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岸田首相の大矛盾。民主主義に欠けた安倍元首相国葬決定のプロセス

各種世論調査では少なくとも半数以上の有権者が異を唱えていたのにもかかわらず、9月27日に強行された安倍元首相の国葬。国民を分断することになってしまった岸田首相の決断は、どう評価されるべきなのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、国会での議論も議決もなく国葬の挙行を決定した岸田首相を厳しく批判。さらに佐藤栄作氏の葬儀を「国民葬」とした日本人の知恵をもっとも簡単な方法で飛び越えた首相に対して、「リーダー失格」の烙印押しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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公明正大であるべきリーダーの決断がなかった安倍氏「国葬」

安倍元首相の「国葬儀」が終わりました。

日経ビジネスのコラムにも書きましたが、もし、岸田首相が「国葬」と早々に決めるのではなく、合同葬や国民葬も含めて、透明性のある検討をしていたら?もし、岸田首相が閣議決定ではなく、国会での議論と議決を経ていたら?こんなにも違和感を抱えることはなかった。

リーダーの決断は、公明正大であるべきなのに、今回の国葬にはそれがありませんでした。

「国葬じゃなく、国葬儀」と、内閣設置法を盾に“国葬”を正当化したり、結論ありきで辻つま合わせをしたりする手法を、この国のリーダーが続けるていることへの憤りが拭えないまま、“国葬”が行われてしまったのは、残念というか絶望といいますか。

「誠実にまされる知恵なし」とは、英国の保守系政治家ベンジャミン・ディズレーリ(1804~81年)の名言ですが、国葬決定は誠実とはかけ離れた決定でした。

佐藤栄作氏が亡くなった時に、内閣・自民党と国民有志の共催で行われた「国民葬」は、「どうやって弔うべきか?」を誠実に考えぬいた日本人の知恵。その知恵の壁を、最も簡単に飛び越えた岸田首相は、リーダー失格だと私は思います。

それは非業の死をとげた安倍氏をしのぶこととは、全く別次元の話です。安倍氏の功績を讃えることとも別。

岸田首相がもっと「国のリーダー」という立場に誠実だったら、筋の通った、道理に合うプロセスをきちんと踏んでいたなら、もっともっと多くの人たちが、非業の死を遂げた安倍さんの死を心から悼むことができたはずです。

たとえ、それが国葬だろうと、合同葬だろうと、国民葬だろうとも、もっと優しい気持ちになれたことでしょう。

岸田首相は、安倍元首相の「国葬儀」の意義として「民主主義」を強調しました。「国として葬儀を執り行うことで、我が国は民主主義を断固として守り抜くことを示していく」と。

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果たして、国葬のプロセスは民主主義と言えるのでしょうか。民主主義を簡単な言葉で説明すると「ものごとをみんなで決めましょう」という考え方のこと。改めていうまでもありませんが、子供にわかりやすくいうならば、この説明を否定する人はいないでしょう。

少数派の意見も、多数派の意見にも耳を傾ける。「聞くこと」を自分の強みとしていたのに、その耳はいったいどこに行ってしまったのか。

この国は結局、「見たいものしか見ない」「聞きたいことしか聞かない」為政者によって動かされているのだと、つくづく虚しくなりました。「血税」をまるで自分のお財布から出すように、簡単に使う政治のあり方にも、今回ほど怒りを感じたことはありません。

そして、もし「国葬に反対していた人も、国葬やっちゃえば反対してたことを忘れるよ。オリンピックもそうだったでしょ」などと、本気で政治家が考えてるとしたなら、救いようがない。しかも、その政治家を選んだのは「私」たちです。「そっか。私はおかしいと思うけど、日本人はおかしいと思ってないのか」と、自分の考え方に疑問が生じてしまうのですから、政治の力の罪深さを嘆かずにはいられないのです。

そんな中、国葬当日、「皆さまおはようございます。内閣総理大臣の安倍晋三です。本日、私の国葬が厳粛に執り行われます」と安倍氏が語る動画が、YouTubeに公開されました。

【関連】「AI安倍晋三」の裏に統一教会?ズブズブ自民議員の大絶賛で深まる疑念、「東大」騙る悪質手口、ネット工作から漂うキナ臭さ

制作したのは、東京大学の学生有志が立ち上げたという「東京大学AI研究会(東京大学人工知能研究会)」を名乗る団体です(東大は否定)。

同団体は、「故安倍元総理追悼AIプロジェクト」と名付け、26日までに6本の動画を公開しています。すべてAIを使い、安倍元首相の音声も再現。安倍氏の声をAIによる合成音で仕立て、画像は安倍氏の静止画で公開されました。

この投稿にSNSでは賛否両論飛び交っていますが、正直なところ薄気味悪いです。どのような経緯で、何を目的に、誰が作成したのかはわかりません。

しかし、海外ではAIによる合成映像技術「ディープフェイク」を利用した政治活動が有権者の心理に及ぼす影響が危惧されています。一部の国や地域では、禁止しているとこもあると聞きます。

いずれにせよ、今回の「国葬問題」では、旧統一教会と政治家たちとの深い関係が表面化するなど、政治のあり方を見つめ直す転機になったように思います。

みなさまのご意見、お聞かせください。

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image by: 首相官邸

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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