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統一教会をとことん擁護。自民が重用するエセ保守論客・八木秀次氏のトンデモ論考

多くの国民が徹底解明を望んでいる、自民党と旧統一教会の関係を巡る問題。大手メディアも忖度なしの報道を繰り広げていますが、その流れを快く思わない向きも存在するようです。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、麗澤大学教授の八木秀次氏が月刊誌に寄稿した論考を精査。その異常性を白日の下に晒しています。※本稿では著者の意思と歴史的経緯に鑑み、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を「統一協会」と表記しています

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八木秀次の狂気ここに極まれり

『正論』10月号に、八木秀次による「『反アベ』の狂気ここに極まれり」というタイトルの寄稿があった。八木と言えば、統一協会系の新聞「世界日報」のPRビデオに出演し、広告塔をつとめ、「世日クラブ」主催の講演会には過去7回も登壇しているズブズブ族の筆頭だが、一体どんな狂気極まる論考を寄せているのか。読んでみた。

八木によると、安倍や自民党全体が統一協会とズブズブの関係にあることが露わになった今回の事件は、「一部の事実と事実誤認を混在させた意図的な印象操作の類いで、誇大妄想や陰謀論と言っていい」そうだ。

続々と被害者の証言にスポットが当たり、安倍をはじめとして、数々の国会議員が私心のためにカルトを利用し、政権中枢まで招き入れてきたことが明らかになっているというのに、「誇大妄想」「陰謀論」と言い切るとは、いきなりエンジン全開でブッ放している。

国葬にケチがついたことや、内閣支持率が低下したことを嘆く八木は、こう続ける。

これらは衆院選と参院選で党勢を縮小した勢力が、『反アベ』の感情を発散させ、憲法改正を阻止しようと展開しているプロパガンダに見える。

 

実際、筋書きは共産党系が描いている。時系列を見ると「しんぶん赤旗」が第一報、一般紙が後追い、テレビとSNSが拡散、を繰り返している。

ひえー、すべては「憲法改正阻止」のためのプロパガンダだったとは!

そりゃ、「緊急事態条項が創立されると、政府に虐殺され、警察官に射殺され、子どもが兵役にとられる」というトンデモ妄想まで信じる無知蒙昧の「反アベ」は存在するのだから、現在も、「この流れで改憲派を壊滅させて憲法改正を阻止しよう!」なんて吠えている人々もいるだろう。

だが、現在のムーブメントがそれらを含む有象無象の感情や政治目的を巻き上げていたとしても、やはり核心にあるのは、「統一協会に徹底的にカネを搾り取られ、破壊された家庭に生まれた男が、安倍シンパのネトウヨだったにも関わらず、安倍がその憎むべきカルトの重大な広告塔であったことに気がつき、凶行に走った」という点だろう。

山上は、共産党が育てたテロリストなどではないし、「犯人の心情がわかる」と声を上げる被害者やその関係者は自然に現れる。「しんぶん赤旗」の第一報がなくても、一般紙、テレビ、週刊誌、いずれもこぞってこの問題を追いかけるに決まっているではないか。

共産党籍の弁護士もいる全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)からの情報が、裏付けなしで独り歩きしている。

こ、これは……。先だって記者会見を行った、統一協会改革本部長・勅使河原秀行の発言「霊感商法が今でも行われているかのような報道、それを主導していると思える左翼弁護士の方々の影響が日本国民をミスリードしている」とまったく同じではないか。

「裏付けなしで独り歩き」って、私がこれまで見聞きした弁護士の発言は、実際に行われた裁判の公的資料や、被害者の生々しい証言がもとになっており、「裏付け」の連続だったが。

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八木は、統一協会と自身の関係についてこう述べる。

旧統一教会本体とは過去も現在も付き合いはないが、関連団体からの教育や家族法制になどに関する講演やシンポジウムへの出講の依頼には応えてきた。共産主義や文化マルクス主義への警戒心を共有できたからだ。

関わりを持ってきた人間は、全員とりあえず「本体とは付き合いはない。関連団体だ」と発言するが、それを聞いて「そっか、じゃあ関係ないんだね♪」と考えるアホがいるとでも思っているのだろうか。

むしろ、それを聞いたことで、「コイツあやしい」と確信に近づくのが一般的だと思うのだが。

……と思ったら、八木、みずからその確信に向けて薪をくべた。

日刊紙「世界日報」は、米国の左翼事情など重要な情報を提供してくれる貴重な媒体だ。これまで「世日クラブ」での講演内容や、夫婦別姓や同性婚に関する判決のコメントが掲載されている。産経新聞や朝日新聞などと同じように世界日報にも対応してきた。

