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謝罪のプロが評価した香川照之「誰も批判しなかった」TBS朝の生反省

「デイリー新潮」の報道により明らかになった、銀座の高級クラブでの俳優・香川照之さんによるセクハラ加害行為。その2日後、自身が司会を務める情報番組の冒頭で深々と頭を下げた香川さんですが、その内容を「謝罪の専門家」はどう評価するのでしょうか。今回、東北大学特任教授でコンプライアンス研修の講師も務められている増沢隆太さんが、まぐまぐのコンテンツプラットフォーム「mine」内で、香川さんの謝罪はこれまで無数に見てきた「失敗会見」とは一線を画すものとの見解を示すとともに、この後に彼を待ち受けている「最大の山場」について解説しています。

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【謝罪プロは見た】香川照之事件に見るセクハラ事件「対応」ケーススタディ

週刊誌の報道で俳優・香川照之さんが、3年前、銀座のクラブにおける性加害に及んだと報じられました。これに対し香川さんが自身が出演する朝の情報番組にておいて謝罪。自らの非と反省を述べました。

私はハラスメントに関する研修や講演では具体的事例を使って対応策について説明をしています。香川さんと被害者、どちらが正しいかを論ずるのではなく、事件が起きた時の組織の対応について考えてみましょう。

賛否うずまく報道

一般のコメントを呼んでいると、事件が銀座のクラブで起き、そこで働くプロのホステスさんが、客の一人だった香川さんの行為を訴えたことという環境設定が、単なるセクハラや性加害と異なり賛否を巻き起こしている原因と感じました。

一方で酒を飲む店のホステスであっても性的嫌がらせは認められない、許せないという意見が、香川さん側への批判となっています。

また事件が2019年のことであり、被害者の方は香川さんではなく、店のママを事態の責任者として訴えたのであって、香川さんとは和解が成立していることなども、「何で今さら」という意見につながっています。

トラブルの判断

こうしたトラブルはセクハラ事件など、当事者間でしかわからないことも多く、まして過去の事件ともなれば客観的な証拠や証言などはなかなか得ることができません。そんな時に一方的に自分の正当性をアピールしたり、逆に相手の人間性を批判するなどのエスカレーションが、えてして起こりがちです。

対応をする組織、この件では香川さんの所属事務所の冷静な対応が絶対に欠かせません。これまた事件勃発ともなれば、だれもが浮足立ち、冷静さを失ってしまうのです。報道だけで判断するなら、香川さんは和解という形で法的対応を済ませており、また被害者本人の方も香川さんを告発すべく騒ぎにした訳ではないようです。

当然のことながら、コンプライアンスがこれだけ不可欠な今、「法的正当性」は絶対要件であり、ここをまず押さえられたのは香川さん事務所にとって頼りどころになりました。しかしまだ問題は解決されません。芸能人という職業から、法的正否を超えたイメージ問題という最大の難関が残っています。

自らの番組で謝罪

香川さんは、自身が司会するTBS朝の情報番組冒頭で、本件について謝罪しました。時間にして90秒ほどですが、自らの行いへの反省を述べました。

私は良い内容だったと思います。しっかり準備をされ、何を言うべきか、言わないべきかを吟味の上で臨まれたと感じます。特に良かったのは「誰も批判しなかった」こと。3年前の事件なのに、和解が済んでるのに、お酒を飲む店なのに…賛否のコメントにあるさまざまな弁護は一切触れなかった点が一番良いと思ったことです。

これまで無数の失敗会見を見てきましたが、失敗する謝罪のほとんどすべて、必ず言い訳と他責をしています。事件の本質が何なのか、誰が悪いのか、それは一発目の謝罪で伝えることではないのです。にもかかわらず、会見などで「あれは実は…」と言い訳してしまうことで、反発を呼び事態収束が遠のきます。

事後処理という難題の帰趨を決めるのは、あの会社

香川さんにはこの後も大仕事が続きます。というか、この後こそが最大の山場です。スポンサー対応です。

出演などについては、名優という香川さんの評価があることで刑法犯罪でもない限り、時間とともに歌舞伎や映画など復帰の道は十分あり得るでしょう。

テレビなどはこの先の視聴者反応によるでしょうが、私は一定数の賛同は得られているように感じます。一方で当然一定数の反発もあります。

この賛否両論状態は、まだチャンスがあることを意味します。この先のステップを間違えなければ、事態収束は可能です。

特にトヨタの動向がきわめて大きく、トヨタが静観するか、取り下げるかで、この先のすべてのスポンサーの動向が決まるでしょう。香川さんが豊田社長を動かせるのか、もちろん言葉のことではなく、CMの扱いにおいてその意向は判明するでしょう。

image by : 香川照之公式プロフィール

増沢隆太

増沢隆太

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「謝罪のプロ」として著名人記者会見のたびにテレビ、ラジオ、新聞でコメントしまくるコミュニケーションのプロ。ロンドン大学大学院では戦争研究を行い、帰国後外資系企業数社でブランドマーケティングを担当した。その後、人事コンサル会社勤務を最後に独立し、人事・経営コンサルタントとして活躍。現在は講演、企業研修、大学生向け講座などで全国を回るほか、東京工業大学の特任教授も務めた。

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