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読売のスクープで全部パーに。岸田首相「キーウ電撃訪問」幻の全日程

2月20日、まさに「電撃的」にキーウを訪れたバイデン大統領。G7の中で首脳がウクライナ入りしていないのは日本だけとなりましたが、ジャーナリストの伊東森さんによると、開戦から1年の節目となる2月24日に岸田首相のキーウ訪問が計画されていたといいます。今回伊東さんは自身のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』で、頓挫してしまったその全行程を紹介。さらに米中露がこのタイミングで見せた動きを分析・解説しています。

バイデン大統領 ウクライナを電撃訪問 岸田首相も24日訪問の予定だった?

バイデン大統領は20日、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナの首都キーウを電撃訪問、ゼレンスキー大統領と会談した。大統領のウクライナ訪問は、昨年の戦争開始以来、初めて。

バイデン大統領は、

「ウクライナは弱く、欧米諸国は分断されていると考えていると考えたプーチン(ロシア大統領)は完全に誤った」(*1)

と欧米の結束を改めて世界にアピール。5億ドル(約670億円)規模の追加の軍事支援を行うと表明。

24日でロシアの侵攻開始から1年になることを見込み、断続的に攻撃を受けるキーウへ大統領自ら訪問することで、“支援疲れ”とされる各国の支援と結束を再び訴えた狙いがあるとみられる。

訪問は、異例の極秘ミッションとして進められた。大統領の外遊は本来、専用車からヘリコプターまで全て空輸して徹底した安全対策が取られる。しかし今回は、医療チームや警備担当者ら少人数が同行(*2)。

また不測の事態を回避するため、ロシアに事前通知していた。

なおバイデン大統領は、ゼレンスキー大統領との共同記者会見で、高機動ロケット砲システム「ハイマース」や携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」を供与すると表明した。

目次

日本 本来は24日に首相訪問の予定だったが…

バイデン大統領がウクライナへ訪問したことで、ロシアによる軍事侵攻開始以降、首脳がウクライナ入りしていない国は、G7(先進7カ国)で日本だけとなった。

実は、読売新聞は1月22日付の朝刊で、スクープとして、

「首相、キーウ訪問検討─ゼレンスキー氏会談へ…戦況見極め最終判断」

と報道していた。歳川隆雄(*3)によれば、首相官邸が密かに進めていた計画は次のようなものであった。

2月24日金曜日の未明、政府専用機で東京・羽田空港を発ち、15時間のフライトでポーランド東南部のジェシュフ・ジャシオンカ空港に到着。

そして陸路2時間かけてウクライナとの国境に位置するプシェミシル駅に向かい、同地から列車を利用して10時間で首都キーウに到着する。往路の所要時間は約30時間。

市内の大統領府でゼレンスキー氏と会談、その後ロシア軍による「大虐殺」とされた民間人殺害現場のキーウ近郊ブチャなどを視察してその日のうちにとんぼ返りするというもの

しかしながら、結果、読売新聞のスクープにより計画は頓挫した。

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ロシア プーチン大統領が年次報告演説

プーチン大統領は21日、モスクワで連邦義議会に対する年次報告の演説を行う。その中で、

「ロシアに戦場で勝つことはできない」(*4)

と述べ、ウクライナ侵攻を継続し、改めて勝利を目指すとした。

プーチン大統領は、ウクライナ侵攻について、ロシアは平和的手段でウクライナ危機の解決を試みてきたが米欧などに無視された(*5)と語り、戦争を正当化。戦争を始めたのは米欧側であると指摘し、

「わが国への脅威を取り除き安全を確保するため必要な課題を解決していく」(*6)

と述べる。

さらにアメリカとロシアとの間に唯一残されていた核軍縮合意である新START(新戦略兵器削減条約)の履行を停止すると表明。脱退は否定したものの、条約締結時と国際環境が激変したとし、

「全ては米国の責任だ」(*7)

とアメリカを強く非難する。

ロシアはウクライナに軍事侵攻する欧米に強く反発、これまで核兵器の使用も辞さない構えをたびたび示してきた。

ロシアによる新STARTの一方的な履行の停止で、戦略核兵器をめぐる世界の情勢は、より深刻さを増すことになる。

アメリカのブリンケン国防長官は21日、新STARTの履行停止表明について、

「極めて遺憾で無責任だ」(*8)

と非難した。

中国 習近平国家主席、ロシア訪問? 武器供与の動きも

中国の習近平国家主席は、プーチン大統領との首脳会談に臨むため、数ヶ月以内のモスクワへ訪問する準備を進めていると、米紙ウォールストリート・ジャーナルが報道。

同紙によれば、中国当局がロシアとウクライナの停戦に向け積極的な役割を果たしたい意向があるという。

他方で、ブリンケン米国防長官は19日に放映ささた米NBCテレビの番組で、中国が殺傷能力のある武器をロシアに提供する検討を進めていると指摘した。

これに対し、ゼレンスキー大統領は19日、武器供与は重大な結果を招くとし、中国に自制を求める(*9)。ゼレンスキー大統領は、イタリアのメディアに対し、ロシアの側に立てば、中国は「中立ではいられなくなる」と強調し、平和の実現に向け、ウクライナを支持するべきと主張した。

一方、遠藤誉は、ブリンケン国防長官の「中国がロシアに武器提供」発言は、中国の和平案にゼレンスキー大統領が乗らないようにするため(*10)と指摘する。

■引用・参考文献

(*1)「米大統領キーウ電撃訪問」キーウ共同=西日本新聞 2023年2月21日付朝刊 1項

(*2)「読み解く バイデン氏、戦時下キーウ訪問」西日本新聞 2023年2月21日付朝刊 3項

(*3)歳川隆雄「岸田首相、ウクライナ電撃訪問断念か…読売新聞スクープへの『情報漏洩』は何故起きたのか」現代ビジネス 2023年2月18日

(*4)「『侵攻継続し勝利』強調」共同=西日本新聞 2023年2月22日付朝刊 1項

(*5)共同 2023年2月22日

(*6)共同 2023年2月22日

(*7)共同 2023年2月22日

(*8)共同 2023年2月22日

(*9)「ロシアに武器 中国検討か」キーウ共同=西日本新聞 2023年2月21日付朝刊 5項

(10)遠藤誉「ブリンケンの『中国がロシアに武器提供』発言は、中国の和平案にゼレンスキーが乗らないようにするため」Yahoo!ニュース 2023年2月22日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年2月26日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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