さすが「世界日報」のPRをつとめる男だ。

「統一協会の機関紙ではない、独立した日刊紙だ!」という世界日報の言い分をコピペ拡散する八木だが、そもそも文鮮明が創立した新聞だ。私が調べた裏事情(「『よーしゃなき【論破祭り】VS.男系固執カルト』小林よしのりライジング Vol.445」)からも、統一協会と一体であることは確実である。

購読者を増やすために宗教色を隠しているにすぎず、統一協会本体が、正体を隠して勧誘活動する手法となんら変わらない。八木は、まんまとその片棒をかついで、世界日報の理想どおりのPRをして見せたわけだ。

そんな八木、マスコミから「統一協会の会員ですか?」等々の質問を浴び、メディアやSNSで発言が拡散されて「血祭り」に上げられているという。

統一協会系の講演で「同性愛の多くは治癒可能」などと発言してきたうえ、7月末にも自民党の委員会で、LGBTについて「後天的だという意見もだんだん有力になってきている」などと述べたのだから、記者たちが取り囲んでそう質問するのも自然なことだろう。

旧統一教会との「接点」を捜し、糾弾する風潮は狂気を帯びている。中世の欧州での「魔女狩り」や、中国の文化大革命時の紅衛兵の姿を思わせる。「隠れキリシタン」捜しのようだとの指摘もある。「接点」のある者を探し出してはメディアやSNSで血祭りにあげる。全体主義的で恐怖を覚える。カルトの色彩さえ帯びている。

いやいや、あなたがカルトの色彩を放っているんですよ!

統一協会が、反日・反天皇のカルトなの!

しかも、あなたの場合、「接点」どころの話じゃないですから!

「点」じゃない、「面」です。いや、「凸」と「凹」です。立体的に一体です!

血みどろの八木は、ここからさらに爆走しはじめる。

今年の参院選での自民党の全国比例区での得票数は1,825万6,244票だが、旧統一教会は7万~8万票の集票力しかない。比例区では単独で1人当選させることも難しい。これで自民党を支配できるはずがない。「安倍氏の力の源泉」ともならない。

八木と同じく、「統一協会の規模では、“票田”とまでは言えない」と否定する意見はよく見かける。関係団体を含めても、「最大で15万票」というのが、私の読んだ記事のなかで一番大きな数字だった。

たしかに、8~15万票では、選挙区当たり最大数百票となり、「統一協会の票だけで当選させたのか?」という話になると、計算が合わない。

だが、過去の参院選で、安倍がその8万の教団票の割り当てを懇願されて応じたり、あるいは、頼まれても「今回はちょっと」と断って、別の候補者のために振ったりと、重要視していたのは事実だ。

ではなぜ「8万票」を貴重に扱うのか?

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それは、選挙においては、集めてきた名簿をもとに電話をかけまくって投票を依頼する「電話作戦」が重要だからだ。「電話作戦」は、相手からガチャ切りされたり、怒鳴られたりするため、ボランティアスタッフには嫌がられる。その点、統一協会の信者は、熱心にこの嫌な仕事を引き受けるため、戦力として非常に有効なのだ。

安倍の地元・山口県で、父親の晋太郎の代から30年間、安倍の支援をしてきたという後援会関係者は、以前は、安倍晋三事務所から目と鼻の先のビルに、統一協会の下関支部が入居しており、協会の人間が御用聞きのように安倍事務所を訪れていたと話していた。衆院選はもちろんのこと、参院選になると名簿を持ってやってくるので、安倍事務所が「電話作戦」の会場を開放していたことも証言していた(2022.9.25 ANN NEWS「『最初は警戒していた』元関係者が語る“安倍氏と旧統一教会” 距離を縮めた背景とは」)。

また、選挙スタッフだけでなく、候補者のモチベーションを高めるにも、統一協会は有効だった。

安倍派議員の元秘書によれば、「選挙区内にいる統一協会の有権者数は、まるで大したことがない。それは分かっていたのだが、20年以上前のこと、全面的に支援してくれるというので一度、議員と統一協会の会合へ出た。すると、全国から呼び集めたのであろう統一協会の信者が、会場にすし詰め状態で押しかけて『○○先生、ガンバレー』と大声で叫んでいた」という(2022.8.3 DIAMOND online「統一教会『集票力は低いのに影響力大』の謎、安倍派議員元秘書がタネ明かし」)。

有権者が直接働きかければ、議員や立候補者もそれに反応する。すし詰め状態で押し掛けた人々に大声で応援されれば、高揚して「がんばってみなさんの希望する政策を叶えます!」なんて誓ってしまい、結果的に、「統一協会のためにせっせと働くズブズブ議員」として仕上がってしまうのではないだろうか。

