コロナで膨れ上がってしまった借入金。返済できない人々の救済法については、なかなか ”これだ”というものが見つかっていませんでした。しかし、メルマガ『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者で事業再生コンサルタント、作家、CTP認定事業再生士の顔を持つ吉田猫次郎さんは、今月頭に発表された、新しくなった「資本性劣後ローン」が使えると、イチ推しする理由を紹介しています。
コロナ融資の借り換えがしやすくなった
ゼロゼロ融資など、いわゆるコロナで膨れ上がった借入金の返済に悩み、据置期間の延長を銀行にお願いしたり、1月から始まったゼロゼロ融資の借換保証を申し込んだりしている会社は、かなり多いと思います。
しかし、1月から銀行界隈でよく言われてきたことですが、ゼロゼロ融資の借換保証は、保証協会の審査が厳しく、落とされやすい傾向にありました。また、その他の融資についても、これといった救済策がなかなか見つからないのが実情でした。(但しリスケは除く)
そこで出てきたのが、3月7日の経済産業省プレスリリースです。
● 年度末における事業者に対する金融の円滑化等について要請しました
要約すると、次のような内容になります。
1.金融機関への要請
・借り換えの相談には親身になって応じてあげること
・延長された真水融資も積極的に受けてあげること
・売上減少要件の緩和など、条件が緩くなった制度への説明
・資本性劣後ローンの活用促進(借換、要件緩和)
2.コロナ資金繰り支援継続プログラム
・公庫のスーパー低利融資を9月まで延長
・公庫の資本性劣後ローンも9月末まで延長(民間の協調支援を促す為に)
・保証協会の創業者向け融資に、経営者保証のいらない新制度が誕生
・コロナ資金繰り支援継続プログラムの具体的内容はこちら参照
いかがでしょうか。
ちなみに、「資本性劣後ローン」はこれまで審査が厳しかった上に、利用条件も独特なものがあり、使える会社はごく一部に限られていました。
ところが、コロナ版の資本性ローンになってから随分と使いやすくなり、さらには、今回のマイナーチェンジでもっと使いやすくなりました。以下、Before After的に、その違いを箇条書きにしてみます。
この記事の著者・吉田猫次郎さんのメルマガ
【2011~コロナ前の資本性ローン】
・日本政策金融公庫のみ
・上限額は、国民部門で3,600万、中小部門で3億円
・会計上は長期借入金だが、金融検査マニュアル上は「自己資本とみなすことができる」。つまり、資本金を増資したように自己資本比率が上がる(あくまでも「みなし自己資本」ではあるが)
・みなし自己資本比率が上がるので、民間金融機関からの評価もハネ上がり、民間金融機関からの協調支援が受けやすくなる(呼び水効果)
・完全な無担保、無保証。代表者の個人保証もいらない
・利率は年に1度の変動金利。利益率が低いと年0.4%になり、利益率が上がると最大6%以上になる
・返済は7年後、10年後、15年後が選べる。期日一括償還
・独自の書式で、経営改善計画書の策定が必要
・民間の協調支援も絶対必要なので、審査段階で、それの確認を求められる(民間は資本性ローンをあまり知らないので、なかなか協調を得られなかった)
・もし会社が倒産して法的整理した場合、他の債務よりも返済の優先順位が劣後される(後回しにされる)
【2020~2023 コロナ版の資本性劣後ローン】
・日本政策金融公庫だけでなく、商工中金も同一商品を取り扱い
・上限額が倍増。国民で7,200万円、中小で7億2,000万円
・利率もグッと下がり、最大で2.95%に
・返済年数も、5年1ヶ月、7年、10年、15年、20年が選択可能に
・但し、民間金融機関の協調支援は絶対に必要で、ここでつまずく申請者が非常に多かった印象
・それ以外は、おおむねコロナ前と同様
【2023年春~ マイナーチェンジ後】
・利率は0.5%か2.95%の2種類。やはり年に1回の変動で、赤字決算なら0.5%、黒字なら2.6%。最初の3年間は0.5%でよい。
・売上減少要件についての記述が見当たらない(?)
・民間金融機関の協調支援が無くても申請可能となった(これが一番大きい)但し、協調支援ナシで申し込む場合は、認定支援機関の支援を受けて事業計画を策定する必要あり
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