糖尿病予防やメタボ対策に効果大として、多くの方が実践している糖質制限食。提唱者で糖尿病専門医の江部康二先生によると、そのモデルとなっているのは700万年前の人々の食生活とのとこですが、今よりもずっと平均寿命が短かった彼らの食を手本にすることに「危険」はないのでしょうか。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では江部先生自らが、そんな疑問に対して丁寧にアンサー。危険どころかむしろ平均寿命が伸びる可能性が高いと結論付けています。
昔は短命?糖質制限食と平均寿命
糖質制限食は、アバウトに言えば、700万年間の狩猟・採集時代のご先祖の食生活が一つのモデルです。
しかし狩猟・採集時代のご先祖の平均寿命は、農耕開始以降の寿命より短いのではないかという問題があります。
つまり、糖質制限食時代のほうが、農耕時代(糖質時代)より平均寿命が短いということですね。
あと、簡単に言えば、農耕時代に限っても「昔は短命」という事実があります。
平均寿命に関しては、「食糧事情」「周産期死亡」「飲料水と感染症」「環境」などが大きく関与していますので、以下考察してみます。
昔にもいろいろありますが、この「昔は短命」には食生活もかなり関係していると思います。
飢餓で亡くなった時代もありますから、食糧事情の安定化が平均寿命に大きく関与しています。
例えば日本の戦後の平均寿命の増加には、食料事情の安定化の寄与が大きいです。
ついで、医療の発達も平均寿命増加の大きな要因です。
0才児の平均余命が「平均寿命」です。
平均寿命でポイントとなるのが乳幼児死亡率です。
例えば江戸時代の平均寿命は30~40歳と短いのですが、生まれた子どもの半分以上が5歳までに死亡していたようです。
出産時の死亡や周産期の死亡、その後は感染症での死亡もあります。
麻疹や天然痘、コレラやインフルエンザ、そして脚気でも多くの人が亡くなっています。
飢饉や火事、台風、水害など災害でも多くの人が亡くなっています。
江戸時代は出産で死亡する女性もかなり多かったとされています。
江戸時代も含め、昔は赤ちゃんや乳幼児の死亡率、そして出産時の死亡率が高いので、必然的に、平均寿命は短くなります。
実は、明治時代までは、乳幼児死亡率と出産時の赤ちゃんの死亡率はかなり高かったのです。
赤ちゃんや乳幼児死亡、出産で死亡する女性は医療の発展で激減しました。
江戸、明治までは、医療が未発達だったので、赤ちゃんの死亡や出産時に死亡する女性は、かなり多かったのです。
平成の時代に、赤ちゃんが亡くなるとか、出産時に母親が亡くなることは極めてまれなできごとなので、大変な事態なのですが、江戸、明治では日常的な出来事だったのです。
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三つ目は、上下水道の発達です。
これにより、伝染性の感染症などによる死亡が大幅に減少しました。
しかし現在でも世界で6億人以上の人々が、安心して飲める水がなく、川、湖、沼、整備されていない井戸などの水を飲料水とせざるを得ない状況にあります。
その半数近くが、サハラ以南のアフリカ諸国に集中していますが、これらの地域では、飲料水からの感染症が多発しています。
四つ目に環境があります。
クレバスや滝に落ちる、氷期で寒さで凍える、肉食獣に食べられる、火山の爆発で地域全体が低温になる、などです。
6,600万年前に巨大隕石が今のメキシコ・ユカタン半島付近に衝突し、恐竜を始めとして地球上の動物のほとんどが滅亡したことがありますが、これは人類誕生以前ですね。
このように考察してくると、現代のように食糧事情、上下水道、医療水準、環境が安定している中での糖質制限食なら、動脈硬化や西洋型がんの予防が期待でき、血流・代謝が良くなり免疫力も増強で肺炎予防効果もあり、平均寿命が延びる可能性が高いのです。
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