当落ラインぎりぎりの議員ならば、なおさらだと想像するし、そんな貴重な「集票マシン」と高揚体験のきっかけを与えてくれた安倍晋三には、忠誠を誓うことになるだろう。

得票的にも、精神的にも、まさしく「力の源泉」である。

だが八木は、熱心に「統一協会のチカラ」を過小評価する。

(政治献金について)教団の名称変更時の文部科学大臣で政治介入が指摘される下村博文氏の世界日報社社長からの6万円が最高額だ。教団は形式要件を備えているのに許可しない場合は訴訟も辞さないと望んでおり、下村氏の介入の余地はないが、わずか6万円で危ない橋は渡るまい。

下村博文と言えば、加計学園事件で、受け取った政治資金を収支報告書に記載しておらず、それが発覚すると「11人から受け取った。それぞれ記載義務のない少額だったので記載しなかった」という脱法発言で逃げ切った人間だ。まったく信用できない。

さらに、麻生政権時代、支持率が低迷していた衆院選では、統一協会の信者に「今度の衆院選で有田芳生さんが東京11区から出馬する。落とすために対抗馬の下村博文さんを応援してください」という指示があったことも暴かれている。

下村の選挙事務所に集められた信者は、有田氏を中傷するビラを渡されて、数時間かけてポスティングしたという。事務所にもどると、下村本人が労ったらしい。

下村は、政治献金ならぬ、政治“献身”をちゃっかり受けているのだ。

そのうえ、政調会長として臨んだ昨秋の衆院選前には、統一協会から「家庭教育支援法と青少年健全育成基本法の制定を目指してほしい」という陳情を受けて、選挙公約への反映を指示した疑いも浮上している。

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一段落読むごとに、幼稚すぎて簡単に論破できてしまう八木だが、なによりも仰天したのは、統一協会が信者から巻き上げた献金に対する認識だ。

70代女性が、数年間で1,000万円超を献金し、全国弁連の支援で900万円の解決金を受け取って示談が成立したというケースがあったが、八木は次のように解釈。

先祖の因縁を引き合いに不安をあおる献金方法に抵抗感を覚えるが、女性の献金額は差し引き数年間で100万円だ。この程度の献金額は他の宗教団体でも聞く話だ。

ええー!?

度肝を抜かれた。たまたま運よく示談が成立したから900万円が戻ったが、そうでなければ「霊感商法で1,000万円吸い上げられていた」という話ではないか。その重要な部分をまるっと無視して、“示談後”の差し引きの金額を「この程度の献金額」と言ってしまう八木の異常性!

弁護士に相談することさえなく、もっと莫大な金をだまし取られている人がたくさんいそうだという想像も働かないのだろうか。そもそも献金の手口に問題があったから、この女性のようなケースが報告されているという問題点すら理解できないようだ。

旧統一教会は宗教法人としての認証を受け、現在も取り消されていない。2009年に関連会社の社長が客を不安に陥れて印鑑などを高額で売りつけたとして特定商取引法違反で有罪判決を受けた。
 (中略)
教団はその後、コンプライアンス宣言した。問題は、その後どうなっているかだ。現在も犯罪行為を行っているなら、宗教法人格の取消や解散命令を検討すべきだ。メディアもそれを主張すべきだ。逆に犯罪行為がないなら非難は不当だ。

勅使河原のような横柄な選民意識バリバリの人間が「改革本部長」を名乗って登場したのに、誰がカルトの「コンプライアンス宣言」なんか信じるか!

……と思ったら、まるっと信じている八木がここにいた。

本来なら、違法な霊感商法で有罪判決が下った時点で、宗教法人としての認証を取り消されていなければならなかったという話だろう。献金問題に関する訴訟は現在も行われており、それらが解決しない上に、公安の調査対象にもなっていないという超危険な状態だ。ここに着目できない八木の瞳は、どこを泳いでいるのだろう。

そもそも八木は、皇統を断絶に向かわせる「Y染色体カルト」を吐き散らかしてきた人間だ。統一協会の「反日・反天皇カルト」とは非常に親和性が高い。この論考を最後まで読んだ私の中には、「八木って統一協会のステルス信者なのでは?」という疑念が濃くなってしまった。

こんな男を「有識者」「専門家」として重用してきた自民党にも大きな問題がある。政治家は、統一協会と縁を切ると言うのなら、このカルト論者ともすっぱり手を切れ!

(『小林よしのりライジング』2022年9月27日号より一部抜粋・文中敬称略)

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