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国会議員より世襲だらけ。有権者が知らぬ「税食い虫」地方議員の実情

都道府県や市区町村の意思決定機関である地方議会。しかし選挙で選んだはずの議員らが、普段どのような「仕事」を行っているのかを把握している住民の数は決して多くないのが現状です。そんな彼らの実態を取り上げているのは、投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹兵輔さん。神木さんは自身のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』で今回、国会議員よりも世襲が多く、甘い汁ばかりを吸っていると言っても過言ではない地方議員の真の姿を白日の下に晒すとともに、納税者に対して地方議会のあり方の再考を呼びかけています。

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「怠け者の楽園」といわれる地方議会の議員は不要!

みなさま、こんにちは!「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。今回のテーマは、与党自民党の国会議員同様に世襲議員が跋扈している日本の地方議会議員についてです(国会議員全体の3割が世襲。自民党に限ると4割が世襲)。地方議会がどれほど税金を食い荒らすシロアリ世襲議員の天国になっているのかを、鋭くえぐっていきたいと思います。

地方議員は、国会議員よりもその活動実態が見えにくいために、ヒマを持て余し問題行動連発の議員の存在もしばしば目にします。日頃は注目されないがゆえに、やりたい放題が出来る議員も少なくないわけです。無知蒙昧(もうまい)・無教養の「痴呆議員」がいかに多いのか、その実情を知っておいていただきたいのです。

小規模自治体の町村議会議員に「なり手」がいない現実とは?

ところで、人口の少ない 小規模な町村においては、近年議員の「なり手」がいないことが問題になっています。町村議員には、政務活動費がないところが多く(約8割がない)、議員としての報酬平均が20万円~30万円そこそこで、税金や社会保障費を引かれると、手取りがたったの16万円~23万円程度になってしまい、議員専業ではとても食べていけない──というのがその大きな理由のようです。町村議員の兼業割合では、農業が一番多くて約3割、次いで専業議員が約2割強で、その他は土建業や飲食・小売業などの自営業となっており、当然ですがサラリーマンはいないのです。8割弱が何らかの仕事との掛け持ちで、町村議員を務めています。

年間平均で、わずか40日程度しか開かれない町村議会なら、兼業しながらでも、十分務まる議員活動と思われますが、実際には、それでも町村議員の「なり手」がいない──ということなのですから首を傾げたくもなるのです。大体年間40日程度しか議会が開かれず、そこに通うだけで毎月20万円~30万円程度の報酬だって高すぎるでしょう。町村議員なんか、らくちん商売といえるのに、兼業していても「なり手」が不足しているのは不思議に感じられます。本当は報酬が少ない──という理由でなく、そもそも町村議会そのものが町村民から興味ももたれず、誰からも「不要な存在」と思われているのが、本当の理由ではないかとさえ思えてきます。とまれ、日本にある町村議会で定数に満たない町村議会が数十議会もあるそうで、選挙では無投票で当選するケースも少なくないのです。つまり、全国に約900ある町村議会のうち、半数近くが常に議員のなり手不足に悩まされているというのです。町村議員数の平均定数は、1議会当たり約12名と少ないのですが、その数少ない定数ですら、埋まりにくい現状があるわけです。地方議会というのは、地域のさまざまな課題に対して民主的に合意形成を図る場──という重要な役割があるといわれます。しかし、町村議会選挙は、町村民の関心も低く、顔見知りの地縁社会で丸がかり動員する投票率でさえ、5割そこそこです。

国政選挙と比較すると、どっこいどっこいの投票率ですが、もともと有権者数も少なく、町村会議員は、数百票から数千票単位で当選できてしまいます。たしかに毎月の町村議員報酬20万円×任期4年間=960万円程度のために、また数百票や数千票の得票のために、供託金15万円を納めて、選挙ポスターを印刷し、仲間うちの支援者にビラ撒きやポスター張りを手伝ってもらい、選挙カーまで仕立てるとなると、何かと金がかかって割がよくない──というのも理解できます(笑)。もはや、つまるところ、町村議員など、いてもいなくてもよい──盲腸のような存在になり下がっているのが実態に近いのではないでしょうか。

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何を質問すればよいのか──さえ分からない痴呆議員たち!

前述の通り日本では、地方議員の活動が有権者にはほとんど見えない状況です。ゆえに、ロクに働かずとも甘い汁をたっぷり吸っている地方議員がはびこる土壌があります。当然ながら、町村議員よりも、都道府県議会議員や市議会議員は、高額報酬で、町村議と同様に拘束時間の短いオイシイ職業です。約3割が世襲といわれる国会議員よりも世襲が多く、半分超が世襲議員という地方議会まであるそうです。世襲議員ははじめから地盤(後援会など)、看板(知名度)、カバン(資金)の“3バン”が揃い、低投票率であるほど当選確率も高くなります。

地方行政への見識や教養、情熱など何もなくても、選挙期間中だけ「自分の名前」を連呼し、当たり障りのない「スローガン」や「政策キャッチフレーズ」だけ唱えていればよいのです。政党の公認や推薦さえうまく得られれば、当選するのも容易でしょう。地方議員としての資質もないまま当選している人が大半のように見えるのも、あながち間違いではない──というわけです。驚くべきことに、年会費9万7,200円を払って「らくらく質問会員」になれば、定例会4回分の議会質問のサンプルまでつくってくれる『「そのまま質問文」をお届け!』なる会社のサービスまであり、これを利用する地方議員までが存在していました(2015年4月3日付産経新聞記事より)。

都道府県議会議員、市議会議員は「高額報酬」の上に「楽園」のような待遇!

