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「悪をくじく」から「弱きを助ける」に。強すぎる正義感の使い方

列への割り込みや優先席占拠など、他人のモラルに欠けた行動がどうにも許せずキツい口調で注意してしまう。そのためトラブルになることもあるという40代女性の相談に答えるのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤さん。「正義感」が強いのは悪いことではないので、少しだけ視野を広げることをアドバイス。「悪をやり込める」のではなく、「困っている人を助ける」方向に使うことを提案しています。

ちょっと御相談がありまして:正義感が暴走する

皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。

Question

40代女性C子です。夫と小学3年生の娘がいます。子どもの頃から正義感が強かったのですが、最近になってそれが自分でも度を越しているのではないかと思うようになりました。

例えば駅のトイレやスーパーのレジ前などで割り込みをする人や、目の前にお年寄りがいるのに優先席に座っている若い人がいたりすると、頭にカッと血が上り、注意をしたくてたまらなくなります。時には相手にきつい口調で注意してしまうこともあります。

以前、そんなシチュエーションで言い争いになり、ちょっとしたトラブルになってしまい、その時一緒にいた夫と娘に「怖い」と言われてしまいました。夫には、「そんなものの言い方してたら、いつか刺されるよ。心配だよ」とも言われました。

自分でも、最近ちょっと行き過ぎている自覚はあるのですが、間違っていることを許すことができないのです。どうしたらいいのでしょうか。

【永藤より愛をこめて】

そうですか。「正義感が強い」のは決して悪いことではないですよね。むしろ、そういう人がいないと世の中に悪がはびこってしまう、ズルしたもん勝ちみたいな世界になってしまう。でも、「正義感が強『すぎる』」ことにC子さんは悩まれている。ご家族にも心配を掛けてしまっている。これは何か解決策を考えた方がよさそうです。

ひとつ気になったのが、例に出されていたシチュエーションです。もちろん、駅のトイレで割り込みされたりしたら腹も立つでしょう。「みんな並んでいるんだから、あなたもちゃんと並びなさいよ!!」と言いたくなるのもわからなくもない。

でもね、もしその割り込みした人が、めっっちゃくちゃ切羽詰まった状況だとしたら?C子さんは、今までそんなOPP…おなかピーピー状態になったこととか、「毎月やってくる面倒なあいつが、思いもしない日に突然襲い掛かってきた!」という経験はないでしょうか?

私はあります。「ずびばぜぇん・・・お願いだからトイレ先に入らせてくださぁい(号泣)」これすら口に出すこともつらい、ということだってあるのです。そして優先席に座っている若者が、ド貧血で立っていられない人、とか、外からは見えないけれど身体の不具合を抱えているかもしれない、ということだってゼロではないのです。

「そんな風には見えなかった。ふてぶてしくスマホをいじっていた」

具合が悪くて優先席に座っている人が、常に具合悪いアピールをし続けなければいけないわけでもないですよね。スマホで病院調べていたかもしれないし。

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何が言いたいかというと、C子さんに見えている「間違っていること」「許せないこと」にも、いろいろな側面がある可能性だってあるんじゃないかな、ということです。ご自身が見た一現象だけで「これは許せない!」と判断するのは、少しばかり視野が狭いのではないかな、ということです。

なにも正義感を出すな、ひっこめろと言っているわけではありません。でも、視野を広げたうえで、使う場面として、「あなたは間違っているから許しません!」の方向ではなく、「明らかに困っている人がいたらその人を助ける」の方向で発揮したらよいのではないかな、と思うのです。

正義の味方のママはカッコいいはずなんだけど、「悪をやっつける」の「悪」が、ホントは「悪」じゃなかったとしたら、とてつもなくカッコ悪いでしょ?

だとしたら、「弱きを助ける」に全力を傾ける、という建設的な使い方をしてみてはいかがでしょうか?ご家族も、そんなC子さんを誇りに思ってくれると思いますよ。

あと、「自分がきつい口調で正義感を振りかざす『目的』は何か」も一度考えてみるのもいいかもしれません。それがわかると、その行動に自主的にブレーキがかけられるんじゃないかな。

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image by: Shutterstock.com

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有限会社ヒューマン・ギルド 取締役研修部長 公認心理師(登録番号: 29160号) 。日本アドラー・カウンセラー協会認定シニア・アドラー・カウンセラー。日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメント・ファシリテーター 平成元年 三菱電機株式会社 入社。その後、ビジネス誌編集、語学専門学校専任教師など、20年以上にわたるビジネス経験を経て、自身が働く中で壁に当たった際に出会ったアドラー心理学を修得。 現在、日本におけるアドラー心理学の一大拠点であるヒューマン・ギルドにて、アドラー心理学研修講師(企業・自治体、教育機関、個人等)、カウンセリング、書籍執筆などを担当。

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【著者】 永藤かおる 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日

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