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BANGKOK ,THAILAND- May 20 ,2017: Colonel Harland Sanders statue standing in front of Kentacky Fried chicken restaurant (KFC)

阪神タイガースには本当に「カーネル・サンダースの呪い」がかかっているのか?

日本のプロ野球で最も有名な「呪い」があるのをご存知ですか? この呪いについて、阪神ファンの方なら誰もが知っているのかもしれませんね。今回、メルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』では、時代小説の名手として知られる作家の早見さんが、 阪神タイガースにかけられた「カーネル・サンダースの呪い」と、その主役であるカーネル・サンダースの人生について紹介しています。

カーネル・サンダースの呪い

投打二刀流に亘る大谷翔平選手の活躍が報道されていますね。アメリカでは球聖と称されるベーブ・ルースと比較されています。

ベーブ・ルースには数多の逸話があります。「バンビーノの呪い」もその一つです。バンビーノとはベーブ・ルースの愛称、呪いをかけられたのはボストン・レッドソックスでした。ルースは1918年にレッドソックスからニューヨーク・ヤンキースにトレードに出され、それまでは投打二刀流であったのが打者に専念、ホームランを量産し野球に革命をもたらしました。

対してレッドソックスは1918年を最後に2004年までワールドシリーズで優勝できませんでした。優勝から遠ざかっていた間、野球ファンの間でルースをトレードに出した報いを受け、レッドソックスには、「バンビーノの呪い」がかけられたと面白がられたのでした。

日本のプロ野球にも呪いがあります。「カーネル・サンダースの呪い」です。1985年、阪神タイガースが21年ぶりに優勝した際、歓喜した阪神ファンは大阪の道頓堀川にダイブ、勢い余ってケンタッキーフライドチキンの店先に飾られたカーネル・サンダースの人形を道頓堀川に投げ捨ててしまいました。

当時の道頓堀川は汚染が激しくヘドロが堆積しており、サンダースの人形は行方不明、サンダースに呪われ阪神は優勝から遠ざかった、何とも大阪らしいジョークです。

また、それくらいサンダースは日本人にも親しみを抱かせるキャラクターだったのです。白髪に白い髭、黒縁の眼鏡、上下白のスーツ、好々爺然としたおじさんは見知らぬケンタッキーという土地にも親近感を抱かせてくれたのでした。

大変に親しみやすいキャラクターですが、サンダースの生涯は決して平坦ではありません。転職、倒産、離婚、人生の辛酸を舐め、挫折どころか死を選んでも無理からぬ体験が目白押しです。

カーネル・サンダースことハーランド・デーヴィット・サンダースは1890年、意外にもケンタッキー州の生まれではなく、インデイアナ州クラーク郡のヘンリービルに生まれました。6歳で父親を亡くし、貧しかった家庭を支えるため10歳から農場で働きます。14歳になると学校を退学し、農場、市電の車掌を皮切りに、働きに働きます。1年程の軍役を経験し、40以上の職を転々としました。

彼は客が求めているものは何かを貪欲に追及します。目をつけたのはフライドチキンでした。何度も試行錯誤を繰り返し、絶妙のスパイスとハーブの調合に辿り着き、最新式の圧力鍋で今日私たちが味わうケンタッキーフライドチキンを完成させます。

この時、サンダースは65歳、残りの人生は年金生活でもいいかと弱気にもなりました。彼は店を売却、ところが目論んでいた売却費の半分にも満たない金額でした。税金、借金を返済したらほとんど残りませんでした。おまけに支給される年金はとても生活できるような金額ではありません。

百折不撓の人カーネル・サンダースは己を奮い立たせます。金はなくとも試行錯誤の末に完成させたフライドチキンのレシピがある、彼はこのレシピを金にしようと思い立ちました。オリジナルスパイスを提供し、調理法を伝授して契約料を受け取る、サンダースは高圧釜とスパイスを車に積み、アメリカ中のレストランを廻りました。車の中で寝泊まりし、試作品のフライドチキンが1日の食事でした。アポイントもなく飛び込みで訪れるため、門前払いは当たり前、話も聞いてくれない毎日でした。

サンダースは粘り強くフライドチキンを売り込みます。レストランの裏口で従業員たちに試作品を食べてもらい、調理場を借りて無償でフライドチキンをその店の客に提供しました。こうした地道な営業活動により、サンダースのフライドチキンは評判を呼び契約を求めるレストランが増えていきました。

こうしてサンダースはケンタッキー・フライド・チキンのフランチャイズ化に成功、74歳になってフランチャイズ権を売却した時には、600もの店舗を数えました。彼は90歳で亡くなるまで、ケンタッキー・フライドチキンの顔として世界中の人々に親しまれました。

さて、今シーズンの阪神タイガース、「カーネルサンダースの呪い」から脱却できるでしょうか。

image by: Ratana21 / Shutterstock.com

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歴史、ミステリー四方山話、思いつくまま日本史、世界史、国内、海外のミステリーを語ります。また、自作の裏話なども披露致します。

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【著者】 早見俊 【発行周期】 週刊

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