地方議員の報酬額は、「歳費」「期末手当」に「政務活動費(旧政務調査費)」の3つです。政務活動費のない議会も全国に約5割ありますが、都道府県議会、政令指定市議会では100%、一般市、東京23区議会は87%、前述の町村議会でも20%に存在します。地方議員の数は、全国に約3万5,000名います。年間報酬総額は約3,500億円ですから、地方議員には一人当たりで平均約1,000万円が税金から支払われている計算になります。都道府県議(約2,700名)の平均報酬額は年間2,000万円超、市議(約2万300名)が年間平均約850万円、町村議(約1万1,700名)が前述の通り、年間平均約250~400万円程度です。

例えば埼玉県議(定数93議席)なら歳費が月額92.7万円で政務活動費が月額50万円で年間2,190万円にのぼります。さいたま市議(定数60議席)でも歳費が月額80.7万円、政務活動費が月額34万円で年間1,721万円です。政務活動費は、2012年に政務調査費が改称されて使途が拡大しています。調査研究費、人件費、交通費、研修費、事務所費、広報費 などが名目ですが、領収書が不要なケースも多く、所詮は「裏給与」「遊興費」と呼ばれます。地方議会では、歳費や政務活動費を議員のお手盛りでどんどん上げてきたため高待遇になったのです。都道府県議会の平均会期は年間たったの90日前後です。区市議会は80日前後、町村議会においてはすでにご紹介の通り、わずかに40日前後です。しかも議会1回の所要は1時間程度にすぎません。また、地方議員の数に比例して、行政側の議会スタッフの人数も、議員定数が多くなるほど多くなっています(大阪府議会の場合で議員定数109名に対して議会事務局職員数61名)。

議会事務局スタッフの仕事内容は、議員の面倒を見てやることです。資料を揃えてやったり、レクチャーしたり、バカな議員から行政にイチャモンをつけられないよう、至れり尽くせりのサービスで応じます。地方議員はふんぞり返るばかりでしょう。地方財政の厳しい状況に鑑みても、素直にうなずけるスタッフ数ではないのです。このほかに、地方議員は議会に出席するたびに1万円程度がもらえる費用弁償(日当)があったり(年間90回議会に行くだけで90万円)、任期中の海外視察旅行(報告はインターネット情報のコピーですます議員もいます)があり、赤字ゆえに税金投入されている議員年金まで未だに存在している地方議会さえあるのです。いつの間にか、有権者の知らないうちに地方議員の待遇は、これまで議員たち自身によるお手盛りで、非常に恵まれたものにしてきたのが日本の実情だったのです。

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「二元代表制」はまったく機能していない!

地方議会の内容はどうかといえば、こちらも問題大アリです。なにしろ、議員提案のない地方議会は95%、首長の提出条例案は90%が無修正で通っています。行政に対しての質問のない議会も多数存在します。国会と異なり、専門の委員会数も極端に少なく、ほとんど機能していません。年中居眠りしているのと変わらない議会が多いのです。

二元代表制による行政のチェック機能は、ほとんど働いていないのが実情なのです。ちなみに二元代表制とは、自治体行政の首長と議会議員を直接選挙で選ぶことで、行政のチェック機能を果たす仕組みのことです。残念ながら、日本ではこのチェック制度は機能不全なのです。せいぜい地方議員は、国政選挙の際に、親分筋の国会議員候補の票の取りまとめ支援に駆り出されるぐらいなのです。

日本の地方議会の待遇は「世界の非常識」!

諸外国では、地方議会は土日や平日夜に開かれています。それが世界の常識です。日本人はそれを知らされていません。一般の会社員が、無給か日当制で地方議員を務め、せいぜい報酬は多くても年間50万円程度というのが諸外国の例です。月額ではなく、年間合計での報酬額です。ほとんどがボランティア報酬で、行政をよくしたいという有志が、積極的に地方議員を務めます。

日本のように高額報酬で高待遇にしていると、世襲議員だらけになるのです。日本も諸外国の地方議会を見習って、年4回程度の会期制をやめて通年制とし、夜間や休日に議会を開き、報酬は日当制にすべきでしょう。それなら、報酬総額だって、今より100分の1以下に圧縮することだって可能だからです。日本の現行の地方議員は、もはやその存在理由がない──も同然だからです。今のままなら、ただちに地方議員など廃止すべきなのです。夜に議会を開けば、昼間仕事をしているサラリーマンでも議員が務まります。一定の見識や良識をもった庶民派サラリーマンのほうが、よほど、本来あるべき行政についての意見を有しているはずです。地方議会を「怠け者の楽園」にしている日本の国民は、民主主義の奇妙な幻想を抱かせられているのです。地方自治に「民の声」を活かすシステムが働いていません。地方議員は、のほほんと世襲で当選し、行政のチェックという仕事もせずに、ほとんどが首長の言いなりで賛成票を投じ、税金をガッポリ貪っているだけなのです。

選挙の時だけ、ああだこうだ──ともっともらしいことだけ吹聴しているのです。仕事をしているフリだけです。地方議会のあり方について、いい加減に目覚めないと、この国の衰退がどんどん進んでいくだけでしょう。税金はもっと合理的に、困っている弱者中心に使われるべきなのです。それでは今回は、このへんで。

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image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

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投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

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