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プーチンも統制取れず。アフリカ首脳陣訪問中のキーウを攻撃の謎

両国がともに自軍の優勢を喧伝するウクライナとロシア。双方に大きな犠牲が出ているとも伝えられますが、情報が錯綜しているのが現状です。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、各地の戦況を解説するとともに今後の趨勢を予測。さらにロシア国内で上がり始めた、プーチン大統領にとって「極めて不都合な声」を紹介しています。

ウクライナ軍がバフムト、ドネツク、ザポリージャで本格的な攻勢を開始。主攻撃軸はどこか?

ウ軍はバフムト、ドネツク州西部、ザポリージャ州で、本格的な攻勢を開始したが、主攻撃軸はどこなのであろうか。この現状と今後の検討をしよう。

ウ軍は、本格的な攻勢のフェーズに入ったが、バフムト、ドネツク州西部、ザポリージャ州での戦闘では、進軍速度が遅く、まだ、本格的なロ軍防衛線にも達していない。それと、6月前半は雨が多く、戦車などの装甲車が自由に移動できなかったことも大きい。

現状では前線でのロ軍航空力が、ウ軍の防空能力より上であり、このままでは機甲部隊の力が発揮できない。

防空能力の拡充が絶対に必要であり、その確保をおこなうか、もう1つは奇襲作戦で、ロ軍が思ってもいない方向からの攻撃をするしかない。

バフムト方面

ウ軍はバフムト北西郊外で、M03号線を市内方向に進撃して、ロ軍は潰走して、市内に向かていたが、ヘルソン州から最強の増援部隊が到着して、ウ軍の攻撃を防御し始めた。このため、ウ軍の進撃速度が下がっている。

ベルキウカ貯水池に向けて攻撃しているウ軍は、ベルキウカ市内に到達して、市街戦になっていたが、前進が止まり、ロ軍増援部隊との戦闘になっている。

逆に、ロ軍がオリホボバシュリフカへの攻撃をしたり、ウ軍の奪還したベルキウカやヤヒドネに反撃している。どちらもウ軍は撃退しているが、ロ軍も攻撃している。

このため、トリボボバシュリフカにいるロ軍は孤立する可能性があったが、現時点でも維持しているし、攻撃できるほど補給も大丈夫のようである。

バフムト市内のロ軍は攻撃なしで、防備を固めている。

バフムト南西のウ軍独立第24突撃大隊と第3突撃旅団はクリシチウカ方向に攻撃しているが、まだクリシチウカを占領できずにいる。

しかし、バフムトでの攻勢は、ロ軍部隊のザポリージャ方面への転戦をさせないためであるが、新しくヘルソン州から最強部隊もバフムトに投入されたことで、ここのウ軍の目的は達していることになる。

もう1つ、ロ軍はバフムト攻勢用の囚人を中心としたストームZ突撃中隊を解体して正規軍への配置転換を進めている。この囚人兵の日常行動が軍組織に合わず、解体することになったようである。

ワグナー軍を真似て囚人兵を使ったが、正規軍では手に余ったようである。

ドネツク州州境方面

ボハレダラにウ軍は攻撃して、複数のロ軍陣地を奪っている。このけん制のために、ロ軍はボハレダラの東ボディアングに攻撃したが、撃退されている。

ノボマイロスクやノボドネツクにウ軍が攻撃中であるが、前進できずにいる。ウ軍は海兵旅団が担当している。

ベルカノ・ボシルカの南のウジョイナとスタロマイオルスクをウ軍は攻略中である。リビノピりやノボダリウカの南では、ウ軍の攻撃でも成果なし。フリアポールでのウ軍は本格的な攻撃に出ている。

