MAG2 NEWS MENU

明らかな“オカルト”「人為的地球温暖化論」はなぜ広がったのか

台風の巨大化や大雨の頻発などの異常気象は、地球温暖化の影響とされ、温暖化の原因を人間の活動によるものとする説も広く信じられています。この「人為的地球温暖化論」こそが政治的プロパガンダで、20世紀後半以降最悪の“オカルト”であると声を大にするのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、「人為的地球温暖化論」が政治的に利用されるようになった経緯を振り返り、すでに事実を無視して手放せないものになってしまった現状と、ウソを隠す動きがあることを明らかにしています。

人為的地球温暖化という最悪・最強の現代版オカルト

20世紀後半から現在に至るまでの最悪の現代版オカルトは、人為的地球温暖化論であることは間違いない。CO2の排出によって起こる人為的地球温暖化が、人類の存亡を左右する危機をもたらすという言説は、他の現代版オカルトと同じ針小棒大な与太話なのだけれども、権力とマスコミの大々的な宣伝により、多くの無知な人々は、人為的地球温暖化を絶対の真理と信じ込まされているようだ。

しかし、科学的エビデンスは人為的地球温暖化論が怪しげな説であることを示している。例えば、渡辺正は膨大なデータを基にCO2元凶説を論駁している。『「地球温暖化」狂騒曲 社会を壊す空騒ぎ』(丸善出版、2018)あるいは『「気候変動・脱炭素」14のウソ』(丸善出版、2022)などを参照されたい。

私も『環境問題のウソ』(ちくまプリマ─新書、2006)、『新しい環境問題の教科書』(新潮文庫、2010)、『ほんとうの環境白書』(角川学芸出版、2013)、『環境問題の嘘 令和版』(MdN新書、2020)、『SDGsの大嘘』(宝島社新書、2022)、『専門家の大罪 ウソの情報が蔓延する日本の病巣』(扶桑社新書、2022)などで、繰り返し、人為的地球温暖化論のいかがわしさを公表しているが、衆寡敵せず、人為的地球温暖化を信じているオカルト信者の心には届かない。

人為的温暖化論は科学的エビデンスを捻じ曲げて作った砂上の楼閣で、事の最初からして、科学というより政治的プロパガンダであった。1960年代後半から1980年頃まで、気候学者は地球寒冷化を警告していた。日本では気象学者の根本順吉が1973年に『氷河期に向かう地球』を出版して、俄かに寒冷化の恐怖が人口に膾炙して、1980年代初頭まで、20冊くらいの寒冷化警告本が出版されている。

歴史的に見ても、温暖化は豊作をもたらし、寒冷化は飢饉を引き起こすので、地球寒冷化が恐ろしいことは間違いない。実際、1940年から1970年の30年間に地球の温度は0.2℃下がっている。しかし、1970年から地球の温度は反転して2000年まで上昇を続けた。付言すれば2000年以降、地球の温度は余り変わっていない。

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

初月無料で読む

1980年代に入り地球の温度の上昇が顕著になるに及び、気候学者は一転して、寒冷化恐怖論から、温暖化恐怖論に鞍替えして、これに原発を推進したい政治勢力が呼応して、政治的・経済的マジョリティは、一挙に人為的地球温暖化論になびいていった。

大きな転機となったのは、1988年6月23日に米国上院の公聴会で、米国航空宇宙局のジェイムズ・ハンセンが『最近の異常気象、とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%正しい』と証言したことだ。まともな科学者なら、99%正しいと発言した時点で信用できないと思うけれども、1986年4月26日に起きたチェルノブイリの原発事故で、原発の推進がままならなくなっていた英国の首相のサッチャーは、いち早くこの言説に飛び乗ったのである。

公聴会の開催日は、過去の気象から最高気温が記録されそうな日を選び、当日は委員会の冷房が切られていて、猛暑を印象付けようとしたようだ。事の最初から怪しいのだ。この年の8月には早くもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立されたが、サッチャーの強い後押しがなければこんなにも早く設立されなかっただろう。

IPCCは、CO2を排出して地球温暖化の恐怖に晒されるくらいなら、CO2を排出しない原発を推進した方が、人類の未来にとってベターであるとの政治的プロパガンダのために設立されたわけだ。もっとも近年は、原発よりも再エネを推進したいEUの意向を反映して、原発の代わりに再エネでカーボンニュートラルを目指せといった論調になっているけれどね。

サッチャーは1989年11月にニューヨークで開かれた国連総会のスピーチで、CO2を削減して人為的地球温暖化を阻止すべきだと主張した。その心は原発を推進したい。IPCCは、だから原発廃止に熱心ではないし、地球の温度変動はCO2より自然要因のほうが大きいというエビデンスが沢山出てきても、報告書ではそのてのエビデンスはすべてネグレクトされるようになっているのだ。

IPCCは学会のような環境科学者の中立的な団体ではなく、政治的なバイアスがかかった、人為的温暖化原理教ともいうべき宗教団体だといった方が事実に近い。

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

初月無料で読む

サッチャーの偉かったところは、2003年頃から人的温暖化懐疑論者に転向して、欧州で次々に導入される「高コストで経済的ダメージの大きいCO2抑制策は愚策だ」と嘆くようになったことだ。サッチャーは、「地球寒冷化のほうが地球温暖化よりもはるかに害が大きく、科学が歪曲され、反資本主義、左翼政治アジェンダに使われることは、人類の進歩と繁栄にとって深刻な脅威である」と考えていたという。

基本的にこの認識は正しいと思うが、一つだけ異論をはさむと、この頃から、人為的温暖化は資本システムに組み込まれ始め、環境ビジネスで儲けようとする企業や、環境に優しいと標榜する政策を掲げて、選挙の票を稼ぐ政治家にとっては、なくてはならないアイテムになったのである。科学的にはどんなにいかがわしくとも、グローバル・キャピタリズムにとってすら、もはや手放すことが出来なくなってしまったのだ。

日本ではあまり取り上げられなかったが、クライメートゲート事件(2009年、英国イーストアングリア大学の気候研究ユニットのコンピュータから大量のメールを含み文書が流出して、IPCCに大きく関与した気候学者たちの捏造が明るみに出た事件)は、IPCCに集っている気候学者たちが、データを細工して、インチキな「ホッケースティック」グラフ(20世紀後半になって地球の気温が急激に上昇したように見せかけるグラフ)を作ったことを白日の下に晒した。(一部抜粋)

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

池田清彦この著者の記事一覧

このメルマガを読めば、マスメディアの報道のウラに潜む、世間のからくりがわかります。というわけでこのメルマガではさまざまな情報を発信して、楽しく生きるヒントを記していきたいと思っています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 池田清彦のやせ我慢日記 』

【著者】 池田清彦 【月額】 初月無料!月額440円(税込) 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け