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ひとつの定説にこだわらない「水平思考」で見えてくる日本人の起源

垂直思考と水平思考という考え方があるのをご存知でしょうか。垂直思考は深く掘り下げるもの、それに対し水平思考は多様な視点から幅広く考えるものです。今回、作家でユーチューバーの顔も持つ、ねずさんこと小名木善行さんは自身のメルマガ『ねずさんのひとりごとメールマガジン』の中で、この水平思考を利用して、「日本人はどこから来たのか」という疑問に迫ります。

日本人はどこから来たのか

随分前に流行った言葉に「水平思考」というものがあります。

もともとは、イタリアの医師のエドワード・デボノが昭和42年に提唱して世界的に広まった「Lateral thinking」を和訳した言葉で、直訳すれば「横方向への思考展開」とでもなるのでしょうけれど、これが「水平思考」という訳語で日本でも広く普及したわけです。

おもしろいのは、デボノが思考方式を、垂直思考と水平思考に分けたことです。

垂直思考というのは、従来からある分析学的思考のことで、これは論理を深めるためには大変有効な方式です。けれど、その反面、斬新な発想が生まれにくい。

そこで、ひとつの物事を、深く掘り下げるのではなく、むしろ多様な視点から幅広く考えてみる。すると、これまでまったく見つけられなかった新しい穴が発見される、というのが水平思考の考え方です。

たとえば、これまで言われた来たことに、「日本人はどこから来たのか」という疑問があります。

たとえば、アフリカの中央部にいたミトコンドリア・イブがもとになり、そこから世界に人類が広がったのだ、という説があります。

ところがこの説は、昭和62年にカリフォルニア大学バークレー校のレベッカ・キャンとアラン・ウィルソンらが提唱したのですが、サンプルは、わずか147人の現代人でしかありません。

さらにここで解析された結論は、ミトコンドリア・イブが生存したのは、16万年±4年というものです。つまり、ミトコンドリア・イブが存在した時代は、いまから12万年前から20万年前あたり、というものにすぎません(ちょっと調べれば、すぐにわかることです)。

ところがこの説が、世界地図上に「人類の発生と移動図」のような形で掲載されると、なぜかアフリカ中央部に発生したミトコンドリア・イブは、いまから「20万年前の女性」とされてしまいました。

そしてこの図では、日本列島に人が「やってきた」のは、3~4万年前、と書かれるようになったわけです。

さらにこの図から、もともとあった日本文明渡来説、つまり日本文明は中華文明の派生であり、中国が親、半島が兄で、日本にはその親と兄が文明を授けてあげたのだ…という説(この説ももともとは英国の歴史学者であるトインビー博士の著書が発端で、その説自体をトインビー博士が後に、日本文明は中華文明の派生ではなく、まったく独自に進化した中華文明とは別なものと修正しています)と結びつき、なぜか結果として、「日本人は、どこかから渡来してきたのだ」という説が、宣伝され、定着していったわけです。

そして日本人の起源などを語るときには、そうしてできた仮説の範囲内でしか、考えることも、研究発表することも、なぜか許されないという、おかしな環境ができあがっていったわけです。

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ところが、日本列島では、たとえば出雲で12万年前の石器が発見されているわけです。そしてこの事実は、ミトコンドリア・イブ説や、日本列島への渡来説をいきなり否定する証拠になります。つまり従来説では、もはや日本人の起源を説明できなくなるのです。

そこで水平思考の登場になります。

そもそもなぜ人類は二足歩行の裸のサルなのかという疑問があります。草原で走って生活するなら、四足の方が速く駆けることができるのです。しかも安定する。

木の上で生活するなら、両腕の筋肉と両足の筋肉が同じくらい発達している必要があります。けれど人類は、どう考えても腕の筋肉よりも足の筋肉のほうが太く発達しています。

さらに、森や草原で生活するなら、全身が毛で覆われていたほうが、怪我が少なくて済みます。つまり生存に適しています。けれど人類には毛がない。これまた不思議な点です。

さらに不思議なのは、温泉に浸かったニホンザルの顔です。いますよね~。あんな顔をした日本人(笑)。

おもしろいことはもっとあります。万年の単位で歴史を考えるときには、地形が今と異なるという点です。

海面は、いまより20メートルくらい高い時代もあったし、140メートルも低かった時代もあります。そしてそうなると、これまで陸続きだったところが、突然、海に隔てられてしまうということも起きるわけです。