しかし、あまり、1週間前と変わりがない。攻めあぐねている。

やっと、地雷原の除去を終わった段階であり、今後本格的な攻撃に移るという。

この地域に8個旅団と1個大隊を投入している。これを見て、ロ軍はこの方面が主攻撃軸と見て、増援部隊を送り込んでいる。

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ザポリージャ州方面

ロ軍陣地が準備している3重構成防御網のザポリージャで、ウ軍は、苦戦している。

オレホポの南ロボティネで戦闘中であり、ここにウ軍は3個旅団を投入している。

カムヤンスクでは、南にあるピアトハーティキーで戦闘中である。

この地域には、ロ軍の電子戦システムにより、ウ軍のドローンが運用できないことと、GPS誘導弾の誘導ができないこと、ウ軍の衛星通信ができないことなどの問題が起き、有効に攻撃できない状況になっていた。

このため、まず、ウ軍は、ロ軍の電子戦システムの破壊を優先して行った。その後は、ウ軍はHIMARSを対砲兵戦で使い始めた。今までは弾薬貯蔵施設や指揮所への攻撃でったが、この2つは、HIMARSの射程外に移動したことで、砲兵を狙い始めたようである。

それと、ロ軍戦闘ヘリが有効であることをロ軍もわかり、ベルジャンスクに新たに20機以上の戦闘ヘリを追加した。

もう1つが、ウ軍に航空優勢がないことであり、防空システムも不足しているし、その上にロ軍の徘徊自爆ドローンは、優先的に防空システムのレーダーを狙い破壊されている。

これにより、ロ軍の戦闘ヘリが自由に飛べることになっている。これでは、ウ軍は機甲部隊を前進できないことになる。攻撃手段が限られることになり、前進できないことになっている。

もう1つが、地雷原であり、この地雷除去が重要であるが、その地雷原除去も進んでいるようだ。

これらより、ロ軍の士気の低い部隊はルハンシク・ドネツク方面におり、南部のロ軍空挺部隊の士気は、比較的に安定している。そして、準備された陣地でウ軍に抵抗しているロ軍は、パニック状態になっていない。

しかし、ウ軍の損傷した装備の半数以上を回収・修復し「戦闘に復帰」させることは可能なようである。このため、ポーランドやウクライナには、修理工場がある。

このため、ゼレンスキー大統領は、露軍の激しい抵抗に直面していると述べ、米欧諸国に防空能力強化を中心にした追加支援を呼びかけた。防空システムの供与数が増えて、それを前線に移動させている。

このような状況で、ザポリージャ州ではロシアの第35軍参謀長セルゲイ・ゴリャチェフ少将が前線で12日に死亡した。

やっと、ピアトハーティキーでウ軍は、2kmの前進ができたようである。ロ軍防備への対応が完了したようである。

ヘルソン州方面

ノバカホフカで砲撃音が響いていると、ロ軍事ブロガーは騒ぎ、ウ軍の反撃が開始したと述べている。ここの最強空挺部隊は、バフムトとザポリージャ州に移動したことで、ロシア側は民間軍事会社「コンボイ」の約5,000人で、ヘルソン州の防衛にあたることになるが、いかにも少ないし、戦闘ヘリや電子戦兵器などの重装備もない。

ドニプロ川の洪水も引き始めて、川を渡ることができるレベルになってきた。このため、ウ軍は、ポトーン橋を掛けて、重量の軽いトラックや兵員を渡河させているという。そして、オレシキーを渡河して、橋頭堡を確保したという。

今後、重量の重い戦車まで渡河することになれば、本格的な渡河作戦となる。これを、ロ軍事ブロガーは心配している。

ここで、ウ軍が渡河作戦が成功すると、ロ軍の手薄な地域に攻撃できることになる。

もう1つ、ヘルソン州とクリミアのロ軍部隊は、コレラの流行に襲われ、「戦闘効果を失っている」可能性があるという。

ウ軍反撃の最大チャンス到来のようである。

そして、マリャル国防次官も「この戦争の敵へのカウントダウンが始まった」と述べて、本格攻勢に出たようである。主攻撃軸は、ザポリージャ州なのかドネツク州か、ヘルソン州かは分からないが、準備していた攻撃用戦車旅団を投入したようである。

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その他方面

クレミンナ方面ではウ軍とロ軍が激しい砲撃戦を行っている。ロ軍第20諸兵科連合軍の将兵200人が、朝の訓示を待っていた所をウ軍のHIMARSで攻撃されて、100名死亡し、100名が負傷したようである。

