MAG2 NEWS MENU

sport clothes store in shopping mall

この20年なにをしていた?大手スポーツチェーン店の無自覚

大きな路面店やショッピングモールに入っている大手スポーツチェーン。ここ数年どのような発展をしてきたのでしょうか?今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、大手スポーツチェーンの変化とこれから期待することを挙げています。

大手スポーツチェーンに期待をすること

大手のスポーツチェーンだけがスポーツショップだと思っている消費者の方もいます。

その大手スポーツチェーンですが、ここ10年、20年の間にどんな発展をしているでしょうか。あまり画期的な店が出来たという話を聞きません。

今回は、大手スポーツチェーンについて考えます。

1.スポーツ用品小売市場の変化

スポーツ用品の小売市場は、どのように変化しているでしょうか。

矢野経済研究所の調べによりますと、スポーツ用品市場は、2006年の1兆2,460億円に対して、2021年は1兆5,504億円。過去15年間で24.4%伸びています。ただし、この数値は、メーカー国内出荷額をもとにしたものです。普通に考えれば、スポーツ用品小売市場も伸びていることでしょう。

実は、近年のスポーツ用品小売市場規模に関するデータがなかなか手に入りません。ですから、正確な数字は分かりません。やむなく、メーカー出荷額をもとに推定してみることにします。

スポーツ用品小売業の粗利額を33%と仮定しますと、2006年の売上は1兆8,597億円、2021年は2兆3,140億円です。この数字が合っているかどうかは、なんとも言えません。

その代わりに、日経MJが毎年、専門店調査をしていますので、そこから、売上上位の店の数字だけは分かります。そこで、大手スポーツチェーン5社の売上推移を見てみました。

5社とは、アルペン、ゼビオ、スポーツオーソリティ、ヒマラヤ、ヴィクトリアです。

この5社の2005年以降の売上合計は、以下のようになります。

・2005年 3,845億円
・2010年 4,531億円
・2015年 5,747億円
・2021年 5,125億円

スポーツチェーン5社の売上は、16年間で33.3%伸びています。メーカー出荷額よりも伸びが大きいです。しかも、2005年から2015年の10年間では、50%近く伸びています。さすがですね。

ところが、最近の数字を見ると、おかしなことが起こっています。2015年から2021年の6年間で、売上が10.8%減少していることが分かるでしょう。これは、コロナ禍の影響かもしれません。ですから、2022年には盛り返すことも考えられます。

しかし私は、コロナばかりが原因ではないような気がしますが、あなたはいかがでしょう。いよいよ、スポーツチェーンが消費者に飽きられてきたのかもしれません。だとすれば、大手なりの戦略が必要です。

2.大手チェーンの戦略

では、大手は今後どのような戦略を打ち出していくのでしょう。

確かに、スポーツ小売市場は、大手スポーツチェーンによって拡大をしたと言えます。出店に継ぐ出店で、売り場面積が広がりました。メーカーさんや問屋さんにしてみれば、商品を放り込んでおけば大きな売上が手にできます。ですから、今なお大手チェーンにすがっているようです。

しかし、大手チェーン拡大の裏では、いくつかの弊害ももたらされました。たとえば、

・価格破壊を起こして、スポーツ用品の割引販売が常態化した
・地方の弱小小売店の営業を困難にした
・メーカー、問屋の地域小売店への営業活動が減少した
・仕入先への返品も多く、在庫処分による価格の乱れを生じさせた

といったことです。

大手チェーンは、売場も広く綺麗で安く買えるのですから、消費者にとってはありがたい店です。一方、業界にとってありがたい店かどうかといえば、必ずしもそうではない気がします。今あげた弊害があるからです。

つまり、彼らが素晴らしく良いことをして来たかどうかについては、疑問が残ります。たとえば、5社のどこかの店が、革新的な売場づくりや売場提案をしたことがあるでしょうか。斬新な商品管理システムや顧客管理システムなど、画期的なシステムを開発できたでしょうか。少なくとも私は知りません。

また、近い業界で言えば、ユニクロやワークマンのように、メディアで話題になるようなことをしたでしょうか。飲食業界の「くら寿司」や「新宿歌舞伎横丁」のような、新しい切り口のマーケティング手法を提案したでしょうか。

さらに言えば、5社の経営者がメディアに取り上げられることも少ないです。それだけ、話題に乏しいということでしょう。

3.業界のリーダーとして

つまり、業界のリーダーであるべき立場にもかかわらず、新しい業態を開発したわけでもありませんし、新しい売り方を提案したわけでもありません。少なくとも、この20年間は少しも変わっていないのです。

このことは、スポーツ用品業界にとって、決して良いことではありません。まるで、皆さん思考停止に陥っているようです。

1位のアルペンの2021年の年商は約2,300億円、2位のゼビオは1,280億円、3位、4位の店は600億円以上の売上を示しています。資金力はあるはずです。革新的な店づくりができないものでしょうか。

そこで、たとえばこんな店は考えられませんか。

・モノづくりが体験できる工場のような店
・短期間でのスポーツの上達を約束する店
・スタジアムやアリーナにいるように感じられる店
・海外でのスポーツ体験を販売する店
・これからスポーツを始める人のためだけの店
・全商品に使い方動画が見られるQRコードのついた店
・スポーツテクノロジーの商品だけを販売する店
・毎日、スター選手との交流が出来る店
・スポーツ選手のための音楽を販売する店
・ニュースポーツだけを扱う店
・スポーツ指導者のためだけの店

考えれば、まだまだアイデアは出てくると思いますが、ひとまず「安売り」から離れることです。そして、スポーツ用品業界のためになることは何かと考えることです。

いずれにしても、今のスポーツチェーンは、売れ筋の商品を売る事しか考えていません。ですから、有名ブランドに偏った店になっています。別に、そうした店があっても構いませんが、それだけでは業界が発展しません。

新しいアイデアで、画期的な店を作り、より多くの人にスポーツを楽しんでもらうのが大手チェーンの役目です。

十年一日同じことを繰り返しているだけでは、発展は望めません。ぜひとも、リーダーとしての自覚をもって欲しいと願うものです。

■今日のツボ■

・大手スポーツチェーンの最近の業績は、好調とは言えない
・大手スポーツチェーンは、革新的な店を提案するべきである
・業界のリーダーとしての自覚をもって、発展につくしてもらいたい

image by: Shutterstock.com

梅本泰則この著者の記事一覧

ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ! 』

【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け