2020年に自殺したプロレスラー木村花さんの母親の響子さんが6日、花さんの死因を作った恋愛リアリティ番組「テラスハウス」を制作したフジテレビや制作会社を相手取り、約1億4200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。響子さんは、花さんが亡くなってから、花さんの名誉回復のための活動を続けており、SNSで誹謗中傷を行った加害者をめぐる訴訟や、誹謗中傷を根絶する活動に尽力してきた。花さんが亡くなった当初から現在まで、フジテレビの制作姿勢に多くの批判が集まっている。
問題になった「テラハ」は、フジテレビの“お家芸”番組
「テラスハウス」通称「テラハ」は、2012年からスタートした「台本なし」を謳う、シェアハウスに同居する男女7人の恋をめぐる「恋愛リアリティショー」。
ラブワゴンに乗って旅する男女の恋愛模様を描いた「あいのり」の系譜に位置する、いわばフジテレビの「お家芸」的番組だ。
花さんが出演していた「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」は、NetflixやFODでも先行配信され、YouTubeの専門チャンネルでも番宣のための追加映像が配信されていた。
問題となったのは、花さんのリングコスチュームを同居人の小林快さんが誤って乾燥機にかけてしまったこと。これに激怒した花さんが、快さんの被っていたキャップをはたき、その後、同居人のいる前で、同じく同居人ビビさんの制止も聞かず快さんを罵った態度が、ネットによる「炎上騒ぎ」のきっかけとなった。
後日、快さんは「週刊文春」の取材で、花さんが激怒したのも制作側からの指示だったと聞かされ、和解したと語っている。
スタッフからは「ビンタしろ」とまで言われていた花さんだが、さすがにそこまではできなかったという。
同誌の取材の中で快さんは「番組のやらせは常態化していた」と告白。
快さんもスタッフ側から花さんが嫌がるセクハラ行為を強要され、指示にしたがっていたとしている。
そして「SNSでの炎上を狙っていた」と、ヤラセの実態を証言している。
母・響子さんも花さんから「プロレスラーらしくふるまえ」「1のことを100にして盛り上げて欲しい」と指示を受けたと聞いていたという。
今回の提訴に際した発表で、当時、フジテレビ側は花さんや出演者に対して、スケジュールや演出などについて「全て指示・決定に従い、もし違反した場合は高額の賠償金を支払う」という誓約書にサインすることが求められていたとしている。
番組が「台本なし」をウリにしていることから、視聴者には出演者の行為は全て出演者の本心ととられ、批判の対象になりやすかった。
さらに、花さんの「コスチューム事件」は、3回に渡ってYouTubeで追加動画が配信され、番組側が「炎上」を煽っていたことも分かっている。
心を病んだ花さんを放置したフジテレビの「犯罪」
20年3月、Netflixで花さんが快さんを罵倒する場面が配信されると、SNS上で誹謗中傷が殺到。
その時点で、フジテレビは放送を中止し、花さんに対して精神的ケアを行っていれば、痛ましい死は防げたのかもしれない。
しかし、21年3月のBPO(放送倫理・番組向上機構)の報告書によると、フジ側は電話とLINEで花さんとやりとりをしたのみ。
実は、花さんが「テラハ」に出演する以前から、イギリス、フランス、韓国などの海外リアリティショーでも、出演者に対する誹謗中傷事件が起こり、出演者の自死事例が相次いでいた。その事実を知りながら何の対処もしないまま、煽り動画を配信した上、地上波でも同じ映像を流し続けたフジテレビ。
その結果、さらに誹謗中傷の炎が燃え広がり、最悪の結果をもたらしてしまった。
こうした検証がされているにも関わらず、BPO側の「テラハ事件」の見解は、「放送倫理上の問題があった」と認定しながら「人権侵害があったとまでは断定できない」と結論づけた。
事実上、フジテレビの「犯罪」が揉み消されてしまった形となった。
これには、ネット上からも疑問の声が相次いでいる。今回の母・響子さんの提訴がフジの「犯罪」を白日の下に晒すことができるのか注目したい。
