持てる勇気を振り絞り会見に臨んだ2世信者を、卑劣な手を使い潰しにかかった旧統一教会。そのあまりの非道な手法に各所から非難の声が上がりましたが、かようなやり口は旧統一教会の常套手段と言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』ではかつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんが、会見中止要請で明らかになった親子断絶を図る教団の手口を詳しく紹介。さらに2009年から強化されたというコンプライアンスの内容を見る限り教団改革は困難として、その理由を旧統一教会の教義を挙げつつ解説しています。
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旧統一教会元信者・祝福2世の会見で、はからずも旧統一教会のかぶっていた羊の皮がぬげてしまった
1.日本外国特派員協会における、旧統一教会元信者・祝福2世の会見で、教団の裏の顔がみえた
10月7日、日本外国特派員協会で、旧統一教会元信者で、祝福2世の小川さん(仮名)の記者会見がありました。はからずも、この会見で教団の素顔をさらす結果になりました。
それは質疑応答の途中で紹介された、信者である親からの署名入りの「会見の中止要請」のFAXです。
その内容は彼女の心を傷つけるようなひどいもので「(彼女は)精神に異常をきたしており」「多くのウソを言ってしまうようになっている」というものでした。
育った親からこのような言葉を受ける小川さんの心を思うといたたまれない気持ちになりますが、最後まで会見をやり遂げてくれたおかげで、教団のかぶっていた羊の皮が、すっかりぬげてしまいました。
それは、親と子を断絶させようとする教団の姿です。
その辺りは、ヤフーニュースにしたので、詳細はそちらで見て頂くとして、簡単にいえば、教団は昔から自らの教祖夫妻を「真の父母」として、私たちの肉の親をサタン側の父母としています。そして「サタンは情を通じてやってくる」などと教えて、実際の肉の親たちからの言葉に耳を傾けさせないように信仰指導します。こうして教団は親から子供たちを引き離していくのです。
● 旧統一教会、1世信者である両親からの会見中止の要請にも負けない、2世信者の姿勢に、多くの人が涙した。(個人 Yahoo!ニュース)
数十年も繰り返されてきた、親子の断絶・崩壊のやり口が、今もなお、信者の親と、信仰を離れた子供との関係でも行われていることを世の中に見せてしまったわけです。
2.安倍元首相への銃撃事件の教団からの謝罪。あれはなんだったのか?
安倍元首相が銃撃された山上容疑者の殺害動機が、母親が教団にのめり込み、多額の献金をして家庭崩壊をしたものによるものとされています。すでに旧統一教会は公に謝罪しています。
しかし今回の会見を見てもわかるように、未だに親子の断絶・家庭崩壊をさせる行為を続けており、なぜ、山上容疑者の家庭が崩壊したのか、その意味を本当にわかっておらず、いかに教団の銃撃事件への謝罪が、口だけだったこともわかります。
何より公の場で「精神に異常をきたしており」などという言葉は、親からは絶対に言ってはいけないものです。
そこに旧統一教会の信仰が加わることで、このようなことが簡単になされてしまう。今も2世の子供たちがこうした宗教的虐待ともいえる、心無い言葉を受け続けているかと思うと、心が痛みます。
会見から4日後、全国霊感商法対策弁護士連絡会が、速やかに解散命令を請求するよう、文部科学省、法務省に対して申し入れをしてくれました。こうした迅速な対応に力強さを感じます。
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3.本当に、政治家は「広告塔になって申し訳ない」「関係を絶つ」の意味をわかって話しているのか
あとは、国の対応です。
特に政治家の中は「広告塔になってしまって、申し訳ない」と話す人が多くいます。しかし本当に「広告塔になった」意味をわかっているのでしょうか。霊感商法における金銭的被害だけではないのです。
