ウクライナ戦争の開戦後、次々と謎の死を遂げるロシアの石油会社幹部。一部では暗殺を疑う声も上がっていますが、相次ぐ不審死の裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、NYタイムズの記事を引く形でこれらの「事件」を詳しく紹介するとともに、プーチン氏が暗殺を指示していても不思議ではない理由を解説。さらに西側からの経済制裁を受けるロシアが、いつまで戦争を継続することが可能かについて考察しています。
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怪死がつづくロシア石油会社の背景
ロシアが西側に対する経済制裁に耐えている大きな理由が石油価格です。
比較的に高い値段で推移しているので、エネルギー大国であるロシアに有利に働いているのです。
9月2日もロシアがドイツへのガスパイプラインは閉鎖され続けると発表しました。
今年の冬のヨーロッパではエネルギー危機が予想されています。そのような形でロシアも欧州に圧力をかけているのです。
そのロシアで石油関係の会社幹部の怪死が続いています。
それについて報道したNYタイムズの記事を見てみましょう。
NYタイムズ9月1日 ロシアの石油会社幹部、謎の死を遂げる
9月1日ロシア第2位の石油会社であるルコイルの会長が、モスクワの病院の6階の窓から転落して死亡した。
会長マガーノフ氏は、中央臨床病院の窓から転落したと主要国営テレビ局であるチャンネル1が報じた。同報道は、クリニックがこの事故を確認したと伝えている。
ルコイル社は3月、ウクライナ侵攻の「早期解決」を求め、クレムリンの公式路線とは距離を置くという、ロシア企業の中では異例の姿勢を示した。マガノフ会長が率いる取締役会の声明では、「武力紛争の最も早い終結」を求めていた。
ロシア国営通信のタス通信は、マガノフ氏の死を自殺とした。マガノフ会長は心臓発作で入院しており、抗うつ剤を服用していたとする法執行機関の無名の情報源を引用した。
怪死はこれだけではない。
2月のロシアのウクライナ侵攻以来、エネルギー産業と関係のあるビジネスマンの死亡が相次いでいる。
ウクライナ開戦翌日の2月25日、ロシアのエネルギー大手ガスプロムの財務担当副総責任者アレクサンダー・チュラコフ氏がサンクトペテルブルク近郊の自宅ガレージで死んでいるのが発見された。
ロシア紙ノバヤガゼータでは、彼の死は自殺とされている。
4月には、ロシア最大級の金融機関であり、ガスプロムともつながりのあるガスプロムバンクの元副社長ウラジスラフ・アバエフ氏が、モスクワのアパートで妻と娘の遺体とともに発見された。
ロシア紙コメルサントによると、捜査当局は、アバエフ氏が自らの命を絶つ前に、2人を射殺したようだと述べたという。
5月、モスクワ郊外の町ミティシチの自宅地下で、元ルコイル社幹部アレクサンドル・スボボチンが遺体で発見されたとタス通信が報じた。
解説
ロシアにおいて石油は戦争継続のための頼みの綱です。その石油会社で幹部の怪死が続いているのです。
石油を戦略物資としたいプーチンが石油会社を押さえつけているために暗殺を命令していても不思議ではありません。
実はこの面において米国のバイデン大統領は大きな切り札をもっています。
バイデン大統領は、就任直後に、温暖化防止を目的にシェールガス・オイルの生産に供する国有地の新規賃借を禁止する大統領令に署名しています。
それが石油高騰を生んだ大きな理由です。
その国有地におけるシェールガス・オイルの生産をまた認めるような発表をすれば、それだけで石油の値段は下がるでしょう。
それは戦費を心配するロシアの足元を確実に揺るがします。
それができないのは、シェールガス・オイルの生産再開を促すことは、トランプの政策を追認する印象をあたえるためでしょう。
バイデン大統領は国内政治、選挙を考えているのです。
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それでは、ロシアは西側の経済制裁に耐えていつまでも戦争を続けることができるのでしょうか?
それについて米国の外交専門誌、フォーリンアフェアーズ、9月2日に以下のような記事を発表しています。
ロシア経済は危機に瀕しているのか?
プーチンは、「西側の対ロシア制裁は失敗したと自信を持って言える」と幹部たちに語った。「西側の経済的な作戦は失敗したのだ」。
ロシア経済が安定しているというクレムリンの主張は、ある意味で正しい。銀行は健全で、ほとんどの産業は通常通り操業しており、重要なエネルギー部門は石油を供給し続けている。
高級車が不足しているとはいえ、店頭に食料は十分にある。自動車や洗濯機の生産は予想をはるかに下回るので、消費者はできることなら大きな買い物は先延ばしにするだろう。
クレムリンにとって楽観的なシナリオは、ロシア人が節制して苦境をやり過ごすことである。
今のところ、ロシアの指導者たちは、6カ月間の欧米の制裁を乗り切ったことに満足している。しかし、今後1年間、ロシアの産業界は、欧米の輸入部品のない世界に適応するために苦闘し続けるだろう。
特に、ウラルやシベリアのモノグロドと呼ばれる、一つの工場や産業に依存する地域が、西側の輸出規制に耐えて操業をつづけられるかという問題がある。
そのような地域では産業は重要な雇用の源である。
過去には、このような地域で解雇が行われると、大きな抗議行動や社会的混乱が起こり、政治的に不安定になることがあった。
ロシアのシンクタンクによる最近の調査では、制裁によって半数のモノグロドが直接的な悪影響に直面することが判明している。
解説
「輸出規制が効いてくるのはこれからだ。ロシア辺境地域で工場稼働が難しくなったときに、雇用不安から社会混乱がおこり、それがプーチンの考えを変える可能性がある」という事です。
国内の人心コントロールに腐心するプーチン、冬に向けてエネルギーを確保したい欧州、選挙を意識する米国バイデン、それぞれの立場から、ウクライナ戦争の今後を考える必要があります。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』9月4日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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