「テラハ」だけじゃない、やらせは「ザ・ノンフィクション」でも
テレビ番組のやらせは「テラハ」だけではなく、フジテレビ以外の他局でも頻繁に行われている。
しかし、フジのやらせの質が悪いのは、ドキュメンタリー番組に「やらせ演出」を持ち込むことだろう。
ドキュメンタリー番組で数々の賞に輝いた名物番組「ザ・ノンフィクション」でも、過剰演出があったことが出演者から告発されている。
「週刊女性PRIME」によれば、同番組の「山奥ニート」「マキさんの老後」などの人気シリーズ出演者が、フジの「過剰演出」のためにSNSで痛烈な批判にさらされていると報じた。
花さんのケースと同様、「台本なし」「やらせなし」と謳っているからこそ、番組でマイナスのイメージを視聴者にもたらした場合、批判の矛先は当人に回ってくる。
出演者に対するケアを徹底しなければ、今後も花さんのような犠牲者は増え続けてしまうだろう。
ネット上には、フジテレビと制作会社の「やらせ体質」と、出演者の心のケアを蔑ろにする姿勢、そして誹謗中傷を書き込んで花さんを追い込んだネットユーザーに批判の声が殺到している。
Twitterの反応
本日、
フジテレビと制作会社を
提訴致しました長い間、苦しみ悩みましたが
二度と繰り返してほしくないという想いが強く
闘うことを決めましたこちらで真相究明についての署名ができますhttps://t.co/kIESYlbOkD
花グッズの利益を、裁判費用に充てさせて頂いていますhttps://t.co/ax7iC14Kzd
— 木村響子 (@kimurarock) December 6, 2022
番組作りに対し制作側責任を認めさせる裁判であり、金目的の裁判では無いと俺は思ってる。#木村花#木村響子
【速報】「テラハ問題」木村花さん母、フジテレビなどに約1億4000万円の賠償求め提訴 “台本なし”宣伝で出演者が批判の標的に…「安全に配慮する義務怠った」 pic.twitter.com/SI7rlXQ4cT
— black (@black_black001) December 6, 2022
No.1639
みんなちがってみんないい#1日1花ちゃん #木村花 pic.twitter.com/E05aaQpI4R— いとぅ (@ForzaHana) December 4, 2022
木村花さんのお母様、フジテレビ相手に提訴するとのこと。よく、決意されたと思います。たくさん考えた結果だと思いますが、全力で応援したいです。TV局の演出とそれに煽られた人々による誹謗中傷で奪われた命。TV局と共に、誹謗中傷に加担したTwitter民達も裁かれるべきかと。
— gjdm (@gjdm60639832) December 6, 2022
テレビ番組は木村花さんの本物の人格という大前提でリアリティー番組を放映したけれど、実は台本だったらしい。
視聴者はそのギミック人格を木村花さんの本物の人格だと当然思うから、木村花さんを攻撃する。
リアリティー番組は禁止するべきだよ。自殺者があまりにも多すぎるから。
— 眞葛原雪 (@pririn_) December 6, 2022
最初からこっちをすべきだった。
一般人の誹謗中傷者を叩きに行ってしまったから本質がブレた。
あんな煽る番組を作った側の責任の方が重く感じるが。山里亮太にも当然責任あるだろう。木村花ちゃんがかわいそう。#テラハ問題#フジテレビ提訴 #木村花 #木村響子https://t.co/TjSYRvUiQS— ACT《Six Japan》 (@actionclutch) December 6, 2022
テラスハウスとか観てもいないから、ニュースで読んだ範囲でしか知らないんだけど、木村花さんの件ももちろんテレビを真に受けて誹謗中傷した連中がいちばん悪いわけよ。頭が悪いとしか言えない。
ただ、「やらせ」を事実であるかのように見せるリアリティショーの演出も責任は大きいと思うよ
— あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 (@kikumaco) December 6, 2022
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