仮に(ここで「仮に」です)、普通に森で生活していたサルたちがいたとして、そのサルたちの集団が、海面の高さの変動によって島に取り残されたとします。

島は、ある程度の規模の島である必要があります。なぜならそうでなければ、真水が採れないからです。

ところが島の大きさは、森で獣を獲って暮らせるほどの森がない。

そうなると、もっぱら苦労して海で魚を獲って暮らすしかなくなります。そして魚を海から引き上げるには、四足歩行や、両手両足の筋肉が同程度といった体の作りより、二本の足で踏ん張っり、腰のバネを使って、両手で引っ張るといった動作が不可欠になります。

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つまり、いまの人間の体になります。

そして海で暮らすなら、体毛は、それが寒い地域なら、しろくまやアザラシのように、体中がびっしりと細かい毛で覆われている必要がありますが、熱帯や亜熱帯地方なら、むしろ毛がない方が、体が速く乾いて風邪を引きにくい。つまりその分、生存確率が高くなります。

また踏ん張るには、尻尾は要りません。そもそも尻尾は、動物が四足歩行する際に、頭骨が重いために、弥次郎兵衛のように前後のバランスを取るために尻尾があります。つまり体の前に重たい頭蓋骨があれば、後ろに長い尻尾がないと、バランスがとれないのです。

もちろん、カンガルーのような動物もいます。二足歩行ですが、カンガルーには太くて立派な尻尾があります。そして実際には、立位には尻尾を含めた三足を用い、ケンカをするときには、尻尾を起点にして両足で相手を蹴飛ばしたりします。

しかしカンガルーの体をよく見ると、足の付根が支点となり、胴体から頭部までの重量と、足の付根から尻尾の先までの重量が、ほぼ均等になっています。ちゃんと前後のバランスが取られているのです。さらにいうと、人間の場合、カンガルーと異なり、魚を引っ張り上げるという動作の必要から、この場合、カンガルーのような尻尾は邪魔になります。

要するに、環境適合の結果、人類は人類の体を手に入れたと考えられるわけです。

そして島で魚を獲って暮らすサルたちは、何万年もかけていつしか体を変化させ、4万年前ころには、船を使って外洋航海する技術を身に着けます。これは証拠があって、いまから沼津と長野で、いまから3万8,000年前の伊豆諸島の神津島にしかない黒曜石が発掘されているのです。神津島には、船以外で往来することはできません。つまり、我々の祖先は、いまから3万8,000年前には、すでに船を持ち、外洋航海する技術さえも身に着けていたことになるのです。

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一方、世界では、最古の新石器文明とされているのが古代シュメール文明で、これがおよそ8,000年前です。ということは、日本では、世界最古の文明よりも、さらに3万年も昔に、一定の文明を持っていたということになるわけです。

使われていた船は、葦舟です。そう断言できるのは、まだ大木を伐るだけの道具がなかった時代だからです。そして葦船は、足になる船でもあります。我々の祖先は、船を足にして、大海原をどこまでも航海していった…そんな時代があったのです。

なにしろ、まだ国境なんてない時代です。それに、特定の魚を獲ろうとすれば、その魚が捕れる漁場まで船で行かなければなりません。考えてみてください。特に大型の魚は、回遊といって、大洋を海流にのって大きく巡回しています。そんな魚たちを追って、人々はどこまでも船で旅をしていたと考えられるわけです。

人類が、こうして海での生活から始まったとするならば、人類が世界に広がったのも、はじめは海からだったと考えられるわけです。そしてそうなると、ミトコンドリア・イブさえも、もしかしたら、はるか太平洋の西の果てにある島から、アフリカまで移動して行った人々であったのかもしれない、というふうにも考えられるわけです。

そもそも、日本列島に文明が渡来してきたというのなら、逆に日本列島から文明が世界に広がっていったのだ、という逆もまた真として成立します。

そして日本から出ていった人々は、何十年もかけて、また日本に舞い戻る。それはまるで、盆と正月に田舎に帰省するのと同じです。

ユダヤ人渡来説なんていうものもありますが、日本から出ていった人々が、遠くイスラエルあたりに文明を授け、その地域の人々と交わって、いつの日か、また日本に戻ってくる。

そんなことが繰り返された結果、日本人にはユダヤ系にしか見えないような人種的特徴を持った人がいたりすることになったと考えると、いろいろなものの辻褄があってくることになります。

物事を考えるときは、ひとつの定説にこだわらずに、水平思考していくということも必要なのではないかと思います。

日本をかっこよく!

ではまた来週。

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静岡県出身。国史研究家。倭塾塾長。日本の心をつたえる会代表。日本史検定講座講師&教務。インターネットでブログ「ねずさんのひとりごと」を毎日配信。 著書に「ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人」第1巻~第3巻。「ねずさんの日本の心で読み解く百人一首」がある。

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