教大助教(社会心理学)と話す。

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宗教とは何か 「日本人は無宗教」というウソ

「日本人は無宗教」というある種の特権意識が、旧統一教会という無茶苦茶なカルト集団を蔓延らせた側面も否定できない。

アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターが2012年に発表した統計によると、日本人の約6割が「無宗教」と答えるという。

しかし、実際には、神道や仏教には明確な入会儀式が存在せず、その基準もあいまいなため、現状には即してはいない。そこで、「現実に信仰している宗教は?」と聞かれると、「仏教」あるいは「神道」と答える日本人がほとんど。

2014年の文化庁の宗教人口によると、神道49%、仏教46%となっており、ほとんどの人が神道や仏教を信仰しているのは、まぎれもない事実。

歴史的にみても、日本人が信仰してきた神道は、山や海、川や植物など、あらゆるものに“神”が宿ると考えてきた。また、キリスト教やイスラム教と異なり、神道には「経典」というものが存在しない。

宗教を英語でいうと「Religion」。これはラテン語のreligioの「ふたたび」という意味の接頭辞reと「結びつける」という意味のligareの組み合わせであり、「再び結びつける」という意味。

そこから、「宗教」とは、神と人を再び結びつけることと理解されている。

そういう意味で、「初詣」も「クリスマス」も「七五三」も立派な宗教的行為だ。

政治と宗教 問われる憲法解釈

日本において、「政治」と「宗教」との関係は非常にセンシティブなものだ。

当たり前だが、日本国憲法は、「信教の自由」を保障。であるからこそ、宗教法人は自由に宗教活動ができる。

 一方で、憲法第20条で、

いかなる宗教団体も(中略)、政治上の権力を行使してはならない。

と明記。しかしながら、日本では宗教団体の政治活動を禁止していると読めるこの条文が、歴代の内閣により極端に狭く解釈されてきた(*4)。

すなわち、ここでいう「政治上の権力」とは、立法権、裁判権、課税権などを行使する行為であると定義。

そのため、選挙の支援や政治献金などの我々が普通に思う政治活動はすべて、憲法が定めるところの「政治上の権力」には該当しないというのが、現在の日本における憲法解釈だ。

なので日本では特定の宗教団体、たとえば創価学会が政権与党の後ろ盾になるのも問題なく、あるいは統一教会のように警察の取り締まりをゆるくさせる意図をもち元国家公安委員長や警察出身の国会議員などに対し集中的に献金をするなどしても問題もない。

そもそも日本において、近代の歴史上も厳格に「政教分離」が適用されたことは歴史上、なかった。

引用・参考文献

(*1)西日本新聞8月14日付朝刊

(*2)「子どもに『政治ってなに?』と聞かれたら

(*3)山根久美子、高橋大作、波多野大介「日本人なぜタブー?政治の話 SNSで届いた選挙の疑問」朝日新聞デジタル 2019年7月19日

(4)「政治と宗教の関係は今のままでいいのか」ビデオニュース・ドットコム 2022年7月23日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年8月20日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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