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Handsome driver at the wheel of a truck at work.

会社から現場までの「移動時間」は労働になる?賃金が発生する条件とは

会社から現場への移動時間は労働に該当するのでしょうか? そんな問いに応えるのは無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者である社会保険労務士の飯田弘和さん。 飯田さんはわかりやすく事例を紹介し、労働時間と賃金の支払いについて解説しています。

会社から現場までの「移動時間」は労働時間に該当するのか?

ある事業主様から受けたご相談です。こちらの会社は、建設現場から出る産業廃棄物を自社のトラックに積み込み、廃棄場まで運んで廃棄するといった業務を行っています。労働者は、朝、会社から自社トラックを運転して現場に向かい、そこで産廃を積み込みます。ご相談とは、会社から現場までの移動時間が労働時間に該当するかというもの(出勤時間と考えることは可能かというご質問)。

結論を先に申し上げると、今回のケースの場合、会社から現場までの移動時間は労働時間に当たります。会社から現場までのトラックの移動は、“産業廃棄物のトラックへの積み込み、および廃棄場までの運搬・廃棄”というメイン業務のために必要な準備行為であると考えられます。そして、メイン業務に必要な準備にかかった時間は労働時間と考えられます。この“会社から現場へのトラックの移動”は、業務上、絶対に必要な行為であり、そうであれば労働時間として、この移動時間について賃金の支払い義務が生じます。

また、少し別の観点からも、この移動時間が労働時間に当たるという事が言えます。こちらの会社では、朝、会社に来ることが義務付けられているので、会社に来た時点で、“出社”であり、その時から事業主の指揮命令下に入ったと考えられます。すなわち、業務が開始されたと考えられます。そうすると、会社から現場までの移動時間は、“業務中の事業所間の移動”と考えられるため、その移動時間は労働時間という事になります。

これは、たとえば訪問介護事業などで、Aさん宅からBさん宅への移動についても同様に考えます。この移動時間については、労働時間としなければなりません。ただし、(その日の1件目の訪問先として、)自宅から直行でAさん宅に向かう場合には、その移動時間はAさん宅への出勤時間と考えられるため、必ずしも賃金支払い義務は生じません(この場合には、Aさん宅で業務を始めた時点で、事業主の指揮命令下に入ったと考えられます)。

ですから、ご相談先の会社でも、労働者の自宅から現場への直行であり、しかも、移動に使用する車両を業務には使用しない(単なる移動手段)といったことであれば、自宅から現場までの移動時間は“出勤時間”と考えられ、賃金を支払う必要はないという事になります。でもそれは、こちらの会社さんには難しいでしょうから、やはり、今回のご相談では、移動時間については労働時間として扱う必要があります。

※ 参考までに…

事業主の指揮命令下に入った後でも、労働者が自由に使える時間については休憩時間となります。たとえば、始業時刻の10分前の出社を義務付けている会社の場合、始業10分前に事業主の指揮命令下に入った(業務が開始された)と考えます。

ただし、始業時刻までの間、何ら業務指示等がなく、労働者が自由に過ごせるのであれば、その10分間は労働時間とはいえず、休憩時間と考えられます。ただ、そうであれば、10分前出社を義務付ける意味はあまりないでしょうから、極力、このようなことは避けた方が良いでしょう。労働者は、けっこう、不満に感じていることが多いですよ(ときどき、労働者からこのようなご相談を受けます)。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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