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プーチンの狡猾。露がウクライナ侵攻前に仕掛け勝利していた戦争

西側の民主主義国家に暮らす人間からすればまったく理解不能とも言える、プーチン大統領がウクライナ侵攻を正当化するため口にする一方的な主張ですが、その裏にはしたたかな狙いが存在するようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、プーチン大統領が一貫して無理筋とも思える主張を続ける理由を解説。さらにそこから日本人が学ぶべきこと、今後行うべき活動を提起しています。

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ウクライナにみる情報戦の重要性

先日、ウクライナから大阪に避難してきた女性のオンラインスピーチを聞きました。

彼女、ウクライナで学校の先生をしており、最初はポーランドに逃げたのですが環境がよくなく日本大使館にかけこんだそうです。

2月にロシアのウクライナ侵攻が始まった当日、その報道を彼女は信じなかったそうです。

「ロシアが侵攻しているというニュースがありますが、授業は通常どおりに行います。ただ家にいたい人はいてください」と生徒にメールしたそうです。

「欧米のニュースは聞いていなかったのですか?」という質問がありました。

「もちろん、聞いていました。ただ、我々ウクライナ国民のほとんどは、ロシアのニュースと同じぐらい欧米ニュースも信用していなかったのです」との回答でした。

またプーチンが侵攻の理由のひとつとしている「ウクライナのナチ化を防ぐ」についての言及もありました。

第二次世界大戦中にウクライナの西部地域でナチス・ドイツと協力してソ連から独立するという運動が実際にあったそうです。

それをプーチンは大義名分として使っているとの事でした。

当事者であるウクライナ難民から聞く話は報道とは違うリアリティがあります。

ちょうど、米国の外国専門誌「フォーリン・アフェアーズ」9・10月号が「プーチンの望む世界」という論文を掲載していますので関係する部分を抜粋してみましょう。

プーチンに言わせれば、ウクライナ侵攻はナチスからウクライナを解放するためのものである。

 

しかし、プーチンにとってウクライナ人がナチス化しているのは、アドルフ・ヒトラーの教えを守っているからでも、国家社会主義を信奉しているからでもない。

 

「熱狂的な民族主義者」だからナチスなのである。彼らはロシア人であることを認めないからナチスなのだ。

解説

フォーリン・アフェアーズのこの論文には、ウクライナ人女性から聞いた話は記されていません。

意図的に触れていないのか、彼女が言ったような歴史が実際はないのかは分かりません。

今回の戦争で明白になったことが一つあります。

リアルの戦争に勝つためにはその前に情報戦、プロパガンダ(宣伝)戦で勝たねばならない、という事です。

西側報道機関が「ロシアが病院を爆撃した」と報道すれば、ロシア側は「病院の隣に武器庫があったからだ」と反論するといった感じです。

攻撃の正当性を世界に訴えながら双方とも戦争しています。

ウクライナ侵攻におけるロシア、プーチンの正当性とは何でしょうか?論文は解説します。

ウラジーミル・プーチンの頭の中では、歴史は重要である。

 

プーチンの考える過去は、一般に受け入れられているものとは大きく異なるかもしれないが、彼の語りは強力な政治的武器であり、彼の正統性を支えている。

 

彼はこの侵攻の使命を、2021年7月に発表した5,000語の論文、“ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について”で打ち出した。

 

その中でプーチンは、ベラルーシ人もロシア人もウクライナ人も、黒海とバルト海の間の土地を開拓した古代人であるルス人の子孫であると主張した。

 

そして、共通の領土と言語、正教の信仰によって結ばれていると主張した。

 

ウクライナに派遣される兵士が必ず携行することになっているプーチンの論文は、ウクライナはロシアとの協力関係においてのみ主権を持つことができると主張している。

 

「私たちは一つの民族だ」とプーチンは宣言している。

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解説

西側からみると、このような主張は笑ってしまうものかもしれません。

しかしこじつけでもなんでも正当性の主張は大事です。

その主張に世界が納得感をもった時に大きな力を持つことになります。

それが世界に認められるか否かの鍵が、いわゆる「情報戦、プロパガンダ(宣伝)戦」になるでしょう。

引き続き論文から抜粋します。

プーチンは情報操作を行い、海外の政治家に賄賂を送り、脅迫することに力を注いだ。

 

プーチンは、欧米の反応を緩和するために常に戦術を変えてきた。侵攻の前夜、ロシア軍がウクライナの国境に集結したとき、ヨーロッパの一部の対話者に「欧米を買収した」と自慢したほどである。

 

プーチンは、米国や欧州諸国がウクライナを軍事的に支援することを嫌悪している。そして欧米諸国に対して経済戦争と情報戦を仕掛け、これが単なる軍事衝突ではないことを明確に示している。

 

ロシアが戦場で行ってきた残虐行為をウクライナも行っていると非難したり、黒海からアフリカ大陸へのウクライナ産穀物の輸送を妨害しているのはロシアであるのに、アフリカの飢饉を悪化させたのは欧米の制裁だと非難するなど、偽情報を流布しているのだ。

 

そして、世界の多くの地域で、ロシアは情報戦に勝利している。これまでのところ、西側諸国は情報空間において完全な効果を発揮することはできていない。

解説

この論文のいうようにロシアが情報戦に勝利しているのかどうかは分かりません。

このフォーリン・アフェアーズの論文も西側にとっては情報戦の大きな武器でしょう。

我々が学ぶべきことは情報戦に対して欧米、ロシアがどれほど力を入れているかです。

それは日本がとても弱い分野です。自分を強く主張する事に対することに対する恥ずかしさのようなものもあります。

その意味で今の日本の対韓関係、対中関係においても正当な部分の主張は繰り返し行うべきです。

歴史的に迫害されてきたユダヤ人には名誉毀損防止同盟(英語: Anti-Defamation League、略称:ADL)といった米国最大のユダヤ人団体もあります。

こういった活動、日本でももっと行われてよいと考えます。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』8月28日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: ID1974 / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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