リシシャンスク方面では、ロ軍はベゼルとブイエムカに攻撃したが、撃退されている。

反対に、ウ軍がクラスノポリウカに攻撃をして、ロ軍陣地を一部取っている。

アウディーイウカ方面で、ロ軍は要塞を攻撃したが、撃退されている。逆にウ軍はオプトネとプレボマイスクを攻撃しているが、前進はできず。

マリンカに、ロ軍は攻撃しているが失敗している。そして、ここのチェチェン軍は、ベルゴロド州に転戦している。ここで、大損害を出し、軽装備のチェチェン軍では、攻撃は無理ということのようである。チェチェン軍はベルゴロド州のカジンカ検問所を守るよう指示されたが、前線配備を拒否して、後方配備を要求している。

ロ軍兵が、ベルゴロド州でロシア人の家に押入り、強盗をしたことでロ軍兵に代わり、チェチェン軍を投入したようであるが、チェチェン軍は、戦闘能力がないのか、前線に出るのを拒否する。

モスクワのアレクセーエフスカヤ通りにあるモスエネゴの火力発電所に隣接する地域で大規模な火災が発生した。停電も発生している。

モスクワ郊外にあるチカロフスキー空軍基地で火災があったが、この基地にはII-80、II-82などの空中指揮機6機が駐機している。被害のレベルは現時点では分からない。

15日、ウ派パルチザンは、メリトポリ北部の鉄道を爆破した。このため、鉄鉱石を積んだ車両5両が脱線した。

逆に、ロ軍は、ウクライナへのミサイル、ドローン攻撃を頻繁に行っている。これは、防空システムを都市に張り付ける必要があり、前線に展開できないようにするためである。

そして、ウクライナ政府は16日、ロシア軍がキーウに対してミサイル攻撃をしたが、ウ空軍は、極超音速ミサイル「キンジャル」6発、巡航ミサイル「カリブル」6発、偵察ドローン2機を破壊とした。

16日は、南アフリカ、セネガル、ザンビア、コモロの大統領や、ウガンダ、エジプト、コンゴ共和国の代表らが出席する協議がキーウで行われたが、一時防空壕に避難した。

アフリカの首脳が滞在中のキーウに向けたロ軍のミサイル攻撃について、ゼレンスキー大統領は、「ロシアの指導者であるプーチン大統領が軍を統制していない証拠だ」と非難した。

ウクライナの状況

和平を促進する試みとして、アフリカの指導者がキーウを訪問しているが、BRICSの一角である南アのラマポーザ大統領も含まれている。

ゼレンスキー大統領は16日、そのアフリカ諸国の代表団と会談し、ゼレンスキー氏は、ロシアとの和平交渉はロシア軍がウクライナから撤退して初めて可能になるとした。

この見解を受けて、アフリカ諸国代表団がウクライナとロシアへ提示すると思われる和平案では、

とのようである。

この案はウクライナでは受け入れ可能であろうが、ロシアは現時点では受け入れられないでしょうね。これからロシアに向かうが、ロシアの条件を聞いて、変更する可能性も高い。

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ウクライナが最も欲する戦車をイスラエルが供与か

スペイン政府は15日、ウ軍に、追加で装甲車20台、主力戦車「レオパルト2A4」4両、野戦病院施設を供与するとしたが、レオパルト2が破壊された台数は4両であり、これを補充することになったようである。ブラッドレーは15両破壊されたが、米国は新規にブラッドレーを15両供与するという。デンマークとオランダは、ウ軍供与のために独ラインメタル社から主力戦車「レオパルト2」14両を購入する。

これで、破壊された車両の代替ができたことになる。今回の戦闘で示されたウ軍の問題点を解決することが必要である。

イスラエルのメルカバMK2、MK3戦車200両を2つの外国に売却するとしたが、1つは欧州だという。この欧州の国がウ軍に供与する可能性があるという。メルカバ戦車は、乗員生存率が欧米戦車より高く、今のウ軍には、最も欲しい戦車である。

ドイツは戦車「Leopard1」をベースにした地雷除去装甲車両「Wisent1」2台をウクライナ軍に引き渡した。地雷除去も大きな問題である。

スウェーデンは、グリペン戦闘機のウ軍パイロットを訓練する予定であり、整備士も独自の訓練コースを設ける予定だとした。空軍力が弱点であるが、この弱点をカバーすることになる。

今までに、F-16、F/A-18などの供与前提で、訓練が開始しているがそれにグリペンも加わることになる。ウクライナはオーストラリアに対し、F/A-18戦闘機40機以上の譲渡を求める要請書を送った。

しかし、レズニコフ国防相は、「ウクライナは2024年年初にF-16を入手できるだろう」と述べて、2023年の攻勢には間に合わないとした。

英国がウ海軍に引き渡すチェルニヒフ号とチェルカシー号が、スコットランドの港町ロサイスから出発した。これで、ドニプロ川を渡る船が手に入ったことになる。補給には必要である。

米英、ドイツ、オランダ、デンマーク、カナダ、イタリアは、ウ軍に優先度の高い防空システムを供与するという。

ドイツは、このためパトリオットの追加ミサイルを64弾を供与する。オランダはウクライナに1億5,000万ユーロ相当の4つのVERA-EGレーダーシステムを提供する。イタリアは、SAMP/T防空システムの追加供与をしている。

このように、防空システムの大幅な供与で戦闘ヘリの活躍を抑えるようである。S-300防空システムの代替ができるかどうかだ。

ウ軍戦車旅団12の旅団のうち3つだけが戦闘に参加しているので、メイン部隊が何処に向かうのか、まだ判明していないようだ。

NATOは、旧ソ連崩壊後のロシアがもはや脅威ではなく、数十年にわたり大規模な防衛計画をとりまとめる必要性がないとみていたが、ウクライナへの侵略で、新地域防衛計画を策定することで根本的な転換となる。

しかし、この新地域防衛計画が、NATO会議で合意できなかった。ロシアへの見方に異論が出ているようである。恐らく、反対なのは、ハンガリーとトルコであろう。

このハンガリーのオルバン首相に、リッシュ上院議員(外交委員会メンバー)は、スウェーデンのNATO加盟を拒否するハンガリーへの罰として武器売却を中止しようとしている。

このため、急遽ハンガリー議会は、NATO首脳会議直前の7月7日までに、スウェーデンのNATO加盟に向けた国内の批准手続きを実施するという。

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ロシアの状況

プーチンは、バフムトを維持に固守しているようだ。この件では、ショイグ国防相とは意見が合わずに、一時的に関係が気まずくなり、ショイグ国防相は、即座にヘルソン州の最強部隊をバフムトに送っている。

この結果、プーチンがワグナー軍などの民間軍事会社に軍への契約を促し、プリゴジンもプーチンの説得を受け入れてが契約するようだ。

ロ軍の組織体制がやっと、正規軍の近代戦に対応してきた。戦術大隊編成から諸兵科連合師団に再編して、機甲戦への対応ができて、かつ地雷原の防衛線と砲撃キルゾーン、電子戦、戦闘ヘリなどを複合的に組合せた戦術が可能になってきた。

これで、ウ軍の近代的機甲部隊に対応できるようである。ソ連流の戦い方に変更したことで防衛線を有利に守れることが可能になった。

ゲラシモフ総参謀長官の戦術や戦略構想が実現化しているが、1つ気になるのが、プーチンの戦術への介入であろう。このため、兵力の分散が起き、兵力の集中ができない。もう1つが、欧米兵器の質の高さであろう。

防衛線で有利になったことで、プーチンは16日、ウクライナ侵攻でロ軍の優勢を強調し、国際社会が懸念している核兵器使用について「必要性がない」と否定したが、「最初の核兵器がベラルーシ領内に移された」と述べた。

しかし、サンクトペテルブルクとモスクワの市議会議員は、ウクライナからの即時撤退を求める書簡を公開した。理由は、すべての人にとって戦争の代償は高くつくからだという。徐々にロシア国内でも、即時撤退論が出てきているようだ。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年6月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Drop of Light / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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