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なぜ岸田首相「異次元の少子化対策」はここまで厳しい批判の声があがるのか?

岸田首相が「異次元の少子化対策」と銘打ち、育児休業中のリスキリングを支援する考えを表明しました。それに対し、批判の声が相次いでいます。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、この「異次元の少子化対策」について分析しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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岸田首相の「異次元」とはどんな異次元?

岸田首相が育児休業中のリスキリングを支援する考えを表明したことに、批判が相次ぎました。SNSでは「育児の大変さがわかってない!」などと怒りの声が上がり、識者たちもこぞって批判。

30日の予算委では、自民党の鈴木貴子議員が、育休を取得した男性の3分の1は育休中の家事・育児が2時間以下だとする調査結果を紹介し、「誤った育休の認識を持つ人たちこそ学び直しが必要」と苦言を呈する場面も。

一方の岸田首相は、「私も3人の子の親。子育てが大きな負担だと目の当たりにしたし経験もした」とした上で、「本人が学び直しを希望した場合には、後押しできる環境は大事。指摘は謙虚に受け止め、丁寧に、誤解のないように発信していきたい」と述べるなど、弁明に追われました。

・・・なんだかなぁ、って感じなんですよね。岸田首相もそれを責め立てる議員たちも。だって言葉狩りをしたところで、弁解するのは目に見えてるわけで。「あんたは何を言ってるんだ。なんでもかんでもリスキリングリスキリングって。子育て、舐めんなよ!それが異次元なのかい?!」と突っ込みたくなる気持ちはわかるし、全くもってその通りだとは思います。でも、相手が答えに困るような質問をしてほしいし、なんでもかんでも「誤解」のせいにしないで、前向きな論戦をしてほしいです。

そもそも、「仕事を離れる」ことに不安を抱える人たちは決して少なくありません。
はい、決して少なくない。かなり、います。
今までがんばって働いてきた。それなりの結果も出してきた。子供も欲しいし、子育てもちゃんとやりたい。だからこその「不安」をどう考えるか? これは極めて大切な視点なのです。

実際、育児休暇を充実させている企業のリーダーたちが、頭を悩ませているのが、「キャリア中断=育児休暇中」の女性たちの教育と、その後のキャリアを意識した制度をどのように整備していくか? という問題です。

つまり、「キャリア中断」より「キャリア帯同」が問題だと。

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時短などの制度を使って、早めに復職する女性たちもいます。私たちの世代が若い時は、出産ギリギリまで働き、育休もさっさと切り上げ、仕事に戻ることを余儀なくされたので、時短やリモート勤務ができるだけでも、素晴らしいなぁ、時代は変わったなぁ、とう羨ましく思う人たちはたくさんいます。

しかし、キャリア帯同、すなわち「育児しながらも働き続けられる制度」があったら、「私だったらどうしたかなぁ」「1人目は休んでも、2人目は働き続けたかも」という意見を、これまで度々聞いてきました。

その他にも、
「復帰したら『大変だろうから』と閑職に回された。周りが気遣ってくれてるのがわかるだけに、いやとも言えない」
「私はもっとバリバリやりたいのに、周りがさせてくれない」
といった意見も。

休職や時短等の休みを取る制度だけでなく、どうやったら働き続けられるかという制度を考る。これを実現するには企業単位だけではなく、社会としての仕組みも必要だと思うのです。

だからといって「リスキリング」という新しい言葉を多用するのは、あまり賢いやり方とは思えないし、キャリア帯同=学び直しと決めつけるのも、ちょっと違う。

女性の問題だけでなく、会社の問題であり、男性の問題でもあるし、それは社会の全体の問題です。

例えば、母親と父親が「平等に育児休暇を取得できる制度」を実現するには、どうすればいいのか?

育児や掃除、料理などの家事の負担が母親に集中しないため、父親の家事参加が当たり前の社会になるには、何が必要か?

育休だろうと、介護だろうと、留学だろうと、なんだろうと、社員が長期休暇を取れるにはどうしたらいいのか?

「誰かが数ヶ月休んでも仕事が回るような体制」を、どうすれば実現できるか?

これらはすべて「やらなければならない」ことです。今の時代を生きる「私」たちが幸せになるために必要なことです。

個人単位でもなく、会社単位でもなく、社会も巻き込んで議論し、法を整備し、体制を整え、社会の価値観を変えていく。

これが本当の「異次元の少子化対策」ではないでしょうか。

小手先だけの政策は意味がないことは、エンジェルプランが作られた1990年代からわかっているのですから。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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