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面倒でも「シカタガナイ」。空気を読み“日本人化”する外国人たち

車が来なくても歩行者用信号が青になるまで待っている日本人。ルールを守るというより、「みんなが渡らないから渡れない」でいるうちに習慣化したのかもしれません。この「感覚」「空気」の影響力は、日本にやって来た外国人にも及んでいるようです。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、帰国して見聞きした外国人の言動を紹介。日本が大好きで移住したマレーシア人の友人が、「めんどくさい」「シカタガナイ」と話し、“日本人化”していたと驚いています。

日本にいる外国人が「日本人化する」現象と「日本は外圧では変わらないな」と思った話

本日は、日本の引力は半端ない、という話です。

「空気を読む」外国の人たち

京都にいきました。グローバル化の波で日本にも外国人が増えたから、少しは意識が変わるのかなー?と思ってたら、母国、あんまり変わってない。

面白いことに日本に住むと大抵みんな「空気を読む」を身につけるんですね。おおっと思ったこと。それは、意外と外国人観光客も信号を守っていることです。

京都の四条河原町あたりには、距離の短い信号がたくさんあるんです。「マレーシアならみんなこれ無視して渡るだろーな……」と思って周囲を見たら、中国語話してる人たちも、英語話す人たちも、意外にみんなちゃんと守っているんですよね。

以前マレーシア人のラジオDJシュックさんと横浜に行ったとき、彼は、「どうして車が来ない交差点でも信号を守ろうとするの?」と聞きました。マレーシアは自分の判断で大丈夫だと思ったら渡る人が多いんです。

ところが、意外にも、京都では大勢の外国人が、車が来ない交差点で信号を律儀に守ってるんです。「郷に入れば郷に従え」かなぁ、と思いました。

「日本人化」する外国人たち

長く日本に住んでいると、日本人みたいになっていく人もいます。旅行業に関わるマレーシア人の友達とご飯食べてきました。彼女は、長年一緒に仕事してきたパートナー。5年前に日本に移住。

マレーシアにいたときには、大の日本ファンでした。昔はいかに日本が清潔で優れているか、文化がユニークかを話してくれ、彼女のブログは日本愛に溢れていたんです。ところが実際に当地に住んでみると、便利で進んだ国に見えていた日本の内情に驚き、愚痴が多くなりました。

グラブは解禁されてない。まだファクスが現役だったり、フリップフォーン(折りたたみ型携帯)を使っている人がいたり(ほんと???)、幼稚園ではクレヨン1つ1つに名前の記入が必要で、ママ友の付き合いが暑苦しい。京都の街には意外にゴミが落ちてる。綺麗な場所だけじゃない

そんなようなことを、英語でバーっと話してから、一言、「めんどくさい」と彼女は日本語で言いました。しかし、じっと黙っているそうです。「マレーシアにいたときは、ブログであんなになんでも歯に絹着せず言ってたじゃない」と聞いたら彼女は一言「シカタガナイ」と日本語で言いました。

「シカタガナイ」それなんです。

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「めんどくさい」でも「シカタガナイ」

あんなにとんがっていろんな意見を言う人が、5年日本に住んでたら、すっかり「日本人化」しています。聞いてみたら、不満はたくさんあるけど、ちょっと言葉に出すと「じゃあ母国に帰れば」と言われるので諦めたそうです。

だから現状に合わせるしかない。「仕方がない」と。あーそうか。それはむっちゃわかるなーと思ったのです。

でも、それね、外国人だけじゃないよ。私は知っている。日本人にも、「あー面倒臭い。なんでこんな意味不明なんだろ。でも、仕方がない」と思考を押し込めて耐えている人がたくさんいることを。日本人の私ですら「グローバル標準はこーなってるよ」と書くと、すぐに「出羽守」とか、「うるせえ、じゃあ日本をでてけ」って言われちゃうもんね。

田舎に行って、「東京では」というとみんなから嫌われるのと一緒。多分、言ってもいいことは1ミリもない。だから、みんな黙るのです。私も日本に来たら全てのことを「シカタガナイ」と諦めるようになってます。

戦っても無駄。どうせ変わらない。どうせ無理。そんな空気に飲まれてしまう。しかし、これじゃ、世界からは、学べない。「どうせ変わらない」とみんな思ってる社会は息苦しい。外国人なら尚更だよね。

私もマレーシアで不満があっても、それを「変えろ」とは言いません。外国人だし、住みたくて住んでるわけで。だから、マレーシアに長くいる日本人も、マレーシア人っぽくなっていくのです。

そして、私は「外からくる外国人が少しは変えてくれないかなー」と無責任に考えていた自分の思考に気付いたのでした。よく「日本は外圧で変えるしかない」っていうけど、実際のところ、それも難しいのかもね。他人の家のやり方がおかしくても、自分が行って変えようとは思わないように。

結局は、外圧に頼らずに、私たち、中の人が自分で責任を持って変わるしかないんだよね。そして、それには嫌われる勇気が必要なんだな。と思ったのでした。

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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