政治家が祝辞やメッセージを送り、教団の施設、関連団体のイベントで信者らの前で力強く、旧統一教会の活動を賛美して、韓鶴子総裁を誉めたたえる言葉を話すことで、信者らは教義に確固たる自信を持ち、先のような親子を断絶と家庭崩壊をさせるような言動に走ってしまうのです。どれだけの家庭をあなた方が広告塔になることで、壊されてきたか、その意味を真にわかって話をしているのかを問いたいと思います。
過去には、旧統一教会に対して「何が問題かわからない」と言った議員もいますが、真摯に反省をしてほしいのです。
教団の応援を受けて、当選したことへの恩義を感じる議員もいるかもしれません。
また「信者にはいい人もいる」と、馬鹿げた考えを持っている人もいるかもしれません。確かに、信者一人一人の性格は良い人かもしれません。しかしそれが教義・信仰指導によって、良い人のままではいられなくなるのが、今の教団の状況なのです。
これから日本の将来を担うであろう子供たちが、非情な言葉を受けて育っているかもしれない現実に目を向けて、広告塔になった過去の事実にしっかりと向き合い、これまで教団と付き合いがあった自民党をはじめとする議員の方は、本気で教団関係者と手を切ることを考えてほしいと思います。
最後に、知人の弁護士からも、今回の会見中止の件の要請については「名誉棄損にあたる」可能性の見解を頂いています。
まずは会見された小川さんは、自分のお心を第一にして、無理せずお休みされてもよいかと思います。その声は間違いなく、社会に届いています。私はこの教団と両親の言動を絶対に許せませんので、しばらくは、私たちにお任せ頂いても大丈夫です。
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4.2009年からのコンプラインスの内容がようやくわかったけれど、教会改革はまず難しい
先月の教団の会見から、2009年からのコンプラインスの内容がわかりました。しかし、この内容では、正直、教会改革は難しいです。
不祥事を起こした会社が本気で組織の改革をしようとすれば、第三者を入れて取り組むと思いますが、教団においてはそれができません。教義上、外部からの意見を聞くことは、サタン側の声を聞くことになるからです。教団へのサタンの侵入を許す結果になります。
旧統一教会の思想は、善と悪に分けて考えます。教義を知って信仰している自分たちは神の側(善)であり、教義を知らない人たちはサタン側にいる人間(悪)なので、救わなければならない存在としてみています。
第三者の意見を聞くことができない教えでは、教団の改革など難しいといわざるをえません。
私はマスコミ報道の問題点をあげつらう時間があれば、それと同じくらいに、正体を隠した伝道手法の問題についての見解がほしかったと思っています。
というのも、人を誘うことでお金を生み出す仕組みが、これまでの教団におけるやり口だからです。
報道特集(TBS)のなかで、母親が信者で多額の献金をして、家庭が崩壊して、そのもとで育った男性が自殺したという悲しい事件をみました。こうした事例は、まさに誘われて信者になった人が多額のお金を持ち出した結果です。
母親がどのようにして勧誘されて、献金にまでいたったのかは、わかりませんが、おそらく最初は旧統一教会とは告げられていないと考えています。百歩譲って「家庭連合」くらいは言っているかもしれませんが、この「家庭連合」という略称を聞いて、誰が宗教団体への入信につながると思うでしょうか。
つまり、誘われる段階で宗教団体への入信のきっかけになるとは思っていないケースがほとんどです。母親の入信の結果、信仰2世と思われる息子は自殺にまで至っています。こんな悲しいことはありません。もう入口における、ごまかしを用いた不当な勧誘手法はやめて頂きたいのです。
勧誘時には「家庭連合」という略称だけでなく、自分たちがが旧統一教会という宗教団体としての勧誘をしていることもしっかりと伝える。名称をごまかした形で勧誘することは、必ず悲劇を生み出します。
しかし教義の根本には、神のためなら多少の嘘をついても良いという教えがありますので、この手法が続く懸念を強く持っています。
教団が表面だけをいくら変えようとしても、1980年代に起きた霊感商法のような被害を引き起こす火種は残っていて、一刻も早く宗教法人の解散という外からの力で、本当の教会改革を促すことが必要だと考えます。
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