テキサス州知事ブチ切れ。日本メディアが伝えぬ米国の政策論争とは

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昨年度、メキシコ国境から入国し身柄を拘束された不法越境者数が過去最高となるなど、アメリカで深刻さを増している不法移民問題。しかしこの難題を巡る米国内の動きについて、日本で報道されることはほとんどありません。アメリカにおいて当問題はどのように議論され、国民はどう受け止めているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、テキサス州知事のとある行動を取り上げたニュースを紹介するとともに、不法移民の問題について理解しない限り、アメリカ人の政権に対する不満等は決して見えてこないと指摘。そのために重要となる移民問題に関する2つのキーワードを解説しています。

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ワシントンに不法移民を送り込むテキサス州知事

米国テキサス州のアボット知事、急増する不法移民の流入に耐えかねて、その不法移民をバイデン大統領のいるワシントンDCにバスで送り込んでいます。

「不法移民に大量流入される州の立場になって政策を考えろ」という事です。

以下、FOXニュースのホームページ、5月13、14日の記事からの抜粋です。

テキサス州アボット知事は900人以上の不法移民をワシントンDCにバスで移送した。連邦議員の注目を集めバイデン大統領に国境政策を変えさせるためである。

 

知事は、「バイデン大統領が国境で移民を追い返すことを認めているトランプ時代の公衆衛生命令タイトル42を廃止する」というニュースを受けて、不法移民のバス輸送作戦を決定したのである。

 

3月だけで米国とメキシコの国境には22万1,000人の移民がいた。タイトル42が解除されればその数は倍増すると予想される。

 

バイデン政権は、毎日最大1万8,000人の不法移民と国境で遭遇するという最悪のケースを想定して計画を立てているという。

解説

以前にも紹介しましたが「タイトル42」とは70年以上前に制定された公衆衛生法の条項です。伝染病を持つ可能性のある国の人のアメリカ入国を阻止することができるというものです。

【関連】日本のメディアがちっとも報じない米国の闇「タイトル42」とは何か?

古い法律なのですが、この法律を理由にトランプは不法移民を追い返すように指示していたのです。それで不法移民の流入が防がれていた面が相当にあるのですが、それが5月23日をもって廃止されるのです。

最悪のケースで日に1万8,000人というと年間200日と計算して360万人の不法移民です。

で、「何とかしろ」とテキサス州知事が強引にバイデン政権に訴えているという構図です。多くの共和党およびテキサス州の人が支持しています。

実際、不法移民の問題は人の心を大きく動かします。政治を動かす大きな力になるのです。

しかしながら、日本の報道は米国の不法移民問題をまともに取り上げていません。

トランプ政権時代とその前後1年間を含めた計6年間で、「キャッチ・アンド・リリース」「サンクチュアリ・シティー」といったトランプ大統領主張の代表的なキーワードさえしっかりと解説している日本のTV番組を見たことがありません。

毎日のようにトランプ大統領を報道しながらです。陰謀論などを説明して「トランプを支持している米国人はこういった陰謀論を信じているのです」などと言い続けたのです。

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