12月21日に失効が予定されていたものの、その2日前に米連邦最高裁が暫定的継続の判断を示した移民流入制限措置「タイトル42」。この措置が撤廃された場合、米国社会はどのような影響を受けるのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』で著者の大澤先生が、ワシントンポスト掲載の記事を紹介しつつ詳しく解説しています。
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「タイトル42」が解除される日。深刻な米国の不法移民問題
今回は、このメルマガでずっと追いかけている米国の不法移民問題です。
タイトル42が3日後、12月21日に解除されるのです。
タイトル42とは、77年前に制定された公衆衛生法の条項です。
伝染病を持つ可能性のある国の人のアメリカ入国を阻止することができるというものです。相当に古い法律なのですが、この法律を理由にトランプは2020年3月から不法移民を追い返すように指示していたのです。
それでバイデン政権になってから急増している不法移民の侵入が防がれていた面があります。そのタイトル42がいよいよ解除されます。
以下、ワシントンポスト電子版12月16日版からの抜粋要約です。
「米国控訴裁判所の判決により、国境での強制退去は12月21日に終了する方向」
サリバン連邦地裁判事は禁止令には公衆衛生上の利点がほとんど証明されていないとしてタイトル42を12月21日に終了させる。
訴訟を起こしていた移民の擁護者たちはこの判決に歓呼した。
「タイトル42は公衆衛生法であり、国境管理の手段ではないので、終了しなければならない」と米国自由人権協会の弁護士は言う。
この決定は、トランプ政権が始めたタイトル42が、最高裁が介入しない限り、12月21日に終了することを意味する。
今回の判決は、弁明の機会もなく追放された亡命希望者に国境を完全に開放することを目指す移民擁護派にとって勝利となる。
しかし、国土安全保障省は市や町を圧倒する可能性のある移民の流入を管理するために逼迫している。
解説
このタイトル42は法制度方面からの不法移民流入の大きな壁となっていました。
以前は不法移民が国境で捕まっても、その場で難民申請することによって米国側に釈放される事があったのです(キャッチアンドリリース制度)。彼らが難民申請の審査を受けに裁判所に出頭することはほぼなく、そのまま米国内に隠れてしまいます。
このタイトル42は難民申請を許さずにその場でコロナの危険性を理由に追い返してしまうのです。トランプらしい強引な手法です。
タイトル42が廃止されて正式な国外追放の審理となると移民裁判所で数カ月から数年かかることがあり、いったん移民が国内に入国すると、当局が彼らを見つけて排除することは困難になるのです。
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引き続き記事を見ましょう。
今週、南部の国境沿いでは、タイトル42が解除されるまで待って渡ろうとする移民がいる一方で、すぐに渡ろうとする移民もいて、混乱が生じた。
移民たちは今週、凍てつくような気温の中でリオ・グランデ川を渡ろうと列をなし、タイトル42がまだ実施されているにもかかわらず、米国への入国が許可されることを望んでいる。
この政策がまもなく終了すると聞いていたので、より希望を持っていた人もいたが、多くはその仕組みがよく分からなかった。
ホンジュラスで雑貨店を営むマーサ・エルナンデスさんは、9カ月前にギャングに金をせびられ、家族とともにメキシコの避難所に逃げ込んだという。
タイトル42で追放される可能性があるので合法的に渡航する方法を模索しているという。エルナンデスさんは、「私たちは正しい方法で物事を進めたいから待ったのです」と言っています。
ホワイトハウスのハサン報道官は、電子メールで、「42条の解除は国境が開放されたことを意味しない」と述べ、政府は「安全で秩序ある、人道的な方法」で移民法を執行するつもりである、と語った。
解説
タイトル42が解除されるからと言って、移民希望者が合法的に米国に入れるようになるわけではありません。
しかし上記のエルナンデスさんのように「タイトル42が解除される=米国国境が開放される」と勘違いしている人も多数います。
そして不法移民に対してバイデン大統領とカマラ副大統領は厳しい事を言えない政治的な状況にあります。
不法移民の人権に対して、過敏に反応して大騒ぎする極左の人がいるからです。
不法移民の流入の問題は人々の心を大きく動かします。投票行動に大きく影響するのです。
不法移民問題の推移を見ずに米国の政治状況を理解することは不可能です。引き続きウオッチしていきます。
PS
先日にある勉強会で一緒になった4か国語を話すインテリの研究者。
「米国民主党が『不法移民対策をしっかりとする』と発表して極左グループと決別すれば、楽に選挙に勝てるだろう。なぜそうしないのだろう?」と言っていました。
意気投合しました。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月18日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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