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大統領からも「悪の一味」呼ばわり。日本人が知らない韓国の学習塾ウラ事情

日本以上の学歴至上主義社会とも言われる韓国。そんな隣国で今、学習塾のあり方が社会問題となっています。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、「私教育」と呼ばれる韓国の最新塾事情をレポート。さらに「新興私教育財閥」のトップを走る学習塾企業「時代人材」の驚異の急成長ぶりを紹介しています。

私教育財閥「時代人材」

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が6月15日「私教育費軽減方案を強力に推進せよ」と指示を出し、私教育市場が論難の中心に立った。ユン大統領は「学校では到底教えられない科目融合型問題の出題は最初から教育当局が私教育にテコ入れするようなものであり不公正で不当だ」とし「教育当局と私教育が『悪の一味』と考えることになる」と話した。ユン大統領の決心発言に中高校生の保護者コミュニティはもちろん、幼い子供を育てるママカフェまで一日中騒いだ。

私教育費は保護者の不安に便乗して毎年新記録を更新中だ。昨年の私教育費支出は26兆ウォン(2兆9,000億円)で、歴代最高値を記録した。生徒数は減っているのに、私教育費の支出が2兆ウォンも増えたとは、実に皮肉なことだ。

海外では、韓国の少子化原因が過度な私教育費のためだと見ている。日本の毎日新聞は5月26日「韓国出産率0.78ショック」という記事で、韓国政府が少子化問題を解決するために莫大な予算を投じたが、解決の兆しは見られないとし「私教育費」を原因に挙げた。毎日新聞の記事は、平日夜10時、ソウル市内の塾街から帰宅する学生たちの姿を伝えながら私教育費支出のため赤字の沼に陥った「エデュプア(教育貧困層)」現象を報道した。

私教育(いわゆる学院=塾)市場が急成長し「新興私教育財閥」も誕生している。2014年、韓国の私教育1番地である大峙洞(デチドン)にオープンした「時代人材」が主人公だ。設立後10年も経っていないのに昨年の売上3,189億ウォン、営業利益299億ウォンを記録した。オフライン塾だけで収めた成果なので、驚くべきことだ。昨年の営業利益率は9.4%で、韓国総合株価指数(コスピ)上場企業の営業利益率が3.6%(第1四半期基準)という点を考慮すれば、途方もない。

週末になると、1万5,000人以上の学生が上京(ソウルに行って)して「時代人材」の授業を受ける。「大学によく合格させてくれる」、「医師のガウンを着るためには必須」という口コミが広がり顧客が殺到した。デチャン、セウム、ダウォンなど大峙洞の中小の学院を相次いでM&A(買収・合併)しながら規模を拡大し「学院捕食者」というニックネームまでついた。来年には龍仁(ヨンイン)に1,500人規模の浪人寮を開き、小・中等・乳幼児市場とインターネット講義などにも進出する計画であるため、成長エンジンは止まらない見通しだ。

大峙洞に住む40代主婦のキム某氏は「『時代人材』が大峙洞塾街の商店街建物を途方もない速度で飲み込んでいる。寝て起きれば『時代人材』が入っている」とし「数多くの学生たちが時代人材建物前で一列に並んで資料を受け取って上がっていく姿をたびたび見るが、『時代人材』パワーが途轍もなくすごい」と話した。

「時代人材」の成長の勢いは、投資を業とする専門家でさえ舌を巻くほどだ。ルネサンス資産運用のイ・ゴンギュ代表は「『時代人材』が有名だということは知っていたが、財務諸表にこれ程の数字が出てくるとは知らなかった」とし「今後成長戦略をどのように組むかによって会社価値も大きく変わるだろう」と話した。イ代表は続けて「会社が昨年150億ウォンを越えるVC(ベンチャーキャピタル)投資金を全て償還したのを見れば自信が大きいようだ」とし「新規ブランドがこのように定着するのは珍しいことだが、株式市場に上場すれば人気が途方もない」と話した。

資本市場分析で有名な「メルのブログ」運営者メル氏は「急速に成長する個人企業の典型的な財務諸表と見られる」とし「韓国エンターテインメント産業がアーティストを育てるシステムを講師養成に導入し、スター講師ではなく自主講師に成長しているようだ。過去公開採用を通じて新入から人材を養成するサムソングループ初期の感じがする」と話した。「負債は銀行中心の借入れであり、営業活動から入ってくるキャッシュフローで安定的な償還も可能に見える。今年償還しなければならない債務が400億を少し以上あるが、一部延長して一部償還すれば財務も大きなイシューがなさそうだ」とメル氏は付け加えた。

彼は続けて「『時代人材』は持分のほとんどを代表が一人で持って個人技で会社を運営しているが、組織がさらに大きくなった後も今のような高成長を見せることができるかがカギ」とし「現在グローバル市場で教育は人工知能(AI)と人が協業する方向に進行されているが、この問題を『時代人材』がどのように解決していくのかも見なければならない」と話した。

スター講師の迎え入れ、事業拡張など収益性だけに重点を置き、いざ内実となると、まともに確保できないという指摘も出ている。今月初め、『時代人材浪人総合学』は給食を食べた生徒130人余りが食中毒症状を見せ、不良給食と関連して保護者から激しい非難を受けた。証券業界関係者は「『時代人材』は営業利益率が10%に肉迫するので収益性は高いが人件費が売上の半分を占める」とし「講師だけが財閥になっていく教育プラットフォーム企業であるため、投資家としては買いたくない企業」と話した。

「時代人材」は延世(ヨンセ)大学法学科出身のオ・ウソク現「時代人材」(運営法人=ハイコンシー)代表が設立した。設立3年目にして鍾路・江南一帯に敵なしとしてきた「大成(デソン)」の牙城を破り、浪人総合序列1位を獲得し、浪人予備校の歴史を塗り替え現在韓国ではホットポテトとなっている。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年6月17日号)

image by: